台湾駐在員報告
2015年4月 経済 駐在員 : 宮崎悌三
台湾の政府当局(衛生福利部。日本の厚生労働省に相当)は、日本産食品(農産品、加工食品等)の輸入検査に関し、全ての輸入品の放射能検査と産地表示(都道府県)を義務化する動きを見せている。
3・11東日本大震災以降、台湾では、福島第一原発に近い5県(福島県、茨城県、群馬県、栃木県、千葉県)を産地とする食品の輸入を禁止しているが、この措置に加え、日本産食品全てを対象とする今回の動きに対し、衛生福利部には反対の声が多く寄せられている。
衛生福利部は、4年前の東日本大震災以降、6万5千件の日本からの輸入食品を検査したが、放射能が検出されたのは205件で、その全てが日本及び台湾の基準の範囲内であった。また、衛生福利部が、今年2月に開催した公聴会においても、大多数が反対あるいは衛生福利部のやり方に疑問や不満を提示する内容だったという。
この2年ほど、台湾社会を騒がせているのは、食品の偽造や偽装に関する問題で、最近は食用油問題が記憶に新しい。この食用油の問題を取り上げた台湾現地のメディア(中天テレビ)による食品の安全問題を特集する番組では、福島第一原発事故による輸入規制問題も取り上げられた。特集番組の結論として、食品の安全に関する問題に関して、重要なのは、「情報公開、台湾への輸入の際の水際の検査能力確保、台湾当局の食品の安全を確保する能力に安心しないこと」という何とも現実的なコメントを添えている。
このような動きの最中、台湾の貿易会社が、日本で日本産加工食品を仕入れした後、輸入禁止の5県で生産された加工食品を東京産などと産地を偽ったラベルを貼付し、台湾で販売していたという事件が起こった。ことの発端は、今年2月下旬、基隆港に到着した日本産醤油について、品物に貼付した産地表示と通関申告内容の不一致が明るみに出たことである。
台湾当局は、輸入禁止の5県で生産された商品を扱っている百貨店、スーパー等に回収を命じ、台湾の貿易会社計10社の立ち入り検査を行ったところ、日本から輸入している約3千品目の加工食品のうち、365品が実際は5県で生産されたにもかかわらず、他の都道府県産や米国産と表示した中国語のラベルが貼られていたことが判明。同時に進めている放射能検査では、偽って表示した品物からの放射能は検出されていないが(3月26日現在)、今回の事件が、5県からの輸入禁止や日本産食品輸入検査強化の動きに与える影響も少なくないと考えられる。
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