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ホーム > 交流・まちづくり > 国際交流 > 地域外交課 > 海外駐在員報告 > 中国駐在員報告

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中国駐在員報告

2002年2月 駐在員レポート
駐在員 : 外山 敬三


長江デルタ地帯の経済発展の比較と特徴


―急速に発展する経済とその構造―


1 はじめに

中国は1978年の改革解放以来、年平均9%以上の経済成長を続け、2001年にはGDP9兆円、外貨準備高も2,000億ドルを突破し、経済規模ではイタリアを追い抜いて世界第7位に浮上した。また、一人当たりのGDP850ドルと低所得国からの脱却を果たし、アジアでは日本についで第2位の経済大国へと成長を遂げた。鉄鋼、科学繊維などの工業原料からオートバイ、そして洗濯機、冷蔵庫、エアコン、カラーテレビなどの家電製品にいたるまでの分野で世界第一位の生産国となり、またパソコン及びその周辺機器の生産においても、アメリカ、日本についで第3位と、「世界の工場」とまで言われるようになった。
中国はまた、積極的な外貨導入を背景にした輸出の急増によっても経済発展を遂げてきた。1980年代後半から玩具、靴・履物、繊維・アパレルなどの労働集約型製品の輸出を伸ばしてきたが、最近ではこれらに加えて家電、コンピューター、電子部品、オートバイなどの機械製品の部門でも輸出が拡大してきている。
今回のレポートでは、こうした中国経済の発展状況を、長江デルタ地帯に位置する上海市、江蘇省、浙江省にスポットを当て、発展段階を各種指標で比較しながら探ってみた。

2 長江デルタ地帯の経済発展の状況

長江デルタ地帯は古くから豊かな農業生産力をバックに商工業が発達した地域であり、資本や技術が長年に渡って蓄積されてきた。このため、鉄鋼、自動車などの有力国有企業や繊維製品、プラスチックといった郷鎮企業が数多く立地しているほか日常雑貨等地場産品の市場が早くから形作られていった地域である。

(1) 経済発展スタート時(1978年)の経済状況

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
全国
上海市
江蘇省
浙江省
21
人口(万人)
96,259
100
1,092
1.1
5,838
6.1
3,751
3.9
10,681
11.1
GDP(億元)
3,624
100
273
7.5
249
6.9
124
3.4
660
17.8
一人当りのGDP(元)
379
100
2,498
659
427
112
331
87
1,085
286

上の表は、改革解放がスタートした時点における3地域の経済発展指標の比較である。3地域の中で最も経済が発展していたのは上海、最も遅れていたのが浙江省である。一人当たりのGDP331元、全国平均の87%に過ぎない。

(2) 中間時点(1990年)の経済状況

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
全国
上海市
江蘇省
浙江省
21
人口(万人)
114,333
100
1,283
1.1
6,767
5.9
4,235
3.7
12,285
10.7
GDP(億元)
18,598
100
756
4.1
1,417
7.6
898
4.8
3,071
16.5
1978/1990
5.13
2.76
5.69
7.24
4.65
一人当りのGDP(元)
1,634
100
5,910
361
2,103
128
2,122
129
3,378
206

1978年から90年にかけては、浙江省の躍進振りがめざましい。反面、最も発展スピードが遅かったのは上海市である。GDPはこの間浙江省で7.2倍、江蘇省で5.7倍に伸びているが、上海市は2.8倍と低迷し、全国シェアも78年の7.5%から4.1%へと3.4ポイントも減少している。一人当たりのGDPで見てみると、浙江省は78年の全国レベルよりも低い状況から全国平均を29%上回り、この段階で江蘇省を追い抜いている。



(3) 2000年の経済状況

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
全国
上海市
江蘇省
浙江省
21
人口(万人)
126,583
100
1,311
1.0
7,438
5.9
4,467
3.5
13,216
10.4
GDP(億元)
89,404
100
4,551
5.1
8,585
9.6
6,030
6.7
19,166
21.4
1990/2000
4.80
6.01
6.06
6.71
6.24
一人当りのGDP(元)
7,078
100
34,600
488
11,700
165
13,400
189
19,900
281

1990年から2000年にかけては上海市が盛り返してきており、GDPは6倍となり全国シェアも1ポイント上昇に転じている。浙江省の経済発展は順調で、GDP6.7倍となり、一人当たりのGDP13,400元で江蘇省の11,700元を大きく引き離している。なお、12省だけで全国のGDP2割強のシェアを占めており、この地域の発展振りがいかにすごいかがわかる。

(4) 経済発展過程の比較
 
1978
1990
1978/1990
2000
1990/2000
1978/2000
全国
379
1634
4.31
7078
4.33
18.68
上海市
2498
5910
2.37
34600
5.85
13.85
江蘇省
427
2103
4.93
11700
5.56
27.4
浙江省
331
2122
6.41
13400
6.31
40.48
華東2省1市
1085
3378
3.11
19900
5.89
18.34

1978年から2000年にかけての経済発展過程を一人当たりのGDPで比較してみると以下の特徴が浮かびあがってくる。

まず第一点は、上海市の90年以前は経済発展が停滞傾向にあったのが90年代に入り上昇に転じていることである。そのことによって一時縮まった江蘇省との経済格差は2.8倍から3倍へと再び拡大し始めている。

第二点は、浙江省の経済発展が最も著しく、1978年と2000年を比較すると約20年で実に40倍強に伸びており、全国平均の2倍以上のスピードで発展していることがわかる。最近のデータによれば、2001年には所得の面で広東省を追い抜き、上海、北京についで全国第3位となった。



(5) 経済構造の比較

 
国有企業
集団企業
個体企業
外商企業
 
重工業
軽工業
 
大型
中型
小型
上海市
42.78%
5.26%
6.20%
45.76%
62.19%
37.81%
58.08%
11.09%
30.83%
江蘇省
34.83%
22.55%
9.76%
32.86%
56.78%
43.22%
31.15%
14.27%
54.58%
浙江省
30.01%
25.02%
16.39%
28.58%
37.76%
62.24%
24.98%
16.45%
58.57%

2000年の工業総生産に占める各指標の割合から、3地域における経済構造の比較を行ってみた。

上海市は外商投資企業の投資の割合が高く、産業は大型企業及び重工業が産業の主体である。

江蘇省は国有企業、私営企業(集団企業及び個体企業)外商投資企業の割合がほぼ同じである。

一方浙江省は国有企業の割合が3地域の中で一番低く、私営企業の割合が高い。外商投資企業の割合も低く外資は浙江省の発展においてさほど大きな役割は果たしていないことが伺える。産業も小規模な軽工業が主体である。

以上の点から、上海市の経済発展を上昇に導いてきた原動力として海外からの投資が浮かびあがってくる。1992年から浦東新区の開発が始まると、海外からの投資に弾みがつき、1990年には外商投資企業の総収入は111億ドルであったのが99年には2,991億ドルと27倍に増加している。2000年後半からは外商企業の投資が更に増加しており、特に2001年の1月から10月にかけては外資の直接投資は新規が2,040件、実行ベースの投資額は36億6千ドルとすでに2000年の実績を上回っている。

一方浙江省の急激な発展を支えてきたのは、農民及びその資本を主とした私営企業が生み出す軽工業産品であることがうかがえる。1980年に500万元であった軽工業産品の生産額は、90年には935百万元、98年には7057百万元と80年当時の56倍に増加している。

3 浙江省温州市の地場産品市場の形成状況

浙江省の経済発展は私営企業が営む軽工業が産業を支えて発展してきた状況をみてきたが、中でも特に早くから市場経済を実践し、郷鎮企業(市より小さい行政単位である郷、それよりさらに小さい鎮が経営する企業)発展のモデルとして全国的に有名な温州市において地場産品の市場が形成され地場産業を中心に発展してきた様子を紹介する。

(1) 温州市の経済発展の状況

浙江省の南部の沿海部に位置する温州は、古くから手工業の盛んな町として有名であったが、山が多く農耕地が少ない割には人口の多い貧しい地域であった。

改革解放前から余剰気味であった農民たちが副業として家庭内内職で軽工業品を作り、それを外地に行商して歩き、売れ筋商品の情報をつかんでは地元に持ち帰り、売れる商品を再び作って販売する。これを繰り返し、地域ごとに特産品が生み出され卸売市場が形成されていった。いわば改革解放前から市場経済が実践されてきた地域で、1980年代に入ってからは、農村家庭内工業をベースとした郷鎮企業発展の町として全国的に知られるようになった。

その後中国の経済成長に伴い消費市場が拡大していく中で、勤勉で手先が器用で機を見るに敏い温州商人たちは、市場の要求を敏感に察知し、品質向上、高級化、ブランド力の向上、経営の多角化といった経営努力と研究を重ねて市場での競争に打ち勝ってきた。

1999年の経済類型別企業数で見ると国有企業の占める割合が低く(企業数0.1%、生産額3.4%)家内工業等個体経営企業の割合が高い(企業数75.7%、生産額29.7%)のが特徴である。2000年のGDP825億元で、省全体の13.6%を占めるまでに発展しているが、経済発展の主役はあくまでも家庭内軽工業をベースとする民間企業で、これらの企業が生み出す低電圧機器、繊維、ボタン、ファスナー、ライター、髭剃り、照明器具、メガネ、革靴などの地場産品の生産が温州の工業を支えている。

(2) ライター(打火機)の生産状況

1980年代から温州はライターの生産基地として知られ、一番多い時期には市内に3,000社ほどの工場があったが、今では喫煙具製造業協会加盟の約260の企業が年間約3億個、約17億元のライターを生産している。温州のライターのシェアは国内の90%世界の80%を占め、また、生産されるライターの70%が70ヶ国に輸出されている。

80年代はプラスチック製の使い捨てライター(日本の100円ライター)が生産の中心であったが、90年代に入ってからは高級化・高品質化を図り、金属製のデザインも優れたライターを生産するようになって急激に輸出を伸ばし発展してきた。

現在藤橋区に工業園区(工業団地)を建設中で、市内に散らばっている工場を集約して、ライター生産基地としての機能の充実を図ることとしている。

市内車駅大道にある温州市欧麗斯輸出産品展覧センターには、市内80軒の工場がここにショールームを出展しており、バイヤーたちはまずここを訪問して品質やデザインを確認し、気に入ったライターがあれば直接工場を訪ねて商談を進めるとのことであった。

ショールームには色々なデザインの大小様々なライターが展示されており、卸値は135元である。ショールームで見せてもらったシンガポールのシンボルであるマーライオンをかたどったライター(5元)はシンガポールで80元で売られているとのことであった。

(3) 永嘉県橋頭鎮のボタン市場

改革開放以前の橋頭鎮は、産業が発達しておらず砂糖やレンガ、ラジオ等を細々と生産し、年間売り上げも40万元以下であった。耕地も一人当たり200uと狭く農業では生計を維持できなくて農民は外へ布団の綿の打ち直しや水がめの販売等に出かけていた。

1980年代初めになって、出稼ぎ先から数人の村人がボタンを持ち帰って販売したところうまくいき、それからはまねをする人が雪だるま式に増加し、周辺の県からもボタンを持ち込む人が現れ、1万を超すボタンの販売店が設立された。

84年に鎮政府はボタン専用市場を設立して産地化を図り、その後数人が生産を始めると、瞬く間に工場が増え、85年には各村でボタン製造の煙が盛んに出ているような状態となり、初めて工業生産額が農業生産額を追い抜いた。以後は毎年20%以上の成長を続けた。

全国から毎日大勢の人が買い付けに訪れ、作れば売れる状態が続き、順調に伸びてきたボタン産業であったが、96年頃から供給過剰に伴う陰りが出始めた。このため企業は輸出を増やすために品質管理を重視し、ISO900215軒の企業が取得し、また、7軒の企業が対外貿易権を取得している。ボタン市場は、今では直接買い付けに来る人は少なく、ほとんどがファックスやインターネットを通じた商売となっており、市場は閑散としていた。

2001年現在、1,213軒の企業で約2万人が働き、工業生産額は33.3億元その内輸出は3.3億元である。ボタンの全国シェアは85%に達している。

結びに

浙江省はWTO加盟に伴い基幹産業である紡績・アパレル関係で最大の利益を得るであろうといわれている。試算では5年間で2,800億元、GDP1.3%押し上げる効果があるといわれている。民営企業が主体の浙江省の経済発展は今後も続き、中国全体の市場経済を引っ張っていくことだろう。


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