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東南アジア駐在員報告
1999年10月 政治 駐在員 : 篠原 清志
東ティモール問題、豪州の姿勢に反発の声
東ティモールには、国連決議の下、治安維持のために多国籍軍が展開しているが、多国籍軍の大部分を占める豪州に対する反発が、インドネシアを中心に東南アジアで大きくなっている。
インドネシア側の見解では、豪州(或いは欧米)は、インドネシアが東ティモールを併合することを承認(欧米は暗黙の了解)していながら、独立派に肩入れし、国内の社会不安が高まっている中で、混乱が予想されたにもかかわらず、あえて住民投票を強行させ、選挙では独立派を応援、勝利を手助けするとともに、その後の混乱でも、経済的に疲弊しているインドネシアに圧力をかけ続け(100万人にも満たない東ティモール問題で、2億人の経済を締め上げ)、最後には自らが多国籍軍として進駐してきた。このような見解は、与野党問わず多くのインドネシア人の持つところで、反豪州感情が大きくなっている。
さらに9月23日には国営アンタラ通信が、豪軍は民兵に対して拷問などの残虐行為を働いていると報じ、多国籍軍に参加しているタイ軍幹部が、豪軍の強圧的態度を批判する見解も出ている。
また、豪州のハワード首相が、「欧米の価値観に基づく豪州がアジアの警察官になる」とのハワード・ドクトリンを表明したことに対して、マレーシアは、与野党問わず強い調子で反発。他国でも反発する意見が多い。
加えて、シンガポール紙は社説で、国際的な経済支援制度であるIMFや世界銀行の支援が、東ティモール問題解決のための政治的な圧力手段に使われたことに絡み、IMFで絶対的な決定権を持つ米国はじめ欧米諸国を強く批判した。
日本では、日本が戦時中3年間あまり東南アジアを占領したことのみで東南アジアの歴史を捉えがちであるが、豪州兵が銃口を向け、東ティモールの民兵や住民を腹ばいにして威嚇しているのをテレビなどで見た東南アジアの多くの人は、日本占領前数百年間におよぶ、植民地時代のことを思い浮かべている。
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