台湾駐在員報告
2018年12月 政治 駐在員 : 宮崎 悌三
台湾の統一地方選挙(地方政府の首長及び議員を選出)は、11月24日(土)に投票が行われ、開票の結果、与党の民主進歩党(以下、民進党という。)が、22県市のうち、直轄市2市を含む6県市に留まり、選挙前(直轄市4市を含む13県市)のおよそ半分に勢力を弱めた。
選挙の勝敗については、内外で様々な分析が行われているが、地方統一選挙と同時に実施された住民投票が、地方統一選挙に影響を与えたと見る識者もいる。住民投票は、計10件の項目についての是非を問うもので、性・婚姻の平等(同性婚等)やそれに関する教育等を扱ったもの5件、オリンピック参加時の名称を扱ったもの1件、エネルギー・環境・食を扱ったもの4件である。割合としては、性・婚姻の平等を扱ったものが半数を占めており、与党民進党として明言はしていないものの、政策の重点としているものが名を連ねていると有権者は理解したと識者は見ている。
与党民進党を支持する層や無党派層は、民進党が推し進めようとする政策に全て同意をしている訳ではない。そこを最大野党の中国国民党(以下、国民党という。)は、有権者の声を上手く吸い上げる形で住民投票に対するイエス・ノーを選挙戦の中で明確にし、国民党支持層に加え、前回、民進党を支持していた層や無党派層の理解を得たようである。
一方、民進党は、住民投票に対する党の意思表示をすることがないまま、住民投票の項目の是非について、国民党の選挙戦で上手く利用される状況に置かれ、守りの姿勢に終始した。
私の周囲でも、普段は民進党あるいは国民党支持であるが、今回の選挙では、他の政党や無党派候補に入れてみたいという人が多く存在した。バリバリの政党支持者ではないこうした薄い緑(本来は民進党支持層)や薄い青(本来は国民党支持層)、無党派層が、選挙によって「人を換えてみる」ことに対して、積極的に自分の一票を投じた可能性がある。高雄市長選で絶大な人気を博した韓国瑜(かんこくゆ)候補による「韓国瑜効果」が台湾全土に広がったのは、そうしたことの証の一端であるように思える。
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