台湾駐在員報告
2016年4月 行政 駐在員 : 宮崎悌三
2016年は3年に一度開催される「世界お茶まつり」の開催年である。3年前に開催されたときは、台湾からも多くの行政関係者やお茶の業者などが参加した。台湾のお茶と言えば、烏龍茶が代表的であるが、産地によって御当地自慢の烏龍茶が存在している。南部嘉義県の山岳地域である阿里山付近で産出する阿里山高山烏龍茶、台湾中部山岳地域の凍頂・竹山などで産出する凍頂烏龍茶、その付近の名間で産出する清香烏龍茶、台湾北部の苗栗・新竹・新北市で産出する白毫烏龍茶などが有名である。
それらの産地のうち、静岡県にも度々足を運び、お茶の文化交流を積極的に静岡県にも呼びかけてきた嘉義(かぎ)県において、同県にとっては初となる「世界お茶博覧会」が3月下旬に開催された。
今回が初回となる嘉義県の世界お茶博覧会には、静岡県の川勝知事を始め、日本や韓国の茶関連の3団体も参加し、台湾の方々に日本や韓国のお茶の文化に触れていただいたほか、今年静岡県で開催されるお茶まつりのPRを行った。
嘉義県は、北回帰線(北緯23.5度)が東西に横切る緯度に位置しており、亜熱帯から熱帯の境界にあると言えるが、県東部は高い山々が連なっていて、代表的な阿里山などの山岳地帯は標高が3,000mほどもある。片や県西部は台湾海峡に面しているため、高度差を利用して様々な農作物が栽培されている。中でも有名なのは、阿里山高山烏龍茶で、台湾に来られたことがある方なら必ずどこかでその爽やかで深みのある香りと味を楽しまれたのではないかと思う。
台湾にはかつて道行く人にお茶を無料で振舞う「奉茶」(ほうちゃ。注:ほかに嫁入り先の両親等にお茶を奉げるものも同様に奉茶と呼ばれるが、ここでは街角での振舞い茶を指す。)と呼ばれる光景が街のそこここで見られた。お茶を淹れて振舞う行為を介して人と人の出会いや結びつきに彩を添えるのは、台湾の奉茶においても日本の茶道においても共通したものである。しかし、台湾において、あるとき振舞われるお茶に悪意で毒物が混入された事件が起きてから、街角からその光景がめっきり姿を消してしまった。人と人との信頼関係がない環境では、お茶も安心して楽しめなくなってしまったのだろう。
静岡県と嘉義県のお茶の文化を通じた交流は、日本と台湾の信頼関係を醸成し、心の交流を取り結んでくれるものとなることを心から願って止まない。
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