台湾駐在員報告
2017年9月 政治 駐在員 : 内藤晴仁
8月15日夕方、職場の電気が予告なく消えた。パソコンやクーラーも止まり、猛暑の台北では仕事に支障を来たす事態となった。大通りの信号も消えており、すぐに台北市内全体で停電が起きていることを予測させた。結局、その日は停電復旧の見通しが立たず、13階の事務所から階段を使って帰宅した。
台湾電力公司(電力会社)へ燃料を供給する台湾中油公司の操作ミスが主原因で生じた今回の大規模停電は、台湾全体の約半数に当たる約668万世帯の生活や工場等の操業に影響を及ぼした。林行政院長は、停電の全責任は台湾中油公司にあるとしたが、両国営企業を所管する李経済部長が辞任を申し出たり、蔡総統も国民に対し謝罪を行う等、政治問題としてクローズアップされている。
蔡政権は2025年までの脱原発を目指し、エネルギー供給における原発の割合(2016年末で全体の約12%)を減らし、風力や太陽光等再生可能エネルギーの割合(2016年末で全体の約10%)を増やす政策を推進している。他方、電力需給ピーク時における余剰電力が乏しいことは従来より産業界が指摘・不安視しているところであり、蔡政権の急速なエネルギー政策の変更は非現実的との意見が根強くある。また、大規模停電発生後には、余剰電力があれば今回の停電被害を最小限に抑えられたと、現行政策の見直しを求める意見も出始めている。林行政院長も大規模停電後のインタビューで「条件が整えば最終手段として停止中の原発の再稼動もありうる」と発言しており、大規模停電は今後の台湾のエネルギー政策に一定の影響を及ぼす可能性を含んでいる。
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