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東南アジア駐在員報告2005年9月 社会・時事 地元紙の報道によると、シンガポールの産婦人科外来の初診者数が1〜6月期で、前年同期比で4%増加した。
になった数字は良い兆候の表れ。」との見解を示した。 シンガポールでは昨年、将来の人口増減の指標となる合計特殊出生率(*注1)が1.25(日本は2002年 で1.32)、出生数が約3万5,000人だった。これが人口維持に必要とされる同率約2.0、同数5万人から ほど遠い数字であった為、政府は昨年8月、3億Sドル規模(約200億円)の包括的少子化対策を発表した。 その対策の骨子は、(1)家族と過ごす時間を増やすなど、資金援助を超えた広範囲な社会環境つくり。 (2)税優遇対象者の条件撤廃など規制緩和。(3)育児環境に応じた柔軟性のある支援。となっており、具体的には、 @公務員の週休二日制と公務員の医療補助制度の男女平等化。 A出産休暇の取得期間延長(従来の8週間から12週間へ)。 B働く女性が子どもを乳幼児保育所に通わせる場合の補助金の支給。月300〜400Sドル (約2万〜2万6,700円)。 C7歳未満の子どもを持つ親に毎年2日の有給休暇の付与。 D12歳未満の子どもがいる場合の外国人メード税の軽減(これまでの月額345Sドルから 250Sドルへ [約2万3,000円から1万6,700円へ])と、祖父母に子どもの面倒を見てもらっている働く母親に対 する税負担の軽減(3,000Sドルの還付[約20万円])。 Eベビーボーナスの対象拡大(これまでの「第2子と第3子」から、「第1子から第4子」までに)。 F年齢や申請期間にかかわらず、子ども数に応じて1万〜2万Sドル(約66万6,700円〜133万3,400円)の税金の新規還付。 G出産費軽減のため、医療保険の対象拡大(体外受精などの不妊症治療にかかる費用を追加)。 H働く母親を支援するため、学歴を問わず、5〜25%の所得税減税措置(2005年1月1日以降に出産した人が対象)。などが導入された。 この包括的な少子化対策は昨年の8月下旬に発表されたため、通常の妊娠期間を9カ月とすると、今年の5〜 7月にはそ の効果が初めて表れる時期と見なされており、今回の「産婦人科外来の初診者数が1〜6月期で、 前年同期比で4%増加」 という発表となった。 昨年、リー首相は、「根本的には個人の価値観の問題であり、金銭的インセンティブなどの問題ではない。」との認識を 示したものの、女性の社会進出が進む中、従来の考え方を変える必要があるとも指摘し、政府は国民が子どもをつくり、育 てるよう支援するとの方針を示した。 また、リー首相の父親でもあるリー・クアンユー顧問相は、「先進国にとっては、移民受け入れも1つの案だが、大きな 社会問題を引き起こす原因になりかねない。政府が、結婚や出産など個人の尊厳にかかわるデリケートな問題を放置してお ける余裕はないかもしれない。シンガポールで実施している少子化対策では、既に効果が表れはじめている。」と最近述べ た。 小国シンガポールでは困難な課題に対する対応も決断も早い。 注1・・・合計特殊出生率とは、一人の女性がその年の年齢別の出生パターンにしたがって子供を生んだとした 場合の一生に産む子供の数で、人口規模を維持するためには、2.0が一つの目安とされている。実 際には若い年齢での死亡があるため、約2.08を下回ると人口がいずれ減少すると言われている。 (厚生労働省のホームページより引用) |
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