東南アジア駐在員報告
2005年11月 経済 駐在員 : 橋本勝弘
シンガポール 製造業を強化 2018年までの拡大計画を発表
シンガポールの産業構造と言えば、第一次産業(農林水産業)の割合が極端に低く(1%以下)、第三次産業の割合が圧倒的に高い(約70%)というものになっている。
最近、シンガポール経済開発庁(EDB)が持続的な経済成長に向けて、第二次産業の主要分野である製造業について注目すべき政策を発表した。
それは、2004年現在で約1,898億シンガポールドル(約12兆9,064億円)となっている製造業生産高を、2018年までに2004年比で58%増の3,000億シンガポールドル(約20兆4千億円)に拡大し、製造業分野だけで毎年1万5千人の雇用を創出するというものである。
EDBのテオ長官は、「製造業を経済の重要な柱の一つと位置付け、シンガポール製が信頼の証だと国際的に認知されるよう、全力を尽くす」と強調した。
EDBは目標達成のため、@研究開発(R&D)費を今後3年間で国内総生産(GDP)の3%に引き上げる。A市場アクセスを容易にするため自由貿易協定(FTA)の締結を推進する。B電子、化学、バイオ医療など既存の産業を拡大する。C製造業関連の投資誘致を中国、インド、中東に広げる。の4つの戦略を挙げた。
これまで、製造業が実質GDPに占める割合は、下記の表のとおり、ほぼ25%と安定しており、シンガポール政府が1998年に示した新たな産業政策の基本方針「インダストリー21(*注1)」に沿った数値となっている。
なお、製造業でシンガポールが世界シェア1位の業界は、@油田掘削装置(リグ)(シェア70%)、A浮体式石油生産・貯蔵・積み出しユニット(FPSO*注2)(同70%)、Bハードディスク駆動装置(HDD)(同30%)、C販売時点情報管理(POS)機器(同25%)、D船舶修理(同20%)などがある。
(単位:百万シンガポールドル)
| 2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 | 2004年 | 2018年
(計画) |
製造業生産高 | 163,721 | 138,323 | 147,296 | 158,697 | 189,789 | 300,000 |
付加価値 | 38,951 | 31,923 | 36,360 | 37,058 | 47,218 | 80,000 |
雇用人口(人) | 344,610 | 345,141 | 357,247 | 351,109 | 353,144 | 約56万 |
GDPに占める製造業の割合 | 25.1% | 22.6% | 23.6% | 23.9% | 25.2% | − |
* 注1・・・「インダストリー21」とは、1998年6月に発表された新たな産業政策の基本方針で、@技術・知識集約型産業の基盤強化、A世界水準の地場企業の育成、B技術革新の追及、C国際ビジネスハブの推進、D地域統括本部の誘致、E人的資源開発・集積 の6分野に焦点をあてることで、シンガポールを技術・知的集約度の高い企業活動の集積地とするとともに、地域統括機能を強化することを目標としている。その中で、2010年までにGDPに占める製造業の割合25%、製造業における新規雇用創出1万5千人を上げている。
* 注2・・・FPSOとは、Floating Production, Storage and Offloadingの略で、洋上で石油・ガスを生産し、生産した石油・ガスを設備内のタンクに貯蔵して、直接輸送タンカーへの積出を行う設備のこと。
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