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ヨーロッパ駐在員報告
1999年5月 社会・時事 駐在員 : 森 貴志
・ 「コラテラル・ロス」
「コラテラル・ロス」という言葉がある。直訳は「付随的損害」であるが、
具体的にはNATOがユーゴに対して行っている空爆で、破壊するつもり
はないが爆弾やミサイルが当たって人命や建物に生じた被害を指す言葉で
ある。
4月中旬にはNATOの誤爆で、コソボ避難中の市民が多数死亡した。
この他にも目標を外れたミサイルが住宅地に落下したり、橋を通りかかっ
たバスが空爆の巻き添えになるなど、NATOが空爆の回数を増やすとと
もに、「付随的損害」も急増している。
NATOの報道官は、付随的損害を最小限にする努力をしているが、被
害は不可避だが、全体から見ればこれらが起こるケースは極めて少ないと
声明を発表している。ユーゴ一般市民はこの状況をどのように受け止めて
いるのだろう。
ここドイツでは、ごく普通の生活を続けられるが、わずか飛行機で1時
間のユーゴではこのように人民が恐怖に怯えている。
コソボに残っているアルバニア系市民の虐待と、代償としての空爆によ
るユーゴ市民の恐怖というこの袋小路の奥に潜むものは計り知れないが、
現実にすぐそこで起きていることである。
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