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ホーム > 交流・まちづくり > 国際交流 > 地域外交課 > 海外駐在員報告 > 東南アジア駐在員報告

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東南アジア駐在員報告

2000年10月 その他
駐在員 : 岩城徹雄


    インドのIT事情
    8月にインドのカルナタカ州バンガロールを訪れ、インドのIT事情について州政府、IT関連施設、日系企業等を訪問し調査したので、その概要を簡単に報告する。

    1.IT推進政策
    インド政府は、IT分野におけるインドのプレゼンスを世界的に高め、この分野のフロントランナーとなり、IT産業が将来に渡ってインドの経済をリードしていくことを目標として、積極的な情報通信政策を開始した。その一環として、初の国家的IT政策となる「IT 2008(IT for All by 2008)計画」を発表した。
    この計画の2008年までの、具体的な数値目標は、例えば
    ・ 2008年までに、インターネットアクセスが可能なパソコンの普及台数を、現在の10倍(500人に1台から50人に1台、利用者数に換算すれば、約2,000万人)にする。
    ・ 2008年までに、60万台以上ある公衆電話・公衆電話センターを、公衆情報通信センターに改め、様々なマルチメディア情報サービスを提供する。
    などが挙げられている。
    既にインドには現在、約1,000社のソフトウェア企業があり、ソフトウェア開発市場として急成長しているが、これまでインド政府は、1991年にソフトウェア技術支援の団体を設立し衛星通信インフラを含むソフトウェア・テクノロジー・パーク(STPI)を各地に整備したり、コンピュータ関税の引き下げ等のIT支援政策を実施してきた。
    また、情報技術省を1999年に新設し、インターネット、電子商取引の促進の他、IT関連政策も担当させ、インドのIT支援・育成の強化を図っている。

    2.IT(ソフトウェア)産業の現状と背景
    世界的ITブームに加え政府の推進政策もあり、99〜00の年度のコンピュータソフトウェア輸出額は、前年度比51%増、40億米ドルに達した。8年連続で伸び率50%を越えており、2000年度は同50%超の63億米ドルの輸出を目指している。また、99〜00の年度のソフトウェア輸出額はインドの全輸出額の10.5%に相当している。
    ソフトウェアの輸出先の内訳は、北米が約60%、ヨーロッパが約20%で、日本へは3%程度である。欧米の企業が、パソコン用のアプリケーションソフトやオンライン情報システムなどのソフトウェアを開発する際、基本的な設計を欧米で行い、具体的なプログラミングなどをインドのソフトウェア会社に発注するという形が主であり、かつて製造業が低コストを求めて東南アジアや中国に生産現場を移したことと共通するものがある。
    インドでソフトウェア産業が発達した背景には、鉄道、国営銀行、政府機関のようなサービス部門に対して、事務の自動化を推進する政策を1985-1990年に導入したことにより、ソフトウェア・ハードウェア製品の需要が高まり、その後、産業界でもソフトウェア開発を伴うコンピュータの導入に着手し、結果的にソフトウェア開発が飛躍的に急成長した。
    インドのソフトウェア開発拡大の背景の一つに、インド人の特性も挙げられる。計算が得意、思考が論理的、英語によるコミュニケーションが可能というメリットである。また、賃金などの低コストと、時差により欧米が夜の間にインドで作業ができ24時間体制で仕事が進められることも魅力とされている。

    3.インドのシリコンバレー、バンガロール
    インド南部のカルナタカ州バンガロールは、森首相も訪れ我が国でも知名度があがったが、インド一のソフトウェア開発の集積都市となっており、インドのシリコンバレーと言われている。バンガロールからのソフトウェアの輸出はインド全体の約40%を占め、100社以上の多国籍企業を含む約800社のソフトウェア企業が立地している。
    1984年に米国のテキサス・インスツルメンツ社が開発拠点をおいたあと、欧米のコンピュータ企業がバンガロールに進出してきた。バンガロールには、ソフトウェア技術者のネットワークが確立されたメリットがあるとされているが、この背景には、バンガロールがパキスタンや中国、アラブ諸国のいずれの国境からも離れているため、ここの空軍基地に、政府によって航空機開発、レーダー開発などの国防産業関連企業や研究所が集められており、また、技術系大学の存在という条件も重なり、ハイテク都市が形成されたものである。
    高原で涼しい気候で過ごしやすいため、外国人が暮らす環境としても比較的好いところである。雨が降っていたとはいえ、8月上旬だというのに肌寒い天気には驚いた。
    インドでは、現実にはカースト制による階級が残っており、バンガロール市内でも〇〇DOT.COMといったインターネットの大きな看板がある一方、貧民街や道を素足で歩く人が見られるという、21世紀と19世紀が背中合わせに同居しているような印象である。また、訪問の1週間前には、有名俳優の誘拐事件をきっかけに異民族間の対立抗争ともいわれる暴動が発生し、銀行などの窓ガラスが投石により穴だらけの状態となっているところもあった。シリコンバレーという言葉のイメージとは少し違った感じがした。
    通信インフラも、高速通信回線網が完備しているわけではなく、データの送受信はビルの屋上のパラボラアンテナから一度、郊外にあるSTPIの施設に送り、そこからインテルサット通信衛星経由で外国とやりとりする、という方式をとっている。電力供給も信頼性が低いため、各社独自で無停電電源装置を備えている。

    4.ITPB(International Tech Park Bangalore)

      バンガロールから車で30分ほどの郊外に、シンガポールとインドの合弁によるハイテクパークITPBがある。2000年1月にオープンしたこの施設は27haの敷地に、オフィススペース、ソフトウェア開発作業スペース、独自の高速通信用パラボラアンテナを有する最新のインテリジェントビルや、発電所、住居用アパートなどが配置されている。既に第1期分は約90社が入り満杯で、第2期工事がまもなく始まる予定である。この辺りの空間だけ、周りの雰囲気と異なり近未来を感じさせる。
      ITPBは、インドでの会社設立の準備ができるようにビジネスセンター(短期間の貸しオフィス)機能や、実際の設立に伴う手続きなどのコンサルティング機能も有しており、フロアーの利用はレンタル、買い取りいずれも可能で、外国企業の誘致に対し積極的である。
      カルナタカ州政府ではバンガロールを中心に「ITコリドー」と呼ぶハイテク地域を開発・整備する計画を現在策定中で、インフラ等が整備されれば、ITPBも含めてこれからの一層の発展が期待できそうである。

    5.インドの課題、日本の課題など
    インドでは、ソフトウェア産業は非常に好調であるが、コンピュータ機器等のハードウェアについては、まだ低調のようである。話しを聞いた日系企業では、ソフトウェア技術者でさえデジタルカメラとかPOSシステムという実物に接したことがないので、そのためのソフトウェアを開発するといってもイメージが分かってもらえず、説明に苦労する、という声も聞かれた。
    好調なインドのソフトウェア輸出の中にあって、日本の占める割合は今のところ非常に小さい。これも日系企業の指摘であるが、コミュニケーションの問題があるとのことである。日本人が英語があまり得意でないという言葉の問題以上に、ビジネスの進め方に障害があるのではないか、つまり、日本人は一、二を説明してあとは理解してもらえるものと思うが、インド人は言われたことしかやらない、言われていないことは無いこと、という理解である。この点は、インドに限らず、またビジネスの分野に限らず、日本人が世界の中で交流を深めていくためには、克服しなければならない課題であると感じた。


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