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中国駐在員報告2007年8月 政治 中国の国家財政 来年オリンピックが開催される北京市では、オリンピックスタジアムなどの施設が急ピッチで建設されており、表玄関となる北京首都新国際空港から市内までの地下鉄工事が進められるとともに、さらに各種インフラの整備が続けられている。 また、2010年万博が開催される予定の上海市では、虹橋地区に空港、鉄道の一大拠点を建設し、中国国内はもとより国外からの旅客の表玄関にしようとしている。現在、世界で唯一、営業運転しているリニアモーターカーを上海浦東国際空港から万博会場経由で虹橋地区まで延長するとともに、中国最大の地下鉄網をさらに拡張させ虹橋地区に接続させる計画である。 沿岸部だけでなく中国の各主要都市間の高速道路、鉄道については、基本的なインフラは概ね整備されており、今年4月18日から行われた第6次鉄道高速化計画で、新幹線を運行させるなど、量的な面と質的な面も併せて整備を図っている。 中国国内を出張する度、市内随所の工事現場で大型クレーンを見かけ、建設重機の振動を体感すると、「広大な国土で建設されるこれらインフラ整備の資金はいったどのように賄っているのか。」という疑問がわく。中国は社会主義の国で土地も国有であるが、国家財政が無尽蔵にあるわけでもない。やはり名目はともあれ「税金」を徴収し、国家財政を形成している。 中国の税制は、世界主要国と同じように、国税と地方税に分かれており、それぞれ徴収した税金で、中央政府、地方政府の予算を基本的に賄うことになる。国務院国家税務局が公表した資料では、2002年の国税徴収額は、約1兆1千3百億元(日本円に換算すると約18兆円)、地方税徴収額は約5千3百億元(約8兆5千億円)、合計で約1兆6千6百億元(約26兆5千億円)であった。それが2006年には、国税が約2兆6千2百億元(約41兆9千億円)、地方税が約1兆1千5百億元(約18兆4千億円)となり、それぞれ5年間で徴収額が倍以上になっている。 しかし、広大な国土における交通、通信、電気、水道などのインフラ整備だけでなく、医療、教育、社会福祉、環境、軍事さらに経済格差是正のための農村問題解消政策など国内需要は膨大であり、財政支出は増加する一方である。2006年の国家総収入は、約3兆9千億元(約62兆4千億円)であり、一方、支出総額は、約4兆4百億元(約64兆6千億円)で、若干であるが出超となっている。 そのため財政赤字を厳しく抑制し、中央政府の財政赤字は長短期国債発行で賄っている。なお、国務院財政部より公表されている2006年の国債発行残高は、約3兆5千4百億元(約56兆6千4百億円)となっており、国債利息は2.4%から4.89%である。ちなみに2006年3月末の日本の国債発行残高は約671兆円(利率は1.7%台)で、政府借入金等を含めると総額828兆円の赤字である。 (参考資料) 1 中国の税収の推移 単位:億元
2 税の種類 (1)主な国税 消費税、車両購入税、関税、船舶税、営業税、企業所得税、資源税、 都市建設維持税 (2)主な地方税 都市土地使用税、建物税、都市不動産税、遺産税(現在未徴収)、 耕地占有税、土地増値税、車両船舶使用税、車両船舶使用監察税、 契約税(所有権証明)、屠殺税、宴席税、農業税、牧業税 (3)主な共有税(国と地方で比率を決めて共有徴収する税) 増値税(付加価値税の一種)、営業税、企業所得税、外商等私企業・外国企業所得税、個人所得税、資源税、都市建設維持税、証券取引税、株式取引印紙収入 |
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