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東南アジア駐在員報告
2005年8月 経済 駐在員 : 橋本勝弘
・インドネシア ヤマハ発動機 同社における世界最大の二輪車工場の拠点に
<これまでの経過>
1974年7月にジャカルタ郊外で操業を開始し、現在では、敷地内(面積32万6千u)に、ローマティリアル(原材料品)から完成品までを一貫生産出来る体制が整っている。これは、操業当時、部品を供給できるローカル企業がない中、全てを自社生産しなければならなかったためで、同社の担当者は、自生(自社生産)との闘いであったと述べている。
1997年の通貨危機時、4ストロークエンジンへの対応のための投資の遅れによる悪影響などにより、二輪車のシェアを落としている。
スハルト時代(1968年〜1998年)は軍隊が労働争議を鎮圧し、混乱を押さえたが、メガワティ時代(2001年〜2004年)は労働組合幹部の影響が強く、労働問題の改善という面では後退した。ソニーが2001年に見舞われた約200日近くに及ぶ労働争議、組合員によるソニー製品の不買運動は代表例であるとされている。
法律の整備という面では、新投資法と共に労働法の改正も大きな課題である。
<同社で世界最大の二輪車工場>
同社のアセアン主要3ヶ国(インドネシア、タイ、ベトナム)における2004年の販売実績はインドネシア87万台(対前年比54%増)、タイ28万台(同48%増)、ベトナム20万台(同60%増)で合計135万台を記録し、2005年は対前年比39%増の188万台を見込んでいる。こうした好調な需要に対応するため、世界で3番目(中国、インドの順)の市場規模があるインドネシアを同社で世界最大の二輪車工場の拠点と位置付け、第二工場を整備し、生産体制を強化する。
第二工場は西ジャワ州カラワン国際工業団地内に30万uの敷地を確保し、約6,700万米ドル(約107億円)を投資し、2006年1月から年30万台で稼動する。世界35ヶ国(60工場)にある同社の中で、インドネシアが最大の生産拠点となる。
<インドネシアでの同社の特徴>
現地調達率は93%(一部アセアン内の部品補完を含む。)に達し、日本国内からは、ボルト、ワッシャーなど、精密で強度が必要なものを輸入している。こうした業種は、日本国内で機械化された生産設備を有し、新たに国外に出るメリットは少ないと思われる。
また、部品関連企業は約120社で、内ローカルは半数の約60社で、販売代理店(資本は入っていない。)は、約1,000社に上り、専売制のため、シェアの拡大と共に増えている。
<好調な販売理由等>
@二輪車の大きなマーケットが存在することが、インドネシアに拠点を置く理由で、近くで生産することにより、情報を早く、的確に入手できるメリットもある。
A2001年末以降、ルピアが安値とは言え、安定(対ドル=9,000ルピア前後)しており、マクロ的な経済を評価する声がある。また、バイク需要が増える目安とされる700米ドルを国民の平均所得(900米ドル)が超え、消費が伸びている。
B金融系、ディーラー系、独立系などの二輪車購入のためのローン制度が整備されてきた。購入者の8割がローンを利用しており、20%の利率も、年率6%前後に及ぶ物価上昇を考慮すると、購入を控えるマイナス要因とはなっていない。
<インドネシアにおける二輪車の生産見込>
※聞き取り調査により筆者が作成
| 2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 |
ホンダ | 200万台 | 300万台 | 300万台 | 300万台 |
ヤマハ発動機
(シェア) | 88万台
(22%) | 120万台 | 150万台 | 180万台
(29%) |
YIMM(*注1) | 88万台 | 120万台 | 120万台 | 120万台 |
YMMWJ(*注2) | − | − | 30万台 | 60万台 |
スズキ | 80万台 | 120万台 | 200万台 | 200万台 |
上位3社計 | 368万台 | 540万台 | 650万台 | 650万台 |
市場規模見込 | 390万台 | 500万台 | 550万台 | 620万台 |
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