東南アジア駐在員報告
2015年3月 社会・時事
駐在員 ： 吉住理恵子
シンガポールに赴任してから、リー・シェンロン（Lee Hsien Loong）首相のフェイスブック（ＦＢ：Facebook）をフォロー(購読)している。
公式行事でのにこやかな写真が掲載されることもあれば、“Photo by me”と注釈の打たれたプライベートな写真が貼られていることもあるなど、硬軟取り混ぜた話題は見ていて楽しく、現在、50万人を超える人が彼のＦＢをフォローしている。文末のＬＨＬという署名が首相本人の書き込みの証だと思うが、よくまあ時間があるものだと感心する。基本的には首相の投稿は英語だが、中華系コミュニティへの訪問に関しての書き込みでは中国語が使われ、また、まれにマレー語での書き込みもあるなど、多民族国家のシンガポールの首相ならではだ。
チャイニーズ・ニューイヤーを目前にした２月15日（日）、リー首相のＦＢに、病床での寝巻き姿の顔面大写しの写真が掲載されたのを見て驚いた。前立腺がんの摘出手術で、入院中だという。
すぐに「手術の成功を祈っています！」「早くよくなってください。」となどという書き込みが１万件以上寄せられた。報道によると、手術数時間前にはマレーシアのナジブ首相、インドのモディ首相からもメッセージがあったという。（ちなみに、病床写真は“Photo by Ho Ching and me”。Ho Ching は、シンガポールの政府が所有する投資会社テマセク・ホールディングスのＣＥＯを務めている首相の配偶者だ。）
手術後の16日には手術成功を報じる首相府の公式発表とほぼ同時に、ＦＢにもＬＨＬの署名入りで、お見舞いへの感謝の言葉、見舞客（トニー･タン大統領）と一緒に撮った術後の写真、インターネットを通じて閣僚と話をするリー首相の元気な姿の写真などが投稿された。
一方で、リー・シェンロン首相の父であるリー・クアンユー初代首相が重い肺炎のため、２月５日から入院し、集中治療室で手当てを受けていることを首相府が発表したのは、春節の祝日があけた２月２１日、同氏の症状が安定してからだった。リー・シェンロン首相も同日に、父親を見舞ったことについて触れているが、写真は2013年の旧正月に家族で撮った写真のみである。
知らせたい情報を知らせたいタイミングで出すことができる情報媒体だけに頼ることのあやうさを、ふと感じる瞬間も増えてきたように思う。
（３月23日、リー・クアンユー元首相は91歳で逝去されました。心からご冥福をお祈り申し上げます）。
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