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韓国駐在員報告

2024年1月 社会・時事
駐在員 : 高橋 誠


 1月9日、韓国国会は「犬の食用目的の飼育・屠殺・流通等終息に関する特別法案」(以下、「犬食用禁止法」)を通過させた。3年間の猶予期間を設けたうえで、2027年から施行されることとなる。法律には、食用目的で犬を屠殺した場合、3年以下の懲役または3,000万ウォン(約330万円)以下の罰金、食用目的で犬を飼育、繁殖、あるいは流通させた場合は、2年以下の懲役または2,000万ウォン(約220万円)以下の罰金というように、かなり厳しい罰則が規定されている。

 広く知られていることかと思うが、韓国では犬肉を食べる習慣がある。いや、あった、と言うべきかもしれない。試しに事務所のスタッフ2人に聞いてみると、「幼いころ、親から食べさせられたことがあったが、正直、ほとんど記憶がない。それ以降、1度も食べてない」と2人から同じ回答が返ってきた。実際、BBCのアンケートによると、過去1年間で犬肉を食べたことがある人は、8%だったとのことだが、この様子ではそれも高齢層に限られる話だろう。私自身は17年前に韓国で一度、「補身湯(ポシンタン)」と呼ばれる犬肉の鍋料理を会食の席で食べたことがある。牛肉と比べると犬肉には臭みがあるので香草などとともに食べるのだが、独特の癖のある味であまり好きにはなれなかった。若い人たちには犬はペットという認識があり、その点、日本人と感覚は変わらない。だから多くの韓国民にとって、犬肉を食べることは「感情的に受け入れられない」という部分も大きいだろう。

 一方で、食用の犬肉を取扱ってきた業者にとって、この新たな法案はとんでもないことである。韓国における犬肉の法的な取扱いは、これまでグレーゾーンと言える状況であった。犬は元来、畜産法と畜産物加工処理法(現・畜産物衛生管理法)上では牛や豚同様に「家畜」と規定されていたが、1978年に動物保護団体などの反発もあり、畜産物加工処理法上の「家畜」から除外された。このため、家畜の飼育・屠殺・加工・流通などの手続きが明確に定められていない、「家畜」としての犬(畜産法上)が誕生してしまった。しかしその後も、ソウル市が1984年に市内全域で販売禁止にするなど、オリンピック開催などの大きな世界的行事に対応するため、度々、取り締まりが強化されてきていた。それでも、法律で完全に禁止されることはなく、京畿道や釜山の市場は閉鎖されたが、韓国南部の大邱(テグ)にはまだ犬肉専用の市場が残っているという。今回の法律が施行されれば、農家の立場で個人投資により営業してきた小規模個人事業主が営業できなくなるわけだが、まだ損害補償などの話は出ていない。この点は今後の議論が必要となるところだろう。反面、犬食に関する流通等の業は禁止されたとはいえ、個人が犬食をすることまで禁じたわけではないため、「闇ルート」のような形で、法の隙間を縫って生き残ろうとする業者も出てくるのではないかと指摘されている。動物愛護の観点から言えば、食用として飼育され、残された犬たちの運命も案じられる。課題は山積するが、法が施行されるまでの3年の間で、徐々に決着をつけていくことになるのだろう。現実に消えつつある韓国の伝統食が、より一層消滅に近づいている。


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