台湾駐在員報告
2018年9月 政治 駐在員 : 内藤 晴仁
「チャイニーズタイペイ」は、台湾が国際組織(APECやWTO等)や大会(五輪やW杯サッカー等)等へ参加する際に使用する呼称である。
「チャイニーズタイペイ」の呼称が使われ始めたのは、台湾が国際社会からの離脱を余儀なくされ、代わりに中国がその存在感を高めた1970年代後半のことである。この頃、すでに国際社会での中国の優勢は確実となり、台湾の国際社会復帰は困難な情勢であった。このような背景の中「チャイニーズタイペイ」の呼称は、台湾が中国との並存を許容しながら国際社会へ復帰する現実的な道筋となった。現在、台湾は国際組織や大会等へ参加する際「チャイニーズタイペイ」の呼称を使用しながら、国際社会へ復帰を進めている。
最近、台湾の一部では「2020年東京五輪は「台湾」の呼称で参加」を目指す運動が話題になっている。「チャイニーズタイペイ」以外の呼称で国際社会への復帰を試みるこの行為は、中国を刺激した。中国はこのことに対し「(かつて中台両政府が合意した)ひとつの中国の原則に反する」と不快感を示した。
また、このことが起因となり、台湾で開催予定の国際大会が中止となったり、「台湾」を用いた多国籍企業が呼称方法変更の指導を受ける等多方面で影響が生じている。中台両政府の関係も冷えこんでおり、解決の糸口は見えてこない。
台湾は今夏、「2018年アジア競技大会(開催国:インドネシア)」へ「チャイニーズタイペイ」の名称で参加した。呼称問題が起因となり、今後の台湾人選手の国際イベント等への参加機会が奪われることがないように願っている。
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