東南アジア駐在員報告
2015年6月 社会・時事 駐在員 : 吉住理恵子
日本の料理教室ABCクッキングスタジオがシンガポールの高級繁華街オーチャード通りの高島屋にテナントとして出店した。同社は、既に、中国や韓国、台湾に店舗を展開しているが、東南アジアには初出店。今後さらにシンガポール国内やバンコクに店舗を展開する予定という。
日本では既に130店舗以上を展開するABCクッキングスタジオの特徴は、人通りの多い駅構内やショッピングセンターなどの中に、外から教室内を見ることができるガラス張りのオープンスタジオ(教室)を設置し、受講生と年齢が近い若いインストラクターが、自宅で手軽に作ることができるメニューをセンスのよい盛り付けとともに教えてくれる点だ。シンガポールでも、この方針は貫かれている。異なる点は、日本のスタジオのポップな雰囲気に比べて、立地場所や内装などで、より高級なイメージを打ち出していることだろうか。
金曜日の夜に、教室の体験コースに参加してみたが、350uの広さに20近く設置されている調理台は、ケーキ、パン、日本の家庭料理などを作る生徒のグループで、ほぼ埋まっていた。
シンガポール店立上げ時の講師約20人のうち、日本人は10人、3人が香港出身で、ローカル採用はまだ3分の1程度だという。最も手軽な和菓子コースが6回で約500シンガポールドル(約46,000円)と決して安いとは言えない価格設定だが、4月末のオープン以来、2,000人近くのメンバー登録があり、ローカルの30〜40代女性の申し込みが多いという。若い世代にはケーキ、主婦には日本式家庭料理のコースが人気だそうだ。
料理を教えるほか、日本の調理器具や、食器、食材の販売コーナーも設けられている。スクールで使用する食材は、JA全農と連携して、日本の野菜も仕入れて使う方針だとのことである。
シンガポールでは食事を外食で済ませたり、雇用しているメイドに任せたりする家庭が多く、日常的に料理をする人は少ないものの、最近は健康志向の高まりや、ホームパーティーで美しい料理を披露したいという需要もでてきている。こうした動きを背景に、ABCクッキングスタジオが掲げる「カジュアルに食を学ぶ」というコンセプトが、シンガポールをはじめとする東南アジアでどのように受け入れられるか興味深い。
静岡県の出身の創始者が、1985年に藤枝市で創業したABCクッキングスクールの東南アジア展開を見守るとともに、将来的に静岡県食材を使ったコラボレーションの可能性なども考えたい。
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