台湾駐在員報告
2015年10月 社会・時事
駐在員 : 宮崎悌三
ウーロン茶の産地として有名な阿里山。阿里山は、台湾南部の嘉義県の山間部に広がる幾つかの峰々を指している。そこで生産されるウーロン茶は、静岡県で3年に一度開催される「世界お茶まつり」にも出展していただいていて本県にも馴染み深い。阿里山にはウーロン茶のほか、日本にも非常に縁のあるものがあるのだが御存知だろうか。
それは、阿里山の豊富な森林資源である。台湾が日本に統治されていた時代、樹齢千年を超えるタイワンベニヒノキの巨木が存在していた。東京都内にある明治神宮や靖国神社の大鳥居は、阿里山の山奥に聳えていた巨木を切り出し、日本に運び据え付けたものである。
日本統治時代や戦後に亘り、それら豊富な森林資源の利用を可能としたのが、阿里山森林鉄路である。建設は明治39年から始まり、複数の路線を少しずつ完成させ、大正3年に全線が開通した。全長72.5キロメートル、標高差2,250メートル。路線は、急峻な山間部を走るため、ループ線やスイッチバックなど、平地にはない形式が用いられている。
阿里山に広がる豊富な森林資源を保護する政策が取られて以降、材木を運搬していた鉄道は観光などの用途が中心となり、有名な観光地として親しまれてきた。しかし、2009年の台風被害や2011年の倒木による脱線事故で死亡者が出て以来、一部の区間に限って運行する体制を続けていたが、2015年12月25日に晴れて6年ぶりとなる全線開通を予定していた。
これまで運行していたのは、始発となる嘉義駅から奮起湖駅(45.8キロメートル)と神木駅から終点となる阿里山駅(1.7キロメートル)であった。不通となっていた奮起湖駅から神木駅(23.9キロメートル)の復旧工事では新たにトンネルを掘削するなど、総工費約10億元(約37億円)をかけてきた。9月15日に行われた試験走行で、列車が阿里山駅に到着した時には関係者から大きな歓声が上がったという。
阿里山森林鉄路は本県とも縁が深い。今から30年ほど前、本県の中央部、大井川流域を走る大井川鉄道と阿里山森林鉄路は姉妹鉄道となった。2014年と2015年の2年連続で、利用客を増やすため、相互の切符を割引くキャンペーンを行っている。大井川鉄道を利用された方は是非、阿里山森林鉄路を御利用いただきたい。
(注)全線開通を予定していた阿里山森林鉄路であったが、2015年9月末の台風により開通予定だった区間に大規模な土砂崩れが発生し、開通の見通しが立っていないが、これまで運行されていた区間は利用が可能である。
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