中国駐在員報告
2008年6月 経済
駐在員 : 若田部 孝
四川大地震、経済面への影響
〜1兆円を超える災害復興再建基金を設立〜
5月12日(月)午後2時28分、四川省汶川(ブンセン)県を震源地とした四川大地震が発生した。この地震は内陸型地震では世界最大規模といわれ、時間が経つにつれ、甚大な被害が判明してきた。5月31日現在、死者・行方不明者約9万人、負傷者約37万人、被災者約4,500万人となり、近年まれに見る大震災となった。
この地震による経済面への影響について、中国国内では次のように報道された。
最初に、直接的な経済損失に関し、中国国有資産監督管理委員会の李主任は、5月21日の記者会見で、「四川大地震による大手国有企業の損失額が当初の推計で300億元(日本円換算:約4,800億円)を超える見通し。大手国有企業152社のうち、四川省に本社を置く企業は3社、系列で同省内にある企業は50数社。この内、被害が深刻な企業として中国東方電気集団等数社あるが、国有企業全体における損失割合は低く、今年の年間業績目標は達成できる見込み。」と発表した。
また、本県進出企業を含む外資系企業の直接的な損失額については、「比較的軽いものにとどまった。」と、海外メディアから報道された。その理由として、四川省が中国内陸部に位置し外資系企業の進出数が沿岸部に比べ少なかったことや、外資系企業が集積している直轄市の重慶市が震源地からある程度離れていたことなどが挙げられている。
さらに、22日の陳国務院商務相は記者会見において、「(国民生活に直結する)国内インフレに対しては、今回の地震が大きな影響を与えることはないだろう。ただし、四川省等の51,000余りの商店、サービス関係企業の被害は、直接損失が200億元(日本円換算:約3,200億円)を超えた(※注2)」ことを明らかにした。
最後に、四川大地震が中国経済全体に与える影響について、22日の中国紙は、中国エコノミストの予測を次のように報道した。「国内総生産(GDP)の成長率については、0.3から0.5ポイント下げるとの予測が大半であるが、中には、影響なし、逆に0.5ポイント上げると予測した者もいた。なお、今回の地震で大きな被害を受けた四川省北部は、中国全体の中で、GDPは1.9%、工業付加価値額は4.3%を占めるにすぎず、中国経済全体に与える影響は少ないとの見方で一致した。」
しかし、4,500万人もの被災者を生み出した建築物の被害総額や道路、電気、通信等インフラの直接的被害総額等については、現在、政府機関が調査しているが、国内の報道では、中国全体の経済損失規模を1,300億元から4,500億元(日本円換算:約2兆8百億円から約7兆2千億円)と見積っているものもある。また、被災者の生活再建や地域経済の再建等を含む復興対策には、膨大な資金が必要と考えられる。
温家宝首相は、21日、国務院常務会を開き、四川大地震の災害復興再建基金を設立し、今年度、700億元(日本円換算:約1兆1,200億円)を拠出する一方で、中央政府機関の今年度予算を一律5%削減することを決めた。
※注1 換算レートは1元=16円で計算
※注2 5月29日、中国国内メディアは、「国務院商務省の未確定統計によると、四川大地震で被災した現地の流通・サービス業の直接経済損失は、28日夜までに322億元(日本円換算:約5,200億円)となった。」と報道した。
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