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中国駐在員報告

2013年6月 行政
駐在員 : 井口 真彦


     5月22日、中国人民銀行(中央銀行)の機関紙「金融時報」が一つの論評記事を掲載した。不動産加熱の問題を根本的に解決するため、地方政府が握っている土地使用権の売却権限を中央政府が取り戻す必要があるとするものである。これが、実際の政策に結びついていくかどうかはわからないが、地方政府にとっては極めて衝撃的な内容であると推察される。
     中国では、憲法によって、土地の私有は認められておらず、都市の土地は国有、農村の土地は農民による集団所有とされている。但し、都市では土地使用権という形で取引されている。一方で、農村では農民同士で請負経営権を譲る以外は取引が厳しく制限されている。
     中国の憲法には、この国有、集団所有という「公有制」の規定の他に、国(地方政府を含む)は公共利益の必要があれば、法律の規定に基づき土地を収用することができるという規定があり、補償についても規定されている。
     収用の手続を定める「土地管理法」によれば、農地を住宅、商業、工業など、農業以外の用途に利用しようとする者は、その農地を耕作している農民ではなく、その地域の政府に対して計画を申請して承認を求めることになっている。地方政府がこの計画を承認すれば、その土地は収用される。農民は、自ら申請することにより一定の補償を得るだけである。
     土地管理法には、「転用」に関する規定もあり、農地を収用した地方政府は、これを整地して公共設備を整え、法に基づき「国有地」に転用した上で、その土地使用権を競売で売り出すことができるのである。
     これらの規定によると、国土の半分近くを占める集団所有の農地を、住宅や工業に利用できる国有地に転用できるのは、国の収用を通じてのみとなる。
     地方政府は、このように、独占的に有する収用と集団所有地の国有地への転用の権利を行使して、これまで巨額の収入を得てきた。
     浙江省の開発区からの企業の移転要請案件に絡んで、ある専門家の方と話した際、その方が「当局政府は、開発区造成に関して巨額の利益を得ているのだから、補償金の請求については一切妥協する必要はない。」とおっしゃっていたのが印象的である。
     「金融時報」の論評記事は、「今は、不動産(価格)抑制に向けた措置を講じる重要な時期であり、地方政府が依存している『土地財政』を管理する必要がある。」、「中央政府は、国家が所有している土地の貸し出し権(土地使用権)を地方政府の手から取り戻し、同時に不動産税などの導入で地方政府の収入源を確保すべきだ。」としている。また、その背景として「地方政府は増える一方の『土地財政』への依存を高め、地方経済は不動産の上に怠惰に寝そべる構造が強まっている。」と指摘している。
     この地方政府の「土地財政」は、これまで中国の経済成長を支えてきたとも言えるが、急増してきた土地譲渡収入は、昨年から伸び悩んできており、転換点を迎えつつある。
     国は、この状況に対し、地方政府の土地譲渡収入に対する監督を強めていく姿勢に転じている。中央銀行の機関紙が「不動産加熱の問題を根本的に解決するため」としてこのことに論評するのは、国がマクロ経済をコントロールして過度なバブルの成長を防ぎたいとする意図に沿ったものである。更に、国はこれまで地方政府の土地譲渡収入に代わる財源を提供していなかったが、今回の記事では、不動産税(詳細は不明)などの地方政府の収入源導入の必要性にも言及しており、より現実味を帯びた内容となっている。
     地方政府の強大な権限、それに伴う不透明な利権構造にもメスを入れる極めて大きな問題であるが、習近平政権の汚職追放キャンペーンや近年の市民の権利意識や汚職問題への関心の高まり、ネットを通じた市民の直接の情報発信の拡大などとも絡んで、今後、大きな転換があるかもしれない。地方政府側の対応も含め、状況を注視していきたい。


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