東南アジア駐在員報告



2015年12月 経済
駐在員 : 吉住理恵子


11月3日、ジェトロ・シンガポール事務所主催の「シンガポール就労ビザ・雇用法セミナー」が開催された。

シンガポールの労働者の基本的な労働条件を定める雇用法は、雇用者側に有利で、特に解雇は雇用契約に基づく一定期間前に通知すれば合理的な解雇事由が不要である点、労働者側に手厚い日本とは大きく異なる。

だがセミナーでは、昨年からシンガポール人に対して公平な雇用の機会を与えることを使用者に義務付けるFCF(Fair Consideration Framework)制度が始まり、労働力確保や解雇(特にシンガポール人)が雇用者側に厳しくなりつつある現状が、法律事務所から事例を交えて紹介された。

一例では、駐在員等が家族帯同ビザ(DP)取得申請を行うための月額給与基準は、今年9月1日から5,000シンガポールドル(約425千円)に引き上げられ、基準を満たさなければDPが更新できなくなった。また、同業他社と比べて、外国人採用率が著しく高い(シンガポール人雇用率が低い)会社には査察が入り、最悪の場合、外国人労働者就労ビザ発給差し止めのケースがあるという。国内労働力の3分の2を自国民によって構成する“Singaporean Core in Workforceを目指し、今後はシンガポール人を育成できる外国人を中心に受け入る姿勢だ。

「解雇が自由」という考えも危険という。特に、中高年、低学歴のシンガポール人に対する解雇の場合、新聞への告発や労働大臣への申し立てに際して、当局の判断は労働者保護となる傾向があり、十分な解雇前調整が必要だそうだ。日本企業の場合、パフォーマンス評価を一律に平均点とすることもあるが、それでは従業員の解雇で紛争になった時に抗弁できないため、平時に従業員の業績、行状を厳しくチェックしておくことが必要だとの助言があった。

シンガポール人は給与水準が高く、同額給与の外国人労働者と比べた場合、パフォーマンスが割高だ。GDP成長率の見通しが約2.0%に下方修正されるなどシンガポールの成長率が鈍化している中、各企業が生産性向上のために優秀な外国人労働力を安価に確保しようとしても、そうは問屋がおろさない現状となっているようだ。

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