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ヨーロッパ駐在員報告

2002年2月 駐在員レポート
駐在員 : 森 貴志


知的産業集積地域の創造


―静岡県の未来への地域のあり方―



主旨
 東京一極集中から地域分散型社会と言われて久しいが、国、地方の公的機関をはじめ、大学を中心とした学術界、さらに経済の推進の根幹である企業等産業界が相互に機能することにより、特定の地方地域が突出した発展を遂げている例は日本では見当たらない。
 欧米において、米国で特に顕著であるが、ベンチャー支援環境整備、いわゆるビジネスインキュベーション事業により、経済への貢献、荒廃した街の再開発などに大きな成果をあげている例が数多くあることは周知である。
 今回、欧州の一地域を参考にし、静岡県における地方地域の未来像の一例を考察してみたい。

成功する地域
 成功地域の定義を定めておく。
 「雇用創出や税収入増加などの経済面での貢献があり、併せて、交流人口の増加が図られ、国内外に及ぶ地域のステイタスが確立される。」こととしたい。
東京大都市圏外である我が県内地方都市の成功の条件は、魅力ある十分な仕事の供給があり、住環境がよく、良好な質の生活が送れることである。
以下に地域の発展のキーポイントをあげてみる。
(1) 大学の地域経済への貢献
    国立、県立などの母体はともかく、地方大学が地方を代表する研究機関として、人的供給源となり、地域の経済活性に深く関与すること。
(2) 優秀な若者の集積
    大学、研究機関等地域の機関の特定分野に国内屈指のレベルを持つ若年層が集積できる基盤を形成すること。
(3) 良好、高質な住環境
    自然環境に恵まれ、かつ知的文化の醸成がなされている快適、高質の生活空間が確保された、いわゆる「定住したい」と思える条件が揃っていること。
(4) 地域に愛着をもつ実業家サポーターの存在
    地域企業を問わず、地域に愛着を持つ実業家との連携を密にし、地域への貢献を促す。
    地元優良企業のオーナーや、地元出身の実業家へのボランティアの呼びかけにより、人的協力も含め、地域作りへの参画を容易にする態勢を整える。(特に地方篤志家、事業家、資産家などの協力である。)
(5) 公共団体からの産業界学術界への強いアプローチ
    官、産、学の連携は言葉として言い尽くされており、3者が要となるのであるが、産業界と学術界の結びつきをより強大なものに作り上げるために、県等各地方公共団体が始めに学術界、産業界へ働きかけていく。

 こうした条件は、成功地域創造のための共通の基本要素として重要であるが、最も必要なことは、地域活性化への足がかりとなる分野を絞り込んでいくことである。各方面での総花的な発展という目的ではなく、特定分野の施設、人等の集積によって特定地域発展を促すと考えることが重要である。

地域のターゲット
 「ベンチャー先進国」として米国で、インキュベータ環境を整えることにより、起業を誘発し、地域を発展させた例は、日本国内ではよく紹介されている。
 産業分野は、コンピューター、半導体、ソフトウェア等のIT産業が中心であり、特に有名なところとしては、米国のシリコンバレーや、オースチンなどである。それに呼応するかのように、東京渋谷が発信地のビットバレーをはじめとする同様の動きとして、埼玉、神奈川、名古屋、札幌、仙台、福岡など多くのITインキュベーター地域が起こっている。
 しかし、官産学共同の地域活性の対象分野については、IT産業に特化したものではない。IT分野をターゲットにすることが成功の鍵ではなく、ターゲットを何かに定めることそのものが重要である。今日、日本ではそのターゲットがIT産業に集中されている。
世界の壁がなくなり、地球規模でのビジネス交流が行われる今日、公的機関、民間を問わず、またあらゆる産業に渡って企業の持つ技術、ノウハウの権利保護、権利主張が益々活発化している。しかしながら日本は欧米、欧州に比較してこうしたパテント分野は余り醸成されておらず、地方においてはあまり議論がされていないのが現状である。
また、県立試験場、大学等が所有している職務発明による特許、商標、さらには本県が突出している各種行政手法(ビジネス特許としての価値の再認識)などが有望な財産として認知、管理に目を向ける時期にも来ていると思われる。
 今回ここで、将来の有望分野として「特許、実用新案、商標」等のパテント分野をあげ、その分野で突出した情報、産業集積地域形成という「成功する地域」構想を考えてみる。


ターゲットへの道
 この構想が導き出された根底にある理由としてEUの背景がある。
日本の中央政府と地方政府との関係を見、地方の発展を考える時、欧州のEU機関とEU加盟国との関係が大いに参考となる。当然EUは国家ではないことから、EU案は各国に確固たる強制力は持たない。そのことは日本の国家と地方公共団体との関係とは大きく違う。
しかし、中央から地方への機関移行のようなケースを考えた場合、EUはその機能移転に伴う地方への影響のシミュレーションとして、とても意味深い実証ケースがある。
EUにはそれぞれ専門別に個々の機関が存在し、その機関がEU各諸国に分散されて設置されているが、必ずしも大都市圏だけに集中されているものではない。地方都市に特定機関が移管されることにより、特定分野での突出した各種投資が集中し、ステイタスの確立が促され、さらに投資が行われるという循環により地域が活性化していくケースがよく見られるのである。
また、ユーロ通貨統合等により、政治、経済をはじめ多方面で、各自の持つ権利について再認識が行なわれている。産業界においても、各々の企業が持つ技術から経営手法のノウハウまで幅広く先取権利の価値が競合相手との対抗要件として、重要な位置を占めて来ている。
ここで、将来有望分野のこの「知的所有権関連分野」の集積によって、地方都市ながら、そのブランドを確立しつつあるEU内の1都市を紹介する。

スペイン、アリカンテ市における知的財産集積地域形成
 アリカンテ市は、スペイン南東部バレンシアの地方都市で、地中海に面した保養地である。スペイン50県のうちの一つであり、アリカンテ県の首都で人口28万人の規模である。バレンシア第2の都市ではあるが、規模はあまり大きくなく、マドリッドから432km、バルセロナから544km離れており、陸上交通は、あまり至便とはいえない。ただし、市内から12kmのところに空港があり、マドリッドから日に10本、バルセロナから5本の便がある。
 この地方都市はEUの機関であるOHIMOffice of Harmonization in the Internal Market)を誘致したことから変革を遂げる。
OHIMは直訳ではわかりにくいが、いわゆる知的財産権に関するEUの執行機関である。欧州における知的財産権のメッカと変貌するのである。ここでの中心機関は、アリカンテ大学で、客員教授を中心として、特許、商標の権威が集まり、大学もこの分野では突出したレベルになっていく。また、この知的財産権に関連する国際会議、セミナー等が行われ、またその居住環境のよさが相まって、ホテル、レストラン、商店、ツーリズムの産業が次々と集積されてきたのである。
つまりこの地域の特徴は、大学が中心となり、専門分野に関して、最新かつハイレベルの情報が集まることにより、物的、人的資源の投入が、公共を問わず民間投資の面からも行なわれているということである。さらに学術、ビジネスの集積から、付随して更なる観光へのアプローチもされ、交流人口は、人口の数倍にも及んできている。
特筆に値するのは、欧州特許庁(EPO)のあるミュンヘン在の特許事務所のほとんど全てが、アリカンテに支所を設けている事実である。
そして何よりステイタスの確立が重要である。「アリカンテ」という地方都市は、知的財産に関する欧州メッカとして、居住の快適性を持つ保養地の特徴も併せ持った、安全、快適な知的レベルの高い洗練された街という「ブランド」を確立しつつあるのである。

アリカンテ市(海岸のヨットハーバーから街を望む)
6 静岡の将来
静岡という地は日本国のみならず世界的に見ても、その可能性の高さは群を抜いていること再認識する必要がある。
あらためて言うまでもないが、世界経済第2位の国の首都からの距離の優位性、広い海岸線、森林その他の自然環境のよさ、陸上交通に加え、海港、さらに空港等による至便な移動手段確保、最近の高質な文化の醸成、日本のシンボル富士山を持つ県であること等、利点は計り知れない。
さらに、ワールドカップ、国際園芸博覧会開催による知名度向上で静岡が世界的になっていく。こうした基盤を前提に、日本のみならず世界に対するSHIZUOKA」のブランドを確立することは、今後の地方発展に欠かすことのできないことである。
そこで、治安がよく、公害がなく、息の長い、地域イメージの良好な産業集積地形成による大きな民間投資誘致を目的とする場合、大型重厚施設整備が必要なく、環境に影響を及ぼさない、業務従事のため常時大都会に居住する必要のないような将来有望な分野として「知的財産」に着目し、そのブランドイメージを定着させる地域、つまり、パテント分野集積地「SHIZUOKA」の形成が注目される。
今まで、「業種」での集積地形成が中心であったが、「業務内容」という切り口で各産業にまたがる、研究者、実務者の集積への提案である。
東京集中を解消するため中央省庁も、機能移転が取り上げられているが、特に「知的財産権」を扱う特許庁関連機関の移転はその実現性の有無は別として注目したい。
静岡県は、現在東部に「ファルマバレー」構想があるが、これは医療、薬品関連分野の集積を狙っているものである。また県立大学の所有している職務発明は、薬品分野に特化していることから、医薬品関連のパテントを中心とした都市構想の展開も考えられる。
また、空港周辺に構築することも、空港の利点を生かした地域作りとして有効であるとともに、伊豆地域という自然環境の良さを活かした知的人材への呼びかけ等、特定地域の選択には事欠かない。



おわりに
今後は、各地方独自の地域形成が、その存続意義として、必ずや不可欠となる。
本県は、国という枠の中でなく、世界の中でそのブランドを確立させるべき潜在能力を十分に持っている。地方都市が未来像を自ら策定し、国家の施策に委ねるのでなく、国家に対しても、その実現にために攻めていくという欧米の都市づくりを参考に、未来地方都市を形成していきたい。
経済面での貢献、交流人口の増加、なにより地域のステイタスの確立という成功地域の形成のため、「パテント分野」が一つのターゲットになりえると考える。
いずれにしても、「地域のブランド化」、これが21世紀の地方都市形成のキーワードと考える。


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