台湾駐在員報告
2015年11月 政治 駐在員 : 宮崎悌三
台湾の顔と言うべき総統を直接選挙で選ぶ日まで、あと2か月となった。最大野党の民主進歩党(以下、民進党という。)は、4年前に総統選に敗れた蔡英文氏(女性。同党主席)を早々と同党の公認候補として選出したが、与党中国国民党(以下、国民党という。)は公認の候補者選びが難航した。
国民党は、2014年末の統一地方選で大敗を喫した責任を取って国民党主席で現総統の馬英九氏が主席を辞任し、新北市長の朱立倫氏が新たに主席となった。当初から朱氏が国民党の公認候補となるという見方が大方であったが、朱氏は候補となることを否定し、7月中旬、国民党の全国大会では、同党で唯一予備選に出馬していた立法院(国会に相当)の副院長の洪秀柱氏(女性)を正式に指名することで落ち着き、台湾の総統選は初の女性対決になるとして、内外から注目されていた。
ところが、与党内には、当初から同党の有力候補とされていた朱氏や王金平 立法院長と比較して、洪氏の知名度不足を指摘する声があったことや、洪氏が台湾と中国の統一について踏み込んだ発言をしたことから、中台関係の現状維持を支持する台湾の世論において、洪氏は統一志向が強いとの見方が拡大し、洪氏に対する市民の警戒感や反発を招いた。世論調査による支持率は、当初より蔡氏が洪氏を上回っていたが、総統選と同日に実施される立法委員(国会議員)選挙での議席確保への影響を懸念する声が同党内で次第に高まっていった。
そこで、国民党は10月17日に臨時党大会を開催し、7月に洪氏を公認候補とする決定を取り消し、次期総統選へ向け新たに朱氏を公認候補として指名した。投票を3か月後に控えた段階での候補者差し替えは極めて異例である。
台湾の四大紙の一つリンゴ日報が実施した次期総統選に関する世論調査(有効回答数1,350)では、民進党の蔡氏を支持するとした回答は全体の約45.5%と最も多く、国民党の朱氏を支持すると回答した約26.2%を大きく上回っており、候補者を差し換えても巻き返しは難しいとの見方が広まっている。
選挙の争点は、やはり、これまでの中台関係をどのように構築していくのかという部分である。次期総統選は今後の中台関係を占ううえでも目が離せない。
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