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2012年4月 政治駐在員 : 野村芳一
中国の最高国家権力機関である全国人民代表大会(全人代)が3月5日から北京の人民大会堂で開幕し、10日間の日程を終え14日に閉幕した。 大会冒頭、経済・社会を運営していくための主な目標を示す政府活動報告が温家宝首相から行われたが、その要旨は次の通りであった。 【主要目標】 ・GDP成長率を7.5%とする。 ・ 消費者物価指数上昇率を4%以内、都市部失業率を4.6%以内に抑える。 ・ 8,000億元の財政赤字を計上し、引き続き積極的な財政政策を実施する。 ・国民生活分野へ予算を傾斜配分、行政の効率化を図る。 ・穏健な金融政策を実施。人民元相場の柔軟性を強め安定を維持する。 【内需拡大】 ・重点目標として個人消費の拡大を目指す。 ・低・中所得者の収入増を図り、住民の購買力を高める。有給休暇制度を定着させ、消費者金融を拡大する。 【物価対策】 ・通貨供給と銀行貸し出しの総量を適正に調整し物価の安定を保つ。 【産業対策】 ・農業技術への補助制度を充実させ、農業機械化を加速させる。 ・先端装置の製造や、環境関連、バイオ医薬品、エコカー分野の発展。 ・ 直轄市や省都などで大気中微小粒子状物質「PM 2.5」の観測を始める。 ・ 都市部に定着する農民工(出稼ぎ労働者)を秩序正しく都市住民にする。 【国民生活】 ・低出産レベルを定着させ、出生人口の性別比率の是正に取り組む。 ・資産運用目的の需要を抑制し、住宅価格を合理的な水準に戻す。 ・全社会をカバーする信用情報データベースを構築する。 ・インターネットに対する管理を強化する。 ・知的財産権侵害への取り締まりを強化する。 ・文化産業が国民経済の支柱産業となるように推進する。 ・二酸化炭素や汚染物質の排出量取引を試験的に実施する。 【行政改革】 ・社会主義民主政治を推し進め、民主的な選挙や政策決定を実行する。 【対外政策】 ・自由貿易協定(FTA)の整備と地域経済の一体化を推進する。 ・軍隊の現代化や情報化を進め、任務遂行能力を高める。 この中で注目されるのは、今年の国内総生産(GDP)成長率目標を昨年の8%から7.5%に引き下げると表明したことである。欧州債務危機の世界経済への影響が懸念される中、これまでの成長優先から安定成長を目指す方向に向かって舵を切ったと言える。また、低・中所得層の収入増を図り、所得格差を是正して、外需中心から内需中心の経済への転換を目指している。 ただし、経済成長、内需拡大、物価の安定などを同時に達成するためには、かなり難しい経済運営が予想され、温家宝首相は、大会終了後の記者会見で、今年の中国経済の見通しについて「最も困難で最も希望のある年になるだろう」と話したという。
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