東南アジア駐在員報告
2005年3月 経済
駐在員 : 橋本 勝弘
昨年10月、国民から高い支持を得て発足したユドヨノ新政権は、12月末のスマトラ沖地震・津波の甚大な被災にも拘わらず、短期計画(1月末までの100日計画)の8割程度を達成したとされている。この間、アセアン緊急首脳会議の開催や、内外投資家が参加するインフラサミットの実施など、新政権への評価は高まってきている。
新政権の政策枠組みは3つの柱
@ 安全・平和なインドネシアの構築(地方紛争の解決、法秩序の改善、テロ防止・撲滅)
A 公正・民主的なインドネシアの構築(検察機能の強化、汚職対処、行政改革)
B 福祉的なインドネシアの構築(投資環境の改善、マクロ経済の安定、福祉向上と貧困撲滅)
から成っており、前政権が残した課題が網羅されており、この政策を実現できるかその取り組みが注目されている。
折りしも、2月28日、日本貿易振興機構(ジェトロ)は、インドネシアの産業競争力や、新政権が優先課題として掲げる投資環境改善を支援するため、インドネシア商工会議所(KADIN・カディン)と覚書を交わした。
その覚書の骨子は、
(1)「投資に関する官民合同フォーラム(*注1)」の活動強化
(2)その他の活動としてセミナー、ワークショップなどの開催
(3)カディンへの政策提言の実施協力
(4)調査の実施やビジネスマッチングなどの事業活動支援
(5)知的財産保護、基準認証、物流効率化、環境保護、産業人材育
成による事業環境向上
(6)企業の社会的責任推進など国際的な慣習の実現
(7)日本・インドネシアの自由貿易協定を含む経済連携協定(EPA)
促進支援
(8)中小企業の問題特定と競争力促進
(9)情報共有
となっている。
ジェトロは、「投資に関する官民合同フォーラム」産業競争力・中小企業振興委員会の日本側の中心的な役割を担っており、今後3月中に日系企業に対して部品などの需要に関する調査等を実施するとともに、4月以降、カディンへの政策提言のアドバイザーとなる専門家1人を派遣することとしている。また、10月にインドネシアで開催予定の逆見本市に合わせ、日本から中小企業を中心に投資ミッションを迎える予定である。
2004年のインドネシアの実質経済成長率は、通貨・経済危機(1997年)発生以降、初めて5%台に到達し、2005年の目標(政府の予算指標)は5.5%となっている。静岡県経済と関わりの大きい自動車・二輪車の販売も好調を維持しそうである。
ヤマハ発動機が発表した2005年から2007年までの3年間を対象とした「新中期経営計画(NEXT50PhaseU)」によれば、インドネシアの二輪車事業を07年までに、04年の倍の生産能力にあたる180万台に引き上げ、出荷台数目標は75.5%増の145万台とすることを見込んでいる。
こうしたことから、インドネシア経済の今後の動きは、静岡県にとっても大きな影響を与えそうで、ジェトロの支援はタイミング良く動き出した。
なお、インドネシアにおける二輪車販売台数の推移は次のとおりである。 (単位:千台)
年 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 |
台数 | 1,853 | 518 | 587 | 979 | 1,651 | 2,318 | 2,810 | 3,880 | 4,400 | 4,800 | 5,100 |
*注1 日本とインドネシアの経済当局と経済界がインドネシアの投資環境整備のために結成したもので、3月14日に第1回の企画調整委員会が開かれた。税務、労務,インフラ、産業競争力の4分野について2ヶ月以内に改善に向けた行動計画を作成することで合意した。行動計画は各分野の作業部会がまとめを行い、6月に予定されている全体会合で発表される。
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