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委員会会議録

委員会補足文書

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平成23年10月大規模地震対策特別委員会
参考人の意見陳述 富士常葉大学社会環境学部准教授 阿部郁男 氏 【 意見陳述 】 発言日: 10/26/2011 会派名:


○阿部郁男氏
 ただいま委員長のほうから御紹介いただきました富士常葉大学社会環境学部の阿部と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 まずはじめに、私この4月から富士常葉大学のほうに着任してまいりまして、その前までは東北大学におりました。実は、実家が岩手県の山田町というところにございまして、このたび静岡県議会の方々をはじめ、静岡県の皆様にいろいろな御支援をいただきましたことを、まず冒頭、簡単ではございますが御礼を述べさせていただきたいと思います。
 私、3月11日は仙台におりまして、実際に震災も体験してまいりました。そういったいろんな経験を踏まえて、これから来るべき東海地震に備えて、静岡県でこういうことをやっていったらいいんじゃないかという形でちょっと御提言を僭越ながら申し上げさせていただきたいなと思っています。ちょっと着席にて失礼いたします。
 最初にちょっとごらんいただきたいのが、実は私3月11日の地震が起きた時間に東北大学の建物の中におりまして、その建物は一応ダンパーが入っていて耐震化されたビルでございました。そこの11階におりまして、これは実は本棚なんですが、本棚が崩れないようにこの本棚同士をスチールの太いパイプで支えてあったんです。しかし、震度6強というふうな大きな揺れに仙台は見まわれまして、その揺れの中でこのとめてあったボルトもすべて飛んで、このスチールのパイプも折れ曲がって、本棚が全部倒れてくるっていうようなのが目の前で繰り広げられまして、何とか命からがら逃げ出してきたというような状況です。今思うと、携帯電話の動画か何かでこのシーンを撮っておけばすごい防災教育には役に立ったなと思うんですけど、そのときはとにかく自分の身を守るのが精いっぱいで、これも地震が起きて、とにかく建物から全員避難して一週間後に入って、ちょっと撮影してきたものでございます。
 次、これが実は私の実家でございまして、山田町の船越という地区で10メートルぐらいの高さにあります。岩手県のいろんな、明治三陸の被害想定とか、ハザードマップでは一応浸水しない範囲、ただ実は山田町っていうところはちょうど400年前の1611年に慶長の津波が非常に大きかったという記録が、町の歴史に残っていまして、そういったこともありますものですから、私は常日ごろ両親とこの周辺の地区と親戚縁者には、山田っていうところは400年前に明治の津波よりももっと大きい津波がきているから、もし何かあったら逃げるようにという話をしておりました。そういったこともあって、私の親戚もおかげさまで無事でございますし、私の実家があった地区も犠牲者ゼロというところでございます。ちょうど私のうちから下のほうの家は全部流出して、私の家が1階の軒下ぐらいまでが津波に浸かったような状況でございましたけども、おかげさまでそういうような状況でございました。
 きょうお話させていただくのは、私これまで東北大学のほうにおりまして、岩手県や宮城県でいろいろ津波対策を進めておったんですけども、ちょっと一端を担っていた経験から、そういった津波対策の御紹介をさせていただきながら、東日本大震災の津波被害の概要についてお話させていただくとともに、東海地震に向けてということで津波対策の現状と課題と展望という形で、最後にまとめさせていただければなと思っております。
 まず冒頭は、岩手県と宮城県で進めていた津波対策でございますけども、東海地震と同じように宮城県や岩手県の沖もかなり頻繁に地震が起きております。ここに書いてありますのが、地震が発生した年、ちょうど赤いエリアで大体平均するとこういった形で37年に1回マグニチュード7クラスの地震が起きています。これもう既に前回から33年たっていますんで、これはもうすぐ起きるだろうということで、これがよく国のほうで想定しています99%以上の確率で起きると言われている宮城県沖地震でございます。このほかに、赤い海域のちょっと沖よりに、紫でちょっと線を書いておりますけども、1793年と1897年にちょっと大きい地震が、この沖でも起きていると。前回104年間隔でそれからもう既に114年たっていますんで、この沖の海域でももしかしたら地震が起こるかもしれない。最悪のケースとしては、この二つが連動して起こるパターンが宮城県で考えられる最悪のケースだろうということで、この地震をもとにいろんな防災対策をとっておりました。宮城県沖地震の連動型と言われているもので、マグニチュード8.0から8.2、8.0というのはちょうど東海地震で今想定されているマグニチュードと同じくらいの規模でございます。
 静岡県の第三次被害想定と同じように、地震の断層を入れましてコンピューターでシミュレーションをして、地震の揺れ、震度がどのくらいになるかですとか、津波の高さがどのくらいになるかっていったのを計算して、被害想定を行ってました。宮城県の第三次被害想定の結果で、先ほどのマグニチュード8.0の地震が起きたときの津波の高さでございまして、赤いエリアが5メートルから10メートル、ちょうど静岡県の被害想定でいくと、沼津の内浦のあたりに相当するような高さかと思います。5メートルから10メートルのエリアが宮城県の北部の気仙沼市とか、南三陸町に広がるような状況です。緑のラインが2メートルから3メートルの津波の高さでございますけども、それは仙台湾、石巻市ですとか、千島町ですとか、仙台市、名取市、岩沼市、そういったところはおおむね2メートルの高さだろうというふうなことが想定されておりました。これ、ちょうどこの辺が駿河湾の中で、こっちが沼津の内浦とか、伊豆半島、そういった静岡県における第三次被害想定とほぼ同じような規模の感じかなというふうに思っております。そういったものを準備しまして、いろんな静岡県さんと同じような防災対策を実施しておりました。
 1つ目が自主防災組織の育成ですとか、自主防災組織を中心とした防災マップづくり、それからこちらが松島にあった避難看板なんですが、避難看板ですとか、避難路の整備、こういう道路の埋め込み型で避難ルートを示す矢印を舗装でつけたり、あるいは水門の遠隔操作化ですとか、あとは閉めに行くのが間に合わない水門は常時閉鎖しておこうと――水門というか陸こうですね――陸の車が通る門扉は閉鎖しておくようにしましょうというふうな運動を行ったり、防災教育なんかも行っていました。ただ、ちょっと静岡県のほうに伺って、高校とか小学校、中学校回らせていただいて思うのは、防災教育においてはかなり静岡県さんのほうがやられているかなと、宮城県での防災教育はちょっと局所的で、一部の学校が始めているというような状況でして、それは時間の確保がすごく難しいということでございました。それから、岩手県では釜石市と大船渡市、それから久慈市の沖にも湾口防波堤をちょうど整備し始めていましたし、宮城県では女川町というところに随分昔につくった湾口防波堤がございました。
 それから、あと岩手県で中心に進めておりましたのは防潮堤の高さのかさ上げ、宮城県はおおむね1960年のチリ津波を想定した高さになっておりまして、岩手県はそれよりもうちょっと高い、昭和8年の三陸津波を防ぐような高さで設計されておりましたけども、岩手県のほうではもう少し前に明治の三陸津波という大きな津波がありましたので、何とか明治の三陸津波がきても大丈夫なようなまちづくりをしたいということで、一部の地域でさらにかさ上げして、明治の三陸津波がきても大丈夫な防潮堤っていうのをつくり始めていたようなやさきでございます。
 その防潮堤と防災教育で実際に県がつくった、これは宮古市の田老町っていうところで、万里の長城みたいな防潮堤があるという有名なところなんですけど、それに明治の三陸津波がきたらどうなるかっていうのをコンピューターでシミュレーションして、それをCGでアニメーションにしたものです。これは、県の事業で岩手県さんがつくったものでございますけども、今津波がやってきまして、ここに万里の長城とも言われる防潮堤があるんですが、明治の津波がくるとその防潮堤すら超えるというようなことです。このことについて、実は既にわかっておりまして、岩手県さんもこういった教材を使っていろんなところに防災教育をされていたんですけども、なかなかそういうのが伝わっていなかったっていうのが現状です。
 そういった避難防災教育や避難計画の目標として、岩手県では昭和の三陸津波をターゲットとしていたのを徐々に明治の三陸津波がきても大丈夫なような形で整備しましょうということで始めていました。明治の三陸津波っていうのは大船渡の綾里という地区で、38メートルの高さにまで津波がかけ上がったというような津波です。
 一方、宮城県は、やはり先ほどからもう来るぞと言われている宮城県沖地震、最大10メートルの津波というものを想定していろいろな対策をとっておりました。その1つが、やっぱりこういった被害想定を行って浸水範囲を書いて、避難場所がどこかっていうのを決めるようなやり方です。これは実際に宮城県の第3次被害想定の図を1枚いただいてきたものなんですが、南三陸町の志津川地区という、防災庁舎もろとも津波で流された町でございます。色が赤とか、オレンジとか、黄色とか、緑に塗られているのが、宮城県沖地震が起きたときに想定される浸水範囲になります。ピンクの線が1960年のチリ地震津波のときの浸水範囲で、青い線が昭和8年の三陸津波のときの浸水範囲になります。それでこういったものを参考にしながら、宮城県ではこういった避難場所を浸水範囲の外につくっているような形になります。
 一方、岩手県のほうでは、これは今、明治の三陸津波が起きたらどのくらいまで浸水するかっていうのを現在の地形を使ってシミュレーションした結果が、この範囲になります。赤いのが明治の三陸津波で実際に浸水した範囲で紫色の線が1960年のチリ地震津波で浸水した範囲になります。こういったものを準備して、この浸水範囲の外に避難所をつくりましょうということで、岩手県とか、宮城県でも進めていたということになります。
 一方、そういった取り組み以外にも、津波対策で進めておりましたのが、GPS波浪計です。静岡県では御前崎の沖に1個浮いていますけれど、それを東北の太平洋沿岸では7機並べています。こちらに写真がございますが、こういったものでございます。それから、GPS波浪計っていうのは、沖で津波の高さをはかっておりますので、沖の高さが沿岸の高さとは限りません。沖ではかった津波の高さを、何とか地域ごとの被害推定に結びつけたいということで、私のほうで東北地方整備局と一緒に進めておりましたのが、この浸水予測システムの開発ということで、こちらにちょっと画面のコピーを小さく出させていただいています。この浸水予測システムですが、GPS波浪計で観測された津波の高さを入れると、それぞれの地域の浸水範囲が地図上に表示されるというようなシステムになっています。津波浸水予測システムですが、2010年6月から岩手県の宮古市、釜石市、大船渡市、それから宮城県の気仙沼市で試験的に運用を始め、東北地方整備局にサーバーを置きまして、そのサーバー上にこれらの市からアクセスしていただいて、津波が起きたときの対策を考えてもらうような取り組みを始めておりました。2011年1月20日から、その範囲を広げまして岩手県の宮古市から福島県の相馬市にかけての広い範囲で、暫定的ですが使えるような状態にしておりました。3月末からは、それを本運用しようかというふうな形で準備を進めていたところでございました。そういった準備を進めておりましたやさきに、東日本大震災が起きたわけなんですけど、やはりその特徴は、10メートル以上の巨大な津波が起きたと。マグニチュードも9.0でございますので、1900年以降の記録では世界で第4番目の大きさの地震であるというふうなことが、今わかっています。第1番は1960年のチリ地震で、それはマグニチュード9.5でございます。やはり三陸のほうは、ちょっと地震の震源域が陸から離れているもんですから、津波が到達するまで30分ぐらい、あるいは仙台とか、その辺ですと1時間程度ぐらいの時間がございました。しかし、そういった時間がありながら、1万数千人の方が犠牲となった。これはなぜかなというので、それを振り返る重要なポイントとなるのではないかと思っているのが、施設の防御効果。それから2つ目が防災情報の役割になるのかなと思っております。
 まず、施設の防御効果なんですが、これはいろんなマスコミで、施設は役に立たなかったんじゃないかっていうような論調もございますし、実際私も今沼津に住んでおりまして、沼津の方でも防潮堤なんかあっても役に立たないんじゃないかっていうような方もたくさんいらっしゃいます。ただ、やはり施設の防御効果ですが、これは今回いろいろ私も回りまして、非常に大きかったんじゃないかなというのは感じています。というのは、同じような場所でも防潮堤が残っているところと、残っていないところの被害の差が明らかでございます。防潮堤がちゃんと立っているような場所は、やはり後ろのまちの被害は少ないんです。こういった形で防潮堤が飛ばされているようなところは、物すごく被害が大きいと。ただ、こういった防潮堤が壊れているところでも、避難の時間は稼いだのかなというふうに考えています。私の母親がそういったことを話しておりまして、家が10メートルの高さにあるもんですから、しばらく見ていたそうなんです。そうしたら防潮堤の上に海水が上がってきて、船がその上を行ったり来たりしているのをしばらく、そういうふうな状況が見れたらしいです。そうこうしているうちに、防潮堤が崩れて津波が入ってきて、先ほどごらんいただいた写真のような状況になったということらしいので、かなり避難の時間は稼いでくれたんじゃないかなというふうに思っています。
 それからあと特徴的なのは、これ宮古市の鍬ヶ崎地区っていうところなんですけども、鉄筋コンクリート――津波避難ビルなんかで指定するっていう話もございますけども――そういう鉄筋コンクリートの建物が密集しているところは、比較的後ろの被害が少ない。これいろんな場所で見られています。同じ場所の港で、海側に何も鉄筋コンクリートがないようなところでは、家が一切なくなっているんですが、このような形で鉄筋コンクリートの建物が海側に何棟か密集した形で建っているようなところでは、後ろの木造住宅も被害を受けていなという場所がたくさんございました。こういった点から考えても、施設の防御効果はかなりあったんじゃないかなというふうに感じています。
 2つ目が、防災情報の役割でございます。3月11日の2時46分に地震が発生して、最初に出てきた情報がマグニチュード7.9で、津波警報は大津波3メートルと以上ということでした。これは、一番最初に気象庁さんが出した津波警報の画面のコピーなんですが、赤いところが大津波警報で、オレンジのところが津波警報、バツが震源です。ここのバツのマグニチュード7.9というのを見て、私も一瞬、宮城県沖地震が起きたんじゃないかというのを感じました。宮城県沖地震にしてはちょっと揺れが大きかったなっていうようなことを感じつつも、私も実家に帰ってから避難所に行ってというような行動をとったわけなんですけども、1枚前に戻りまして、実際に私もいろんな場所でヒアリング調査、沿岸地域でさせてもらって、最初のマグニチュード7.9とか、3メートルっていうふうな数字を見て、大したことはないと思って避難されなかった方もいるというふうに伺っています。その後に、気象庁からいろんな情報が出てきています。これ実際に、時系列に気象庁が発表したものを、私も避難途中でノートパソコンを開いて記録をとりながら避難したんですけども、2時59分に大船渡で最大波が20センチメートルっていうふうな情報が出ておりました。私の実家の山田町で実際に助かった人たちにヒアリングさせていただいたところ、やはり大船渡で20センチだっていうのを聞いて、大丈夫だ、今回も大したことはないといって思って戻った人がいるというふうなことを伺っています。というのは、津波がくるまでは皆さん気にして携帯電話のワンセグなどで見ているんですけども、20センチだ、大丈夫、もう大丈夫だと思って戻ります。戻っている途中とか、戻って自宅で何か大事なものをとっている間って情報を何も見ていないんです。そういうときに、やっぱり情報を伝える手段っていうのが、まず必要なんじゃないかなと、20センチだっていうのを見て避難をやめるとか、そういったのはかなり今回被害を大きくした原因になったんじゃないかなと思っております。
 そのあと、また3時1分に津波観測情報で石巻の鮎川で50センチですとか、釜石のGPS波浪計で――マイナスっていうのは潮位が下がっているっていうことなんですけども――30センチ下がっていると。そうすると釜石市付近の推定は、この時間で50センチぐらいになるでしょう。こういった感じで、どんどん津波が観測されるたびに気象庁が、情報を発表していくというようなことが3月11日に起こりました。
 ところが、3時14分、地震発生の28分後なんですが、先ほどのGPS波浪計が6メートル以上の津波を観測してしまいまして、GPS波浪計は沖にありますので、沖で6メートルということは、岸に近いところではもっと津波は高くなるということで、宮城県では大津波以上、大津波警報が10メートル以上、岩手県では6メートル以上という形で警報が切り変わっております。これを聞いている人と聞いてない人がたくさんいらっしゃいまして、聞いていたらもっとちゃんと避難していたといっている人もいらっしゃったのは事実です。現場では、私もそうだったんですが、停電しているし、車は渋滞しているで、相当混乱していて、こういうことがなかなか伝わってこないんです。実際に地震の被害が大きかった場所にいくと、それが実情かなというふうに思っています。大津波警報に切り上げられて、釜石市のNHKからいただいた映像を見てみると、大体5分後ぐらいに防潮堤を津波が超え始めて、それまでは港湾区域だけが津波で浸かっていたんですけど、だんだん市街地に入っていって、その2分後には防潮堤を完全に超えるような大津波が釜石を襲っています。地震が起きてから大体1時間後、NHKのカメラの映像をお借りしたんですけども、仙台市の沿岸に巨大津波が襲来して、まちを飲み込んでいる様子がとらえられているわけです。この地震発生から仙台の沿岸に津波が到達するまでおよそ1時間、1時間も時間があるんですが、仙台とそのとなりの名取市っていうところでは1500人以上の方が犠牲になっている。これはなぜそうなったのかっていうのをちゃんと分析して、対策に生かしていかなければいけないかなと思っています。
 人的被害の拡大の原因なんですが、やはり情報に対する――先ほど津波の観測情報ですとか津波警報の時系列を出させていただいたんですが――情報に対する理解と、それをどう利用したのかっていうのがすごく重要なのかなというふうに感じています。私がヒアリングをした内容をちょっとポイントとして幾つか整理させていただくと、先ほど申し上げたとおり、一度避難したんですけど、大船渡で20センチだっていうのを聞いて戻った人がいるとか、あるいは私のおばに聞いたんですが、津波がそこまでくると思っていなかったようです。私のおばは山田町の織笠というところに住んでおりまして、避難をしようと思って歩き始めたら、近所の人から「ここまでこないから、大丈夫だから家にきてお茶でも飲んでいきなさい」って言われたらしいんです。ただ、おばはそれを無視して高台の小学校まで避難したんですけど、その途中で呼びかけた方は津波で流されたという話を聞いています。あとは、仙台のほうでは、予報時間になっても津波がこないというふうなことが言われています。つまり気象庁というのはどうしても高目、早目に予報を出しますので、宮城県で津波が到達する時間っていうアナウンスをしますと、宮城県のどこなのかわからない。それを見て名取や仙台の人は気象庁がくるっていう時間になってもまだ津波がこない。だから今回も大したことがないんじゃないかなと思って、避難しなかったり、避難がおくれたりっていうようなことが実際にございました。あとは、避難所です。避難場所と避難所では、実はちょっと違っているんですが、そういった避難所で被災した人がいるっていうようなことです。そういうことを考えるとやはり正しい防災教育が行われていたのかというにちょっと疑問を感じるところでございまして、岩手県ですと明治の三陸津波が過去の最大津波ですよといった感じで、いろんなところで防災教育をされています。県も明治三陸津波を防ぐという目的で防潮堤のかさ上げなんかをしておりました。宮城県は宮城県沖地震がこれから来て、津波でこれは大変なことになるいうことで、宮城県沖地震についてのいろんな防災教育とか対策を練っていたんですが、先ほど実は山田町では400年前の慶長の津波のほうが大きかったという話を申し上げたとおりに、これが最大かどうかっていうのは、岩手県の中でも地区によってかなり違うんです。地区によってかなり違うんですが、大体見みると明治三陸が大きいから明治三陸でしょうというようなことで防災教育が行われていたというのが、ちょっと問題なのかなというふうなことを感じています。こういった避難したけど戻った人がいるとか、津波がそこまでくるとは思っていないとか、予測時間になっても津波が来ないから大丈夫だとか、避難所に避難したんだけど、そこは実は津波に飲まれる可能性があったというので被災をしたというようなことを防ぐために、先ほど御紹介させていただいた津波浸水予測マップ検索システムっていうのを東北調整部局さんと一緒につくらせていただいていました。先ほど申し上げたとおり、GPS波浪計が沖ではかった津波の高さ、それから地震の場所と地震のマグニチュードを入れると、こういった感じで津波がどこまで浸水しますっていうのを、地図上に表示するようなシステム。浸水
範囲ですとか、津波の高さですとか、到達時間が出るような仕組みになっています。このシステムは先ほど申し上げたとおり、岩手県の3市と宮城県の気仙沼市においては、1年近く前、そのほかの地区でもほぼ1カ月前には実はもう使えるようになっていたんですけども、実際いろいろ伺ったら利用されてなかったようです。こういうのが課題で、これをしっかり検証していく必要があると思っております。実際に、津波の浸水予測マップ検索システムでどういう情報が出たのかっていうことで、幾つかちょっと検証させていただいた例なんですけど、釜石沖のGPS波浪計で6.8メートルの津波が観測されたという事実に基づいて、それがどうなったかというのをちょっとやってみた例でございます。釜石沖のGPS波浪計の津波の高さは5メートルまでしかデータがなかったんですが、それで最大の5メートルっていうのを入れたときにどういう情報が出てきたかっていうのを、こっちが浸水予測マップ検索システムの画面で、こっちが岩手県のハザードマップの例をちょっと並べさせていただいています。先日、NHKのニュースナインってテレビ番組で、岩手県の釜石市の鵜住居っていう地区なんですけど、鵜住居地区で浸水範囲の外に避難所があって、その避難所に避難した方がたくさん避難所で犠牲になっているという報道を見まして、そこの鵜住居っていうところでどういう情報が出たのかっていうのを、私のほうでやってみましたら、もう浸水範囲をはるかに超えて、ここに高速道路ができているんですが、三陸縦貫道という道路がありまして、その下のところまで津波が入っていくというのが、GPS波浪計の津波の高さから求めることができました。こういう情報を使っていただければ、こういった県の想定では浸水範囲の外だと、大丈夫だというふうな方にも警告を鳴らすことができたんじゃないかなというふうに考えております。
 同じように、宮城県の南三陸町の志津川地区でございます。これ同じような縮尺で出させていただいておりますけども、こういった宮城県沖の想定範囲よりもはるかに広い範囲まで浸水すると、防災庁舎もそうですし、そのほか避難場所が川沿いに点々とございますが、そういった場所も津波で浸水することがこのシステムを使えば事前に把握することができたんじゃないかなというふうに思っています。これが大川小学校のあたりです。大川小学校のあたりでどんな情報が出せたのかなというのをちょっと検証した例でございますけども、これが宮城県の第三次被害想定の浸水予測図で、ここの部分まで津波で浸かります。大川小学校がここにありますんで、宮城県の想定では、宮城県沖地震の津波で浸からないというようなことになってましたけども、GPS波浪計で観測された津波の高さを入れると、大川小学校ちょうどこの辺にあるんですけど、北上川の堤防を津波が乗り越えて、大川小学校は浸水するということが、このシステムを使っていただければわかったのかなというのを、今さらながらにちょっと感じているところでございます。
 津波防災対策における現状と課題と展望ということで、やはり東日本大震災の反省を生かして、東海地震に備えていくのが必要かなと思っていますけども、最大の違いは何かというと、やっぱり東海地震は真下で起こると、目の前で発生して、先ほど仙台は震度6強だったんですけど、それよりもはるかに激しい揺れが多分くる、長周期の揺れプラス直下で起きますので短周期の揺れが起こる可能性もあります。そういう激しい揺れが終わったあとに、短時間で津波がくる。これが東日本大震災と東海地震の最大の違いなのかなというふうに思っています。第三次被害想定で東海地震では、マグニチュード8を想定されていると思いますけども、その8を超えるとひょっとしたら東日本大震災を上回る惨事になるんじゃないかなと思っております。それはなぜかというと、やはり、仙台とか、岩手県もそうなんですけど想定がひとり歩きしているような感じがあるなと。想定というのはあくまでも1つのケースであって、それを超えたり、条件が違うと地域によっては津波の起き方が違うっていう理解がまだ十分に進んでいないのかなというふうに感じます。あるいは、東日本大震災の映像を見て、間に合わないとか、無理だろうっていうような脱力感を感じる地区も若干ございますし、何とかなるだろうというような根拠のない楽観主義の方もいるようにお見受けしています。こういったものを少しずつ解消していくしかないのかなと思っておりまして、それに向けて何をするかというようなことでございますけども、やはりこれまでの想定という考え方からの脱却を、今後図っていくしかないのかなと。今までの想定というのは、国が地震の断層の形を決めます。それをもとに県が、県の被害を試算しまして、それをもとに市町村はハザードマップとか、防災マップをつくると。それをもとに地域ですとか、企業がいろんな避難計画をつくるっていうのがこれまでのやり方でございます。ただ、皆様よく御存じかと思うんですけども、想定どおりの津波が発生することなんかまれなわけです。ほとんどの地震とか、津波っていうのは想定してない形で起きます。津波の高さっていうのはわずかな条件の違いで大きく変わりますんで、想定というのはあくまでも1つのケースにしかすぎないっていうのを、ちゃんとお伝えしていく必要があるのかなというふうに感じています。かといって、施設整備もしていかなければいけないっていう背景もございますので、想定っていうのはあくまでも施設、防潮堤ですとか、避難ビルとか、そういったものを整備するための目標であるということをもっと明確に打ち出していく必要があるのかなと思います。岩手県とか宮城県は、どちらかというとそういったところがちょっと弱くて、想定を考えてすべてを備えるっていうようなやり方をしておりましたんで、それを超えた津波がきたときにどういった行動をとればいいのかっていうのが多分皆さんに余り伝わっていなかったんじゃないかなと思っています。
 それから、ぜひこれはお願いしたいなと思っておりますのが、やっぱり自分の想定を持つということです。私もいろんな方から聞かれるんですけど、東海地震って今度どんな地震が起こるんですかって聞かれます。先ほど申し上げたとおり、地震の起き方が少し変わると津波の高さって場所によって大きく変わってきます。どんな東海地震が起こるのかっていうふうな視点ではなくて、例えば、今静岡県庁におりますけど、静岡県庁まで津波がくるためにはどういうふうになったらくるのか、皆さん知りたいのって多分そういうことだと思うんです。自分の家に津波がくるのかどうか。くるとしたらどうなったらくるのか。いつくるのか、どのくらいの高さでくるのか。これを知りたいと思うんですが、それを伝えていくようなものをつくっていかなければいけないのかなと。それに備えていろんな地域の対策っていうのを考えていく必要があるのかなと思っています。そこで先ほど東北のほうでは津波の浸水範囲を予測するシステムをつくりましたっていうことを御紹介させていただいたんですが、それが使われなかったことの反省を踏まえて、私が今申し上げたような地域ごとの想定を持つための情報基盤をこれから静岡県ではぜひつくらせていただきたいなと思っています。情報基盤の中には、要するに物すごくいろんなケースを想定した地震とか、津波のシミュレーションしたデータをおさめておくわけです。使用する市民・県民の方から見たら、地震のマグニチュードが8だろうが、8.2だろうが、8.5だろうが実はどうでもよくって、要するに自分の家まで津波がくるかどうかを知りたいだけなんです。自分の家まで津波がくる条件はどういう条件ですかっていうのをこちらに問い合わせをすると、あなたの場所に津波はくるときは例えば、マグニチュード8を超えたときにきますとか、GPS波浪計の津波の高さが4メートルを超えたときにきますとか、堤防が壊れたときにきますとか、そのときに津波は10分できますとか、最大2メートルの深さで浸水しますとか、そういった情報を地域ごとに提供してあげる。従来のハザードマップじゃなくて、地域に応じたハザードマップがつくれるようなものを提供させていただきたいなというふうに思っています。
 これをもとに、例えば、GPS波浪計が4メートルになったらうちまでくるんだということになったら、GPS波浪計の情報はどうやって入手したらいいんだろうっていうことになって、それなら情報を入手する手段を考えましょうという形でどんどん発展していくわけです。そういった形で避難とか、命を守る方法を考えていくための基盤を最初につくらせていただいて、それをもとに市町村や住民、企業など地域社会それぞれの防災計画づくりを進めていただく必要があるかなと思っております。
 東海地震の第三次被害想定、現在私も委員になっていますけども、対策を実施中でございます。東日本大震災の経験を受けて、今国のほうでいわゆる連動型地震の見直しをしておりますけども、そうすると想定のかさ上げっていうふうなことが先々出てくるかと思います。県としては、やはり防潮堤の整備とか、避難場所の整備とか、国の方針に従うしかないのかなと思います。ただ、やはり静岡も慶長の津波ですとか、明応の津波など過去の大津波の研究は不十分で、これから県も調査を進めていこうとはしておりますけども、こういう過去の津波の調査には物すごく時間がかかります。次の東海地震にもしかしたら間に合わないかもしれないし、これからくる津波がこの慶長ですとか、明応と同じものだとは限らないわけです。ですから、施設の整備はちゃんと目標を決めてやる。それから命を守るための情報の整備、先ほど申し上げたようなことでございますけども、それを両輪で進めていただく必要があるのかなというふうに思っています。具体的な行動のシナリオのためには、具体的な情報が必要であるというのを書かせていただいたんですが、とにかく東海地震が起きると、津波がくるまで10分ありません。5分とか、10分の世界でございます。東日本大震災のように30分、1時間あるわけではございません。そういったシステムに頼るんじゃなくて、常に起きたときの行動を頭に入れておかないと、本当に被害は減らないというふうに思っています。地域ごとの避難計画や情報の伝達方法をあらかじめ地域でつくっていただいて、それを頭に入れて行動をとっていただくっていうのが必要なのかなと思っています。
 最後にまとめでございますけれども、県民の皆さんが共同で利用できる1枚の地震を想定した単なるハザードマップではなくて、地域ごとにそういった情報の基盤を整備させていただきたいなと思っておりますし、その基盤の情報を使って、市町と協力して全地域、全企業に普及していく。そういう計画づくりを進めていく。これは物すごく人の力が必要になりますので、市町と協力してやらせていただくしかないのかなと思っています。
 そういった検討の中で、必要な情報にはどういうものがあるのかというのを整理させていただいて、最大公約数、こういう情報があればとにかくおおよその地区は守れるっていうのが整理できましたら、そこに集中かつ優先的に情報がとれるようなものを整備していくことが必要なんじゃないかなと思っています。東海地震による津波の人的被害をゼロに近づけるためには、やっぱりこういった対策を全地域にくまなくやらせていただく必要があろうかと思っていますが、くまなく地域・地域で防災計画をつくるということになると、かなり時間がかかると思います。そうすると10年、20年っていうのはあっという間に過ぎて、東海地震が来てしまうことになると思いますので、東日本大震災では、先ほど御紹介させていただいたようなシステムを津波に備えてつくっておりましたけど、実際には余り間に合わなかったというような反省もございます。手おくれにならないように対策をさせていただければなというふうなことを考えております。以上で、私のほうからの話題提供を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございます。

○中谷委員長
 どうもありがとうございました。
 これから、質疑に入ります。
 委員の方にお願いをいたします。なるべく一問一答方式でお願いをいたします。
 それでは、質問・意見等ございましたら、発言を願います。

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