台湾駐在員報告
2015年9月 政治 駐在員 : 宮崎悌三
2015年は戦後70年である。戦争が行われていた当時の中国大陸では国共合作により中国国民党と中国共産党が日本との全面戦争を展開していた。しかし、終戦ののち中国大陸では再び内戦状態となり、戦いに破れた中国国民党は、戦時下、日本の統治下であった台湾に逃れた。
現在、政権与党である中国国民党は、中国大陸で日本と戦った“真相”を、台湾から世界に情報を発信する展覧会(「対日抗戦真相特展」)を、観光地で有名な中正紀念堂1階ホールで開催している(2016年6月まで)。
先日、この展覧会会場に足を運び、台湾の今日に至るまでの複雑な歴史の経過や現在置かれている状況に思いを巡らせた。もつれた歴史の糸がどこから来てどこにつながっていくのか、台湾に突き付けられている複雑な方程式の解(答え)は何だろうか。
戦中戦後において台湾を取巻く状況として複雑にしている出来事として、中国大陸で日本と戦ったのは中国国民党のほか中国共産党でもあること、日本に無条件降伏を求めたポツダム宣言は中華民国(当時は中国国民党一党独裁)が参加していること、国共内戦に破れた中国国民党は50年間も日本の統治下であった台湾に逃れてきたこと、日本との講和を結んだのは中華民国であったこと、大陸から渡ってきた中国国民党と台湾の民衆が衝突した傷跡が今も台湾の社会の奥底に影を落としていること、日本は中華民国と国交を断絶し中華人民共和国と国交を樹立したこと、世界の多くの国が中華民国と断交したこと、大陸から台湾に逃れて来た人々がすでに他界あるいは高齢化し生まれも育ちも台湾という人が社会の大部分を占めていること、台湾の経済等多くの分野で中国と切り離せない関係になっていることなど、考えればまだまだ様々な歴史的背景があり、現在台湾に起きている出来事は必ずと言って良いほど、これらの出来事と関係している。
馬総統は、今回の展覧会のほか抗日戦勝利の軍事パレードの実施や従軍慰安婦記念館の設置計画などを内外に向けて発信し、中国国民党の功績を強調しようとしている。これら一連の取組みについて、国際社会や2016年年頭の総統選挙で、どのような解が得られるのか注目したい。
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