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東南アジア駐在員報告2003年3月 その他 ブルネイ、東マレーシアの社会経済状況
02年の実質GDPにおいて、石油部門は22億9,933万B$で全体の53%を占めている。01年の輸出額でみると、全体で65億2,170万B$のうち石油が28億9,340万B$、天然ガスが28億1,490万B$と、この2品目で9割近くを占めている。石油はタイ、日本、韓国、オーストラリア、アメリカへの輸出が多いが、天然ガスは9割近くが日本へ輸出されている。 02年のGDPを部門別の構成比で見ると、石油セクター53%、非石油セクターで政府支出が24%、民間支出が23%となっている。民間支出は94年においても20%であったことから、石油セクターへの強い依存体質はあまり改善が見られない。この状況を徐々に改めようと、政府では01年から05年までの第8次国家開発計画において、73億B$の総投資額のうち15%又は10億B$以上を商工業の育成に充てることとしている。 民間セクター育成のため外国からの投資にも優遇措置を設けている。ブルネイはもともと個人所得税、輸出税、販売税などはないが、法人の利益には30%の課税がなされる。01年に施行された省令では、パイオニア産業と認められて政府の指定するハイテクパークに立地した場合、生産開始から最高20年まで法人税の免除を受けられる、部品、機械設備、ブルネイ国内で調達できない原材料等に対する関税は免除など、投資優遇措置が設けられている。 これまでのところ、外国企業は石油関係がほとんどで、国内には12の工業団地が整備されてはいるものの、大規模な製造業自体が少ないため、外国企業の立地も少ない。工業開発庁の案内で工業団地も視察したが、国全体の民間部門の規模を反映し、団地内道路や工場敷地、建物も小規模なものが多いように感じた。労働人口が少なく、また、公務員が半分以上を占めることもあり、民間部門の労働者の大半が外国人労働者という現状とのこと。外国企業にとってのブルネイのメリットは何か、との問に対しては、他国と比べて賃金水準は高いが、低い税率と安い公益費により相対的な低コストを提供できること、治安、環境、インフラのよさとの回答があった。 首都バンダルスリベガワンの町は清潔で静かな町という印象である。日本製の自動車の人気が高く、一家に2、3台に近い所有率とのこと。二輪車やバイクタクシーは全く走っておらず、排気ガスと騒音という他の東南アジアの都市とは違った趣がある。町なかのショッピングセンターでは、電化製品や衣類などシンガポールと同じか、又はやや薄いというような品揃えで、町を行く人々からは質素ではあるが高い生活水準が窺えた。通貨のブルネイドルはシンガポールドルとリンクさせる政策がとられているため全く等価であり、市中でもシンガポールドル紙幣がそのまま使用できた。
マレーシアでは、国の通産省で規定した奨励業種などパイオニア・ステータスを持つ企業は、製造開始から5年間法人所得税の70%免除、原材料、部品の輸入関税免除等の外国投資優遇策が採られている。サラワク、サバの東マレーシア2州及びマレー半島東側の各州については、地域開発の目的で優遇措置の上乗せがあり、例えば、パイオニア・ステータス企業の法人所得税免除は85%となるなど、手厚くなっている。さらに、サラワク州政府では、電力料金の10%割引や、投資プロジェクトが成功し土地取得から3年以内に操業開始した場合の土地使用料の30〜50%払い戻しなどの措置も講じている。 州内には15の工業団地があり、それぞれ軽工業向け、木材工業向けなど特色を持たせているが、州都クチンに位置するサマジャヤ自由工業地帯は唯一のハイテク・電子産業向け、輸出産業向けの工業団地である。日系2社を含む外国企業13社が立地し、雇用労働者も1万人を超えている。同州におけるメリットとしては、投資優遇措置のほか、ハイテク産業、石油関連産業、ケイ砂など豊富な鉱物を利用した製造業、熱帯雨林の資源を利用したバイオテクノロジー研究開発、森林資源を活用した高付加価値型の木材加工業などあらゆる分野への対応が可能であること、豊富で安価な労働力、良好な労使関係、整ったインフラがあげられる。
州の経済は、パーム椰子、ココア、ゴム、木材等一次産品が主であるが、州政府では製造業部門の発展を主要施策に位置付けている。投資優遇策はサラワク州で述べたものとほぼ同じあるが、州政府では土地購入価格の30%割引などの政策を用意している。 工業化の一翼を担うのが96年に開発がはじまったコタキナバル工業団地(KKIP)である。開発総面積3,367ヘクタールの敷地の中には工業用地のほかに大学、ポリテクニック(技術系専門校)、政府系研究機関、住居地域、商業地域が配される計画で2010年の完成を目指している。既に50社が操業を行っているが、木材加工、金属加工、食品加工が多く、あまり規模の大きいものはまだ見当たらない。国別で見ると、ほとんどがマレーシア資本の企業で、外資系は台湾のプリント基板製造企業、シンガポールのアルミニウム加工企業とわずかである。ただし、最近韓国の中小企業約30社のグループが同団地内の一画400エーカー(約162ヘクタール)を共同で開発し入居しようとの計画があり、銀行と融資の話し合いをしている企業もあるとのこと。日系企業からも2社引き合いがあるようだが、具体的な計画までには至っていないようである。 KKIPを管理している州政府系企業では、この団地以外にも州内6か所で工業団地の開発運営を行っており、それぞれ中重工業向け、パーム椰子関連工場向けなどの特色を持たせるよう計画されている。 |
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