中国駐在員報告
1999年9月 社会・時事 駐在員 : 今村理一郎
失業手当て、生活保護費の引上げ
中国政府は、デフレ傾向が深刻化しているため、景気刺激策の一環として企業からの一時帰休者、失業者への手当て、都市住民への生活保護にあたる最低生活保障の給付水準を30%引き上げることを決定した。同時に、退職者への年金給付額も引き上げられる。預金利子課税の導入などもこのほど決定しており、従来の金融政策、財政出動と併せ、中低所得層への所得の再配分を新たな景気対策の柱として打ち出した。
中国政府が公表した今年上半期の国有企業一時帰休者は、742万人である。また、各省、自治区、直轄市の所管とされている都市部の集団制企業(バスや地方銀行などの公有企業)の一時帰休者も240万人いる。実際には1,500万人くらいの失業者が沿海部の都市部にはいるといわれている。
この施策を実施するには、1,000億元(約1兆3,200億円)を超える新たな財政負担増となる。国家予算が1兆元(約13兆2,000億円)であるから10分の1が失業手当てに費やされる計算になるが、今後も失業者、一時帰休者の増加する勢いは衰えそうにない。
一連の景気刺激策は、都市住民の消費を下支えするカンフル剤的な意味を持つが、医療保険、年金制度改革に伴う将来の負担増への懸念が解消されないほか、人口の大半を占める約9億人の農民が対象から外れているため、効果は限られているとする指摘も既に出ている。
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