東南アジア駐在員報告
2003年3月 駐在員レポート 駐在員 : 岩城 徹雄
はじめに
近年、世界的に人や物の移動スピードが加速してきている状況の中で、東南アジア各国でも主要空港を利用しての物流が増えて来ている。本稿では、東南アジア各国の主要空港の概要と、旅客、貨物の統計を基に東南アジアにおける航空移動、物流の現状を掴み、空港が地域経済に果たす役割の可能性を考える。1 対象とした空港
東南アジアの主要空港として、次の空港を調査対象とした。また同地域と結びつきが深いオーストラリアも対象に加えた。各空港の運営主体、開設年、設備等の基本情報は末尾に一覧表でまとめた。
表1: 調査対象空港 | | |
国 | 調査対象空港 | 注 |
主要空港の年間国際便利用量(データ年) |
シンガポール | チャンギ | |
乗降客数約2,654万人(2001年)
貨物取扱量約150万トン |
マレーシア | クアラルンプール*、ペナン | *クアラルンプールは、Kuala Lumpur International Airport (KLIA) が開港しているが、マレーシアの統計では、KLIAとスバン空港の合計となっているため、本調査でも統計にはKLIA + スバンの数値としてある。 |
KLIA + スバン(2001年)
乗降客数約1,009万人
貨物取扱量約42万トン |
タイ | バンコク、チェンマイ* | *チェンマイは国際貨物、旅客が少なくほとんどがバンコク経由であるため、表1、2の集計からは除いている。 |
バンコク
乗降客数約2,139万人(2001年)
年間国際貨物取扱量約78万トン |
インドネシア* | ジャカルタ、スラバヤ、(バタム*) | *インドネシアについては国別の数字は取りまとめていない。
*バタムはシンガポールに近くインフラの整った工業団地があり、インドネシア本土とは若干異なる経済環境にある。全体の分析からは除くが、空港の概要だけは盛り込んでいる。 |
ジャカルタ(2000年)
乗降客数約464万人
貨物取扱量約18万トン |
フィリピン* | マニラ、セブ、(スービック*、クラーク*) | *フィリピンも貨物については国別あるいは空港別の統計をまとめていない。また、乗降客数については、フィリピンへの到着人数しか発表していない。 |
マニラ(2001年)
乗降客数約693万人
貨物取扱量約13万トン |
ベトナム | ホーチミン* | *ホーチミンについては、空港の概要は調査可能であるが、ベトナム政府は空港別の統計を出していないため、貨物や乗降客の国別分析では、ベトナム全体の数字を用いた。 |
国全体(2001年)
乗降客数約343万人
貨物取扱量約8万トン |
オーストラリア | シドニー、メルボルン | |
シドニー(2001年)
乗降客数約822万人
貨物取扱量約31万トン |
注:国により統計の取り方が異なる。本稿における貨物、乗降客の統計数値は、この表の( ) 内に掲げた年のものを最新データとして使用している。 |
2 概況
(1) 全体的特徴
キシンガポール・チャンギ空港が貨物取扱量、乗降客数双方で最も多い。貨物取扱量では、対象空港合計の40%を占め、乗降客数では30%を占めている。2番目にバンコク(貨物 21%、乗降客 24%)、KLIA+スバン(貨物11%、乗降客11%)となっている。
キ日本との交通量をみると、貨物量ではチャンギ空港が最も多く(45%)、続いてバンコク(28%)となっているが、乗降客数ではバンコクがトップで36%、続いてチャンギが29%となっている。
キ対日貨物取扱量はトップ3空港(チャンギ、バンコク、KLIA+スバン)で、全体の87%を占めている。乗降客数ではトップ3空港(バンコク、チャンギ、KLIA+スバン)で、73%を占めている。(ただし国別のデータがわからないインドネシア、フィリピンを除いた合計から算出した割合)
表2:主要空港の貨物取扱量、乗降客利用量 |
国 | 空港 | 国際貨物
(トン) | 国際貨物のうち日本向けの占める割合(%) | 国際乗降客数
(千人) | 乗客数のうち日本向けの占める割合(%) |
うち日本向け | うち日本向け |
シンガポール | チャンギ | 1,507,062
155,388 | 10.3 | 26,544
1,876 | 7.1 |
マレーシア | KLIA | 415,405
49,408 | 11.9 | 10,092
563 | 5.6 |
ペナン | 142,256
12,463 | 8.8 | 1,219
49 | 4.0 |
タイ | バンコク | 789,743
94,493 | 12.0 | 21,394
2,301 | 10.8 |
インドネシア | ジャカルタ | 179,370
NA | - | 4,639
NA | - |
スラバヤ | 12,005
NA | - | 514
NA | - |
デンパサール | 42,649
NA | - | 3,033
NA | - |
フィリピン | マニラ | 130,860
NA | - | 国合計6,931
国合計688 | 9.9 |
マクタン | 19,708
NA | - | NA | - |
ベトナム | 国合計 | 79,090
8,979 | 11.4 | 3,434
253 | 7.4 |
オーストラリア | シドニー | 305,696
18,974 | 6.2 | 8,224
695 | 8.5 |
メルボルン | 180,510
2,489 | 1.4 | 3,264
48 | 1.4 |
合計 | | 3,804,354
342,194 | 9.0 | 89,288
6,473 | 7.2 |
(2) 地域別にみた特徴
キ地域別にみた総取扱量(積込量と取卸量の合計)では、東南アジアの空港では北東アジア(日本、台湾、韓国、中国、香港)との間の取扱いが多く、次に東南アジア域内の取扱いが多くなっている。オーストラリアでは東南アジアとの間での割合が大きい。
キ地域別に見た総乗降客数(出発と到着の合計)では、タイを除き東南アジア域内での移動が大きな割合を占めている。
表3:主要空港の地域別に見た国際貨物取扱量(トン、%) |
国 | 空港 | 東南アジア | 北東アジア | オセアニア | 北米 | 欧州 | その他 | 合計 |
シンガポール | チャンギ | 318,827
21.2 | 520,329
34.5 | 174,658
11.6 | 88,942
5.9 | 272,554
18.1 | 131,752
8.7 | 1,507,062 |
マレーシア | KLIA | 78,520
18.9 | 155,485
37.4 | 41,002
9.9 | 3,602
0.9 | 96,160
23.1 | 40,636
9.8 | 415,405 |
ペナン | 46,905
33.0 | 80,007
56.2 | 365
0.3 | 0
0 | 795
0.6 | 14,184
10.0 | 142,256 |
タイ | バンコク | 162,645
20.6 | 362,923
46.0 | 24,874
3.1 | 10,330
1.3 | 158,066
20.0 | 70,905
9.0 | 789,743 |
ベトナム | | 20,259
25.6 | 44,197
55.9 | 1,430
1.8 | 0
0 | 13,024
16.5 | 180
0.2 | 79,090 |
オーストラリア | シドニー | 83,188
27.2 | 74,055
24.2 | 66,828
21.9 | 48,839
16.0 | 23,375
7.6 | 9,411
3.1 | 305,696 |
メルボルン | 77,261
42.8 | 27,956
15.5 | 36,717
20.3 | 16,075
8.9 | 12,543
6.9 | 9,958
5.5 | 180,510 |
合計 | | 787,605
23.0 | 1,264,952
37.0 | 345,874
10.1 | 167,788
4.9 | 576,517
16.9 | 277,026
8.1 | 3,419,762
100 |
表4:主要空港の地域別に見た国際乗降客数(千人、%) |
国 | 空港 | 東南アジア | 北東アジア | オセアニア | 北米 | 欧州 | その他 | 合計 |
シンガポール | チャンギ | 10,343
39.0 | 6,359
24.0 | 3,659
13.8 | 608
2.3 | 3,174
12.0 | 2,401
9.0 | 26,544 |
マレーシア | KLIA | 4,265
42.3 | 2,189
21.7 | 1,059
10.5 | 139
1.4 | 1,284
12.7 | 1,156
11.5 | 10,092 |
ペナン | 1,032
84.7 | 175
14.4 | 0
0 | 0
0 | 0
0 | 12
1.0 | 1,219 |
タイ | バンコク | 5,317
24.9 | 8,945
41.8 | 976
4.6 | 176
0.8 | 3,925
18.3 | 2,055
9.6 | 21,394 |
ベトナム | | 1,281
37.3 | 1,743
50.8 | 74
2.2 | 0
0 | 330
9.6 | 6
0.2 | 3,434 |
オーストラリア | シドニー | 2,092
25.4 | 1,916
23.3 | 1,969
23.9 | 1,116
13.6 | 643
7.8 | 488
5.9 | 8,224 |
メルボルン | 1,260
38.6 | 310
9.5 | 884
27.1 | 283
8.7 | 321
9.8 | 206
6.3 | 3,264 |
合計 | | 25,590
34.5 | 21,637
29.2 | 8,621
11.6 | 2,322
3.1 | 9,677
13.0 | 6,324
8.5 | 74,171
100 |
(3) 日本との係わりにおける特徴
キ日本の各主要空港別に特徴をみると、合計では、貨物・乗降客数とも成田空港が50%以上を占め、大阪は全体の3分の1程度となっている。
キシンガポール、バンコク、メルボルン、シドニーは、東京が多い。特に、メルボルンは東京以外に直行便がないため、東京が圧倒的に多い。
キペナン空港との国際貨物については、大阪が圧倒的に多く、全体の91.1%を占めている。KLIA+スバンについても、ペナンほどではないが、他の空港に比べて大阪の占める割合が多い。
ベトナムも、東京より大阪との交通量が多く、貨物・旅客とも大阪は東京の2倍に近い。
表5:主要空港と日本の貨物取扱量(トン、%) |
国 | 空港 | 東京 | 大阪 | 名古屋 | 福岡 | その他 | 合計 |
シンガポール | チャンギ | 99,924
64.3 | 42,090
27.1 | 7,435
4.8 | 5,404
3.5 | 535
0.3 | 155,388 |
マレーシア | KLIA | 21,999
44.5 | 23,302
47.2 | 2,470
5.0 | 1,637
3.3 | 0
0 | 49,408 |
ペナン | 551
4.4 | 11,352
91.1 | 560
4.5 | 0
0 | 0
0 | 12,463 |
タイ | バンコク | 58,290
61.7 | 29,405
31.1 | 3,892
4.1 | 2,906
3.1 | 0
0 | 94,493 |
ベトナム | 国合計 | 3,250
36.2 | 5,729
63.8 | 0
0 | 0
0 | 0
0 | 8,979 |
オーストラリア | シドニー | 10,990
57.9 | 6,043
31.8 | 1,941
10.2 | 0
0 | 0
0 | 18,974 |
メルボルン | 2,025
81.4 | 1
0 | 463
18.6 | 0
0 | 0
0 | 2.489 |
合計 | | 197,030
57.6 | 117,922
34.5 | 16,761
4.9 | 9,947
2.9 | 535
0.2 | 342,194
100 |
表6:主要空港と日本の乗降客利用量(千人、%) |
国 | 空港 | 東京 | 大阪 | 名古屋 | 福岡 | その他 | 合計 |
シンガポール | チャンギ | 1,137
60.6 | 431
23.0 | * | * | 308
16.4 | 1,876 |
マレーシア | KLIA | 303
53.8 | 184
32.7 | 45
8.0 | 31
5.5 | - | 563 |
ペナン | 19
38.8 | 15
30.6 | 15
30.6 | - | - | 49 |
タイ | バンコク | 1,386
60.2 | 691
30.0 | 140
6.1 | 84
3.7 | - | 2,301 |
ベトナム | 国合計 | 94
37.2 | 159
62.8 | - | - | - | 253 |
オーストラリア | シドニー | 388
55.8 | 239
34.4 | 66
9.5 | 2
0.3 | - | 695 |
メルボルン | 47
97.9 | 0
0.0 | 1
2.1 | 0
0.0 | - | 48 |
合計 | | 3,374
58.3 | 1,719
29.7 | 267
4.6 | 117
2.0 | 308
5.3 | 5,785
100 |
注* チャンギ空港の名古屋、福岡はその他に計上されている。 |
3 各空港の国際貨物・国際乗降客取扱量、貨物内訳の詳細
(1) シンガポール・チャンギ空港
ア 国・地域別貨物取扱量
キチャンギ空港の2001年の国際貨物取扱量は、150万7,062トンで、積込量が72万6,424トン、取卸量が78万638トンでほぼ同レベルとなっている。
キ国別に見ると、日本が最も多く、全体の10.3%を占めている。続いてオーストラリア(10.0%)、米国(5.8%)となっている。
キ日本の空港別にみると、東京が多く、64.3%を占めている。
イ 国・地域別乗降客数
キチャンギ空港の2001年の国際乗降客数は、2,654万4千人で、到着(1,333万4千人)、出発(1,321万人)とほぼ同レベルとなっている。
キ国別で見ると、オーストラリアが最も多く12%。続いてインドネシア、マレーシアなど の近隣諸国が多く、それぞれ、11.3%、11.0%となっている。日本は187万6千人で、7.1%である。
キ日本の空港に別みると、東京が多く、60.6%を占めている。
ウ 航空貨物内訳
キ航空貨物の内訳は、Civil Aviation Authority of Singapore の月間統計に発表されている。しかし、 全体の38%を「混載貨物」が占めるため、この「 混載貨物」の内訳がわからないと、正確な分析は困難である。
キ混載貨物以外で、最も多いのは、野菜・果物(79千トン)、魚介類(77千トン)肉類(44千トン) と食品が多い。次いで多いのは、「その他非電気 機器」(48千トン)、衣類(14千トン)、科学機器(13千トン)、電気機器(13千トン)車両・車両部品(13千トン)である。
キなお、重量ベースのデータであるため、食品が多くなっている。金額ベースでは、シンガポールの貿易構造からいって、電子部品などが最も多いと想定されるが、金額ベースの航空貨物の内訳は発表されていない。また、上記の混載貨物も、コンテナ1本分に満たない貨物で、小ロットの電子電気部品などが多いと考えられる。
チャンギ空港第2ターミナル
(2) マレーシア
(2)−1 KLIA+スバン空港
ア 国・地域別貨物取扱量
キマレーシアのKLIA&スバン空港の2001年の国際貨物取扱量は、積込が22万1,616トン、取卸が19万3,789トンで、合計41万5,405トンとなっている。
キ国別で見ると、日本が最も多く、全体の11.9%を占めている。続いてオーストラリア(9.9%)、シンガポール(8.1%)となっている。
キ日本の空港に別みると、東京(44.5%)、大阪(47.2%)と大阪が若干多くなっている。
イ 国・地域別乗降客数
キマレーシアのKLIA&スバン空港の2001年の国際乗降客数は、1,009万2千人で、到着(496万2千人)、出発(513万人)とほぼ同レベルとなっている。
キ国別で見ると、シンガポールが最も多く21.2%。続いてオーストラリア(9.3%)タイ(8.4%)となっている。日本は56万3千人で5.6%
キ日本の空港に別みると、東京が多く、54.0%を占めている。
(2)−2 ペナン空港
ア 国・地域別貨物取扱量
キペナン空港の国際貨物取扱量は、14万2,256トンで、KLIA+スバン空港の3分の1程度である。他の東南アジア諸国では、首都に位置する主要空港に比べ、地方空港の貨物取扱量はきわめて少ないが、ペナンは例外的である。
キペナン州はエレクトロニクス産業という産業集積地をもつことが、その理由と考えられる。
キ国別に見るとペナンでの取扱貨物は、台湾が圧倒的に多く、その内訳は、積込1万1,850トンに対し、取卸が2万6,707トンと2.3倍程度ある。
キ日本は台湾の3分の1の1万2,463トンであるが、その90%は大阪となっている。東京の取扱が大阪より少ないのは、ペナンとベトナムのみである。
イ 国・地域別乗降客数
キペナンの国際乗降客数は122万人で、KLIA+スバン(1,000万人強)の12%にすぎない。貨物に比して、乗降客の割合が少なくなっている。
キ国別にみると、シンガポール、インドネシア、タイの近隣諸国で85%を占める。観光地でもあるペナンに、近隣諸国からまたは近隣空港を経由して訪れるものと推察される。
キ日本は4%に過ぎす、また、貨物と異なり、大阪と東京はほぼ同数である。
ウ 航空貨物内訳
航空貨物の内訳の統計は発表されていない。しかし、ペナンは「東南アジアのシリコンアイランド」といわれるように、半導体などの
エレクトロニクス産業が盛んである。インテル、モトローラ、アジレント、デル、AMD、シーゲート、アイオメガ、といった大手エレクトロニクス企業が ペナンで操業している。
このため、ペナンの航空貨物の大部分はエレクトロニクス関連であると推察される。
ペナン島の工業団地(ペナン開発公社のホームページから)
(3) タイ
(3)−1 バンコク・ドンムアン空港
ア 国・地域別貨物取扱量
キバンコク・ドンムアン空港の国際貨物取扱量は、積込量が約49万トン、取卸量が約30万トンと(2001年)、積込量が取卸量の1.6倍となっている。これは2001年に限ったことではなく、1999年、2000年も同様の割合となっている。
キ国別では、香港がトップで、取扱量は10万9千トン超。そのうち3分の2は積込である。タイで生産された製品が、香港を通じて中国に流れているとも考えられる。
キ日本は、香港に次いで多く、9万4,493トン。日本向けの取扱量も、積込が取卸の2倍以上になっている。また、日本国内では東京が多く、61.7%となっている。
キタイの航空貨物の製品別内訳の統計は発表されていないため、どのような製品が輸出入されているかは不明である。
イ 国・地域別乗降客数
キ国際乗降客数は、到着が1,067万6千人、出発が1,071万8千人で、ほぼ同等である。
キ国別では、香港、日本、シンガポールが多い。
キ日本国内では、東京が多く、60.3%を占めている。
(3)−2 チェンマイ空港
ア 国・地域別貨物取扱量
キチェンマイ空港は、貨物取扱総量2万3,786トンのうち、98.5%の2万3,4281トンが国内貨物である。そのうち、バンコクは2万1,819トンである。バンコクで積み替えされているものと思われる。
イ 国・地域別乗降客数
キ乗降客数についても同様、全体218万8千人の95%強(209万1千人)が国内線である。バンコクは全体の75%を占める、164万5千人である。
(4) インドネシア・ジャカルタ・スカルノハッタ空港 及び スラバヤ・ジュアンダ空港
キインドネシアは統計が整っておらず、最新のデータは入手できなかった。
キまた、インドネシアでは、貨物取扱量、乗降客数とも、国・地域別の統計は作成していない。
ア 貨物取扱量
キインドネシアの貨物取扱量は、2000年ベースで53万7,371トンとなっている。そのうち約55%が国内貨物、45%が国際貨物となっている。
キ空港別にみると、ジャカルタのスカルノハッタ空港の2000年の取扱量は27万7,952トンで全体の約半分を占める。また、そのうち国際貨物は17万9,370トンで、インドネシア全体の国際貨物の74%を占める。
キスラバヤは、国内貨物では、ジャカルタ・スカルノハッタに次いで多いが、貨物の合計では、デンパサールの方が多い。これは、デンパサールの国際貨物、とくに積載量が多いためである。デンパサールから、軽工業品などが海外へ輸出されているものと推察される。また、スラバヤの場合、ジャカルタへの貨物航空便数もすくないことから、スラバヤ近隣で生産される輸出品は、陸路ジャカルタへ輸送され、ジャカルタから輸出されているとも考えられる。
イ 乗降客数
キ2000年のインドネシアの空港の国際、国内合わせた乗降客数(乗換えを含む)は、2,797万7千人で、国内がその70%弱を占める。
キ空港別にみると、ジャカルタのスカルノハッタ空港が1,032万人で全体の36.9%、次いでデンパサール(579万1千人、20.7%)となっている。貨物に比べてデンパサールの比重が大きいが、これはバリ島への観光客によるものと推察される。
キまた、デンパサールでは乗降客の半数以上が国際旅客であるのに比べ、スラバヤは、80%以上が国内旅客となっている。
ウ インドネシアの航空貨物の内訳の統計は発表されていないため、輸出入の製品は不明である。
(5) フィリピン・マニラ・ニノイアキノ空港、セブ・マクタン空港、スービック空港、クラーク空港
キフィリピンでも貨物取扱量、乗降客数の、国・地域別統計は作成していない。
キまた、乗降客数については、マニラ空港は旅客総数を発表しているが、他の空港では発表していない。そのため、フィリピンへの空路による訪問者数から分析する。
ア 貨物取扱量
キ2001年の国際貨物取扱量は、マニラが13万860トン、セブが1万9,708トンとなっている。両空港とも、前年比大幅減で、マニラは30%減、セブは15.5%減である。
キ一方、スービック空港は、FedEx社がアジア太平洋オペレーションの拠点をおいているが、1998年にアジア通貨危機の影響で貨物量が激減した以外は順調に貨物取扱量を伸ばしてきたが、2001年は前年比14.3%減となった。
キクラーク空港の取扱量は、現在は少ないが、国際宅配便のUPS社の地域拠点が2002年4月に操業したため、今後は徐々に増えていくものと予想される。
キクラーク、スービック双方に共通している点は、積載貨物が圧倒的に多い点である。
イ 乗降客数
キ国際乗降客については、Manila International Airport Authorityが、マニラ空港の乗降客の総数を発表しているのみで、他の空港のデータや国・地域別のデータはない。
キ統計局が発表している訪問者数のデータによると、全訪問者の22%が米国次いで日本(20.0%)となっている。
ウ フィリピンの航空貨物の内訳の統計は発表されていない。
(6) ベトナム
ア 国・地域別貨物取扱量
キベトナムは、ホーチミンのタンソニアット 国際空港、ハノイのノイバイ 国際空港の貨物取扱総量は発表しているが、それぞれの空港の国・地域別データはない。従って、国・地域別の分析は、ベトナムの全空港の国際貨物取扱量のデータを用いる。
キ2001年のベトナム全空港の貨物取扱量は7万9,090トンで、タンソニアット国際空港(6万6,140トン)とノイバイ 国際空港(1万2,088トン)で全体の98.9%を占める。
キベトナムの航空貨物の取扱を国別でみると、台湾が最も多く、全体の18.4%となっている。韓国、香港、シンガポールが続き、日本は5番目の11.4%である。
キ日本向けは、大阪、東京の2ヶ所で、大阪が68.8%と多くなっている。
イ 国・地域別乗降客数
キ国際乗降客数も、貨物取扱量と同様、空港ごとのデータは発表されていない。従って、ベトナムの全空港の乗降客人数で分析する。
キ乗降客数を国別でみると、貨物と同様、台湾がトップで21.7%を占める。続いて、シンガポール、香港、日本となっている。
キ東京、大阪の比率は貨物とほぼ同等で、大阪が62.8%を占めている。
ウ ベトナムの航空貨物の内訳の統計は発表されていない。
(7) オーストラリア
(7)−1 シドニー空港
ア 国・地域別貨物取扱量
キシドニー空港の2001年の国際貨物取扱量は、30万5,696トンで、オーストラリア全体の47.8%を占める。
キ国別に見ると、最も多いのは隣国のニュージーランドで18.9%、シンガポール、米国が続き、日本は4番目の6.2%である。
キ日本を地域別にみると、東京が57.9%を占め、大阪は31.8%、名古屋10.2%となっている。
イ 国・地域別乗降客数
キシドニー空港の2001年の国際乗降客数は822万4千人で、オーストラリア全体の49%を占める。
キ国別に見ると、最も多いのは隣国のニュージーランドで20.3%、米国、シンガポールポールが続き、日本は4番目の8.5%である。
キ日本を地域別にみると、東京が55.8%を占め、大阪は34.4%、名古屋9.5%となっている。
(7)−2 メルボルン空港
ア 国・地域別貨物取扱量
キメルボルン空港の2001年の国際貨物取扱量は、18万510トンで、オーストラリア全体の28.2%を占める。
キ国別に見ると、最も多いのはシンガポールで26.5%、ニュージーランド、香港、続く。日本の占める割合は少なく1.4%のみである。
キ日本を地域別にみると、東京が81.4%を占めている。
イ 国・地域別乗降客数
キメルボルン空港の2001年の国際乗降客数は326万4千人で、オーストラリア全体の19.7%を占める。
キ国別に見ると、最も多いのは隣国のニュージーランドで24.5%で、シンガポール、米国が続く。日本は少なく全体の1.4%のみである。
キ日本を地域別にみると、東京が98%を占める。
ウ オーストラリアでも、航空貨物の内訳の統計は発表されていないため、輸出入の製品は不明である。
4 産業集積地とのかかわり
東南アジアでは、国際貨物取扱量、国際乗降客数共、首都の空港が占める割合が多い。空港が1ヶ所のシンガポール、国土が広く、地域ごとにハブ都市があるオーストラリアを除き、第2都市の空港の規模は大きくはない。唯一、マレーシアのペナンの貨物取扱量だけは、首都のKLIA + スバンの約3分の1にのぼり、フィリピンのマニラよりも多い取扱量となっている。これは、ペナンが、エレクトロニクス関連産業の集積地を抱えているためである。
| 国際貨物取扱量(トン) | 国際乗降客数(千人) |
| 首都 | 地方 | 地方 | 首都 | 地方 | 地方 |
マレーシア
比率 | KLIA
415,405
1 | ペナン
142,256
0.342 | − | KLIA
10,092
1 | ペナン
1,219
0.121 | − |
タイ
比率 | バンコク
789,743
1 | チェンマイ
358
0.000 | − | バンコク
21,394
1 | チェンマイ 97
0.005 | − |
フィリピン
比率 | マニラ
130,890
1 | セブ
19.708
0.151 | − | マニラ
−
− | セブ
−
− | − |
インドネシア
比率 | ジャカルタ
277,952
1 | デンパサール
59,762
0.215 | スラバヤ
33,193
0.119 | ジャカルタ
4,639
1 | デンパサール
3,033
0.654 | スラバヤ
514
0.111 |
(1) ペナン
ペナンは1972年に輸出加工区に指定されて以降、ナショナルセミコンダクター、HP, モトローラ、インテルといった米国系や、日立製作所などの日系の半導体メーカーが進出し、1980年頃にはアジアでも有数の半導体の生産・輸出拠点となった。さらに1980年代後半には、日系、台湾系の電気・電子関連企業の進出が急増し、1990年代には、半導体生産の集積地として産業が発展した。近年、企業の新規進出は鈍化しているものの、デル・コンピューターやEMS大手のソレクトロンなど、大規模工場の進出もある。
こうした中、これらの半導体メーカーやエレクトロニクスメーカーを顧客とする、大手フォワーダーが進出し、空港近くに大規模な倉庫を設立して、「アジアのシリコンバレー」の物流を支えている。メーカーの中でも物流センターを設置する企業があり、インテルは1999年にIntegrated Regional Logistics Centreを開設している。
近隣のケダ州では、クリム工業団地の開発と入居がすすんでおり、今後ペナン空港を使用する産業のベースは、さらに拡大するものと予想される。
(2) スービック、クラーク
一方、フィリピンのスービック国際空港、クラーク国際空港も、今後の発展が注目される。いずれの空港も元米軍基地施設を利用して、政府系開発公社が主体となり、地域活性化に結び付けようといている。空港周辺に工業団地や居住地区を整備し、外資系企業も誘致して産業集積を図っている。スービック空港では、FedEx社がアジア地域の集配拠点を設け、クライアント向けに物流サービスを展開している。深夜、東南アジア各地からの荷物を集め、行先別に積み替えてその晩の内に出発するシステムで貨物取扱量は増え、セブ島のマクタン空港と同規模になった。さらに、クラークには、昨年UPS社が地域拠点を開設した。FTZ(自由貿易地域)内という土地がら、貨物取扱量は、フィリピンへの投資が増えていけば、取扱量も大幅に伸びていくと予想される。
5 終わりに
東南アジア各国においては、2003年から本格化したAFTA(ASEAN自由貿易地域:加盟国で生産された製品の輸入は、原則的に関税を0〜5%にする取り決め)により、域内の経済的な結びつきが強まっており、物の流れも活発になってきている。また、日本とシンガポールの間で「新時代経済連携協定」が2002年11月から実施され、タイ、マレーシア、フィリピンとも自由貿易協定の研究が進んでいる。さらに「ASEANと日本」あるいは「ASEANプラス3(日中韓)」の自由貿易地域の構想も提案されており、東南アジアとの交流拡大は、我が国全体のあらゆる面での活性化につながるものと考えられる。
東南アジアでは、空港を利用した物流について、アジア地域内での行き来が現時点でも6割を占めるなど、地域経済の発展に欠かせない要因となってきている。各国においては、首都圏空港の国内の利用に占める割合が非常に大きいが、マレーシア・ペナンやフィリピンのスービックやクラークの例にみられるように、空港や工業団地などの物流・生産インフラの整備と活用は、その地方の特色ある産業集積の発展にとって重要な要素である。
ものづくり県の本県においても、アジア各国との結びつきを深め、人と物の流れを一層拡大することにより産業の発展を図ることは、大きな意義を持つことである。東京、大阪に集中する海外からの人と物の流れを、直接、地方の生産地、消費地、観光地に送る、また地方から直接海外へ送るためのインフラ整備は、今後とも高い優先度をもって進められるべきものと思う。
調査・資料収集協力;ジャイク・コンサルティング・アジア社
統計数値出所等 | |
国 | 会社・団体、ウェブサイト |
シンガポール | ・Civil Aviation Authority of Singapore (CAAS); www.caas.gov.sg/caas/index.jsp
・Monthly Air transport Statistics Publication
・ Changi Airport; www.changi.airport.com.sg/changi/index.jsp |
マレーシア | ・Malaysia Statistical Board; www.stats.gov.my
・KL International Airport; www.klia.com.my/
・Malaysia Aiports Holdings Berhad |
タイ | ・ Airport of Thailand Public CO., Ltd; www.airportthai.co.th www.acpthailand.com www.airportthai.co.th |
インドネシア | ・ Soekarno Hatta Airport; www.angkasapura2.co.id/airport/soekarnohatta/index.html
・Surabaya Juanda Airport; www.angkasapural.co.id
・Batam Airport; www.batam.go.id/english/facilities/airport.html
・Statistical Board (BPS Indonesia); www.bps.go.id
・ Tourism Board of Indonesia; www.budpar.go.id |
フィリピン | ・Manila International Airport Authority; www.miaa.com.ph/mia/main.htm
・Clark International Airport; www.bcda.gov.ph/contents/ciac.html
・Subic Bay; www.sbma.com/buss/accscnt1.html
・National Statistical Coodination Board; www.nscb.gov.ph
・(Department of Transportation and Communications); www.dotcmain.gov.ph
・ Air Transportation Office; www.ato.gov.ph |
ベトナム | ・Civil Aviation Authority of Vietnam (CAAV) |
オーストラリア | ・ Department of Transport and Regional Services(Airport Statistics, International Airlines)
www.dotras.gov.au
・Bureau of Transport and Regional Economics; www.btre.gov.au
・ Australia Bureau of Statistics; www.abs.gov.au |
その他 | ・www.azworldairports.com |
参考資料
・各空港の基礎情報
・域内空港間の就航便数
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