中国駐在員報告



2001年5月 その他
駐在員 : 外山敬三


    (概要
     4月12日、上海市外事弁公室の案内で、在上海自治体事務所などを対象にした上海市・崇明島視察に参加した。
     崇明島は、揚子江が東シナ海の交わる河口にあり、海南島に次ぐ大きな島である。東西75キロ、南北15キロ、総面積は1,164平方キロメートル(上海市面積の1/5)、常住人口は約73万人である。
     崇明島は、揚子江の泥砂堆積によりできた島であり、歴史的には、唐の時代に泥砂が隆起して島が誕生し、今でも、毎年、東に向かって延伸し、2万haの面積が増えている。
     当地の産業は、農業依存度が高く、当地GDPの25%を占め、上海市の『台所』となっている。主な農作物は、お米、野菜、果物である。水産業も淡水域と海水域が交わる所から、養殖、漁労が盛んである。日本には、長ネギ、麹などが輸出されている。
     工業では縫製などの労働集約型産業が発達していて、縫製関係の研修生を常時3,000人ぐらい日本に派遣しているとのことである。
    (交通の便)
    崇明島には、上海市の呉淞や江蘇省の海門と結ぶ港が7つある。毎日、約160本の船が上海、江蘇と往来している。当日は、行きは高速艇(時間30分)で、帰りは快速艇(60分)を利用した。
     崇明島は、「陸の孤島」とも言われ、交通の便は極めて悪い。皮肉な言い方だが、公害がなく、豊かな自然に恵まれている。しかし、上海市は、この手つかずの宝島(未開発の地)に対して、開発計画を本格化することを決定したようである。そのため、現在、関係部門が調査中であり、今年6月までに開発計画と産業政策を策定し、交通整備においての目玉は、隧・橋(トンネル:浦東―長沙島、橋:長沙島―崇明島、崇明島―海門)であり、2005年までに完成開通予定との説明があった。
    (崇明島開発プロジェクト)
    上海市は巨大プロジェクトが目白押しだが、また一つ、崇明島開発プロジェクトが動きだそうとしている。地元政府関係者の今までの遅れを一気に取りかえそうといった意気込みはよくわかったが、「当プロジェクトが正式に発表になる前であり、今ならお得」といった風に、耳より話的な話で、盛んに誘致を薦めていたのには少し閉口した。
     確かに、橋がかかれば、交通問題は一挙に解決されるのはわかるが、ここの自然を如何に確保するのか、見えてこない。例えば、今回、有機栽培農法により野菜を作っている農場を視察した際、案内してくれた頑固そうな『おやじ』が目を輝かせて自信たっぷりに紹介しくれたが、今後、開発が進むのにともない、あの『おやじ』は同じような顔をしてくれるか、今から心配になった。
     崇明島開発プロジェクトの一つとして、香港の企業・上海実業(実態は上海市政府の海外企業)が崇明島の一角を確保し、閉鎖式の乗馬場を作る計画(競馬場とは言っていなかったが)、「できれば中国では初めてのーーー」の説明があった。(中国には既に乗馬場はあるので、これは競馬場に近いものと推測)
    「自然」と「開発」の共存を考えさせられた。難しいことはわかるが、豊かな自然は、一度失うと取り戻すには時間もお金も、開発以上にかかることは肝に命じるべきである。 

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