台湾駐在員報告
2015年8月 行政 駐在員 : 宮崎悌三
台湾の北西部にある苗栗県(人口約57万人)が、職員の給与や退職金が払えなくなるといった深刻な財政問題を抱える事態に陥った。
昨年暮れに同県のトップとなった徐知事は、この事態に対処するため、行政院(内閣に相当)の毛院長を訪ね、同県の財政問題に助力を要請した。この要請により、危機は一旦回避されたものの、行政院の同県への対応としては、追加支援は出来ないということを原則とし、同県の人件費や政策経費が正常に支出可能となるよう、中央政府としても財政改革対策強化を促していくという立場を明確にした。行政院によると、同県の通年税収は220億元(約880億円)、支出は320億元(約1,280億円)となっており、財政赤字は100億元(約400億円)に達していると指摘。同県の財政問題が明るみになったのは今年1月であるが、それ以降、中央政府は同県へ34億元(約136億円)を上回る支援をすでに行っていた。
台湾では、償還期間が1年以上の未償還債務額が当該年度予算総額の半分を超えることを法令で禁じているが、台湾財政部(財務省に相当)によると、同県のその比率は、2014年度予算では約61%で、財政問題が懸念される40%を遥かに超えていた。実は、同県の他にもその比率が著しく悪い地方政府が複数あり、法令で禁じている半分(50%)を超えているのは、北東部の宜蘭県(約63%)で、同様に深刻な財政問題を抱えていると見られる。さらに、50%は超えていないものの、中南部の雲林県と北部の基隆市(約47%)、南部の嘉義県(約45%)、同じく南部の屏東県、北部の新竹県や新竹市(ともに約44%)など、40%を超えている地方政府は、苗栗県を含め9つ存在している。
今回、深刻な事態となった苗栗県の財政悪化の原因として、前知事の劉氏による福利厚生補助金の増額、各種大型イベントの相次ぐ誘致が原因とされ、徐知事は負債を残した劉氏を非難しているが、劉氏や同氏の支持陣営からは、徐知事の無能を指摘するなど、非難合戦を繰り広げている。
苗栗県は、子どものいる母親に対する養育補助等の縮小、学校給食の有料化等を検討しており、経費削減と収入増の取組みが急務となっている。
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