東南アジア駐在員報告
2016年8月 社会・時事
駐在員 : 吉住理恵子
7月上旬、マレー鉄道を利用してシンガポールからタイのバンコクまで、マレー半島を縦断した。運行遅延が恒常的で4時間遅延も日常茶飯事と経験者から話を聞き、どうなるかと心配していたが、意外にも(?)全行程を通じて発車時間の遅れはなく、到着の遅れも最大30分程度、座席も予想よりも快適だった。しかし、シンガポール(SIN)とクアラルンプール(KL)の間は、ジョホールバルとゲマスで2度の乗換えが必要で、列車の待合せ時間を含めて9時間超かかった。飛行機なら50分、高速バスでも約5時間で到着でき、高速バスは会社によっては鉄道と同程度の運賃設定もあるため、わざわざ鉄道を選ぶ人は多くはない。
SIN-KL間には、両国政府による高速鉄道(HSR)計画がある。2013年に発表され、約340キロを概ね90分間で結ぶ計画だ。今年7月19日に両国政府による覚書が調印され、2026年開業に向け、ノンストップでSIN-KLを結ぶ越境特急と、マレーシア国内のみの各駅停車の運営を分離し、それぞれの国際入札を来年実施することなどが明らかにされた。
開業時期が明らかになったことで、日本、中国、韓国をはじめとする各国の受注競争が熱を帯びている。日本からは国土交通省の石井大臣がマレーシア及びシンガポールを訪問し、日本の新幹線システムの安全性、信頼性とともに、初期投資額のみでなく、整備後の維持管理を含めたライフサイクルコストの面での優位性をPRし、新幹線方式の採用を訴えた。あわせてクアラルンプール中心地にある高級ショッピングセンター内では、日本の新幹線技術をPRする特別展示なども行われ、親子連れで賑わった。
HSRの実現によりSIN-KL間のビジネス客や労働力の移動が容易になれば、経済圏全体で域内競争力の強化に繋がることが期待される一方、両都市間の航空便を運行する航空会社に大きな打撃となるという専門家の指摘もある。今後の地域の発展や変化が注目される。
10数年後、日本の新幹線技術を用いたマレー高速鉄道に乗り、再びシンガポールからクアラルンプールへの車窓風景と眺め、変化に想いを馳せる日はやってくるだろうか。
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