東南アジア駐在員報告
2022年8月 社会・時事 駐在員 : 竹田 敏彦
シンガポールは、クリーンエネルギーとして太陽光発電の普及に注力している。しかし、面積が東京23区と同程度の限られた国土では、大規模な太陽光発電用地の確保が難しい状況だ。そのため現在は電力の95%をインドネシアや中東から輸入した天然ガスで賄っている。
そんな同国で、オーストラリアと共に開始した野心的な発電プロジェクト「オーストラリアーアジア パワーリンク」が話題だ。これは、シンガポールの再生可能エネルギー企業サン・ケーブルが計画しているもので、オーストラリア北部準州に世界最大の太陽光発電所と蓄電設備を設置し、そこから4,200キロメートルにも及ぶ海底ケーブルを通じてシンガポールに電力を供給するというものだ。投資総額は300億豪ドル(約2兆8,125億円)。建設工事は2024年に着工され、2029年にはシンガポールへの送電開始が予定されている。完成すれば、シンガポールの電力需要の最大15%を同施設から捻出できる見込みだ。
シンガポールはこのプロジェクトを通じて、広大な面積を持ち、太陽光発電の資源が豊富なオーストラリアからクリーンエネルギーを取り入れることを期待している。資金調達に先立ち、既に世界各国の退職年金ファンド、インフラ関連ファンドなどから関心を集めており、計画が実現する可能性は高い。
シンガポールは、6月に発表された「世界競争力ランキング2022」でも、「経済パフォーマンス」、「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」という分野で高い評価を受け、世界3位につけている(※日本は34位)。シンガポールで生活していると小国でありながらも、政府が中心となって世界のトレンドに沿った野心的なプロジェクトをサポートすることで、各国の企業や頭脳を同国に呼び寄せているように感じる。日本の自治体にとっても競争戦略の成功例として学ぶところが多い。
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