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台湾駐在員報告
2013年9月 政治 駐在員 : 宮崎悌三
7月と8月の2か月に3つの“小型”の台風が台湾を襲った。台風の進路によって、風または雨のどちらによる被害に備えるのかの判断が分かれる。
7月の台風は、台湾の北部に上陸し、東から西へ駆け抜けた。北部から南部の山間部を中心とした地域に大雨をもたらしたほか、特に暴風によって、都市部での倒木被害が多かった。8月の2つの台風は、上陸こそしなかったが、台風の中心から離れた南部に大量の降雨をもたらした。
これらの台風の襲来によってもたらされた様々な問題について、台湾のメディアが連日取り上げていた。
台湾では、台風等による被害を未然に防止するため、「台風休暇」なるものがある。いつ休みとするかは、各地方政府に任されているが、決定を下すタイミングにより、住民の首長に対する評価が高まることもあれば、非難の矢面に立たされることもある。普段は人気の高い台湾南部の首長は、今回の被害状況を視察している最中に、住民にまともに罵声を浴びせられる場面がテレビで流れていた。
小型の台風にも関わらず、8月の2つの台風が大雨の被害をもたらしたことについて、降雨量もさることながら河川等の管理が複数のお役所に分かれているからとして、行政の不備を指摘するメディア、治水が完備しようとしても予算が足りないからとする南部の首長たち、一方で、地下水の過剰な汲み上げが原因と指摘する中央の専門家など、議論が百出している。
8月の水害が集中した雲林県、嘉義県、台南市、高雄県、屏東県は、偶然なのかすべて台湾政府における野党(民進党)が首長を務める南部の地方政府である。それらの5市・県の首長は、共同記者会見を開催し、「6年で600億円(約2,000億円)の治水予算を計上すべき」と中央にアピールしたが、馬英九総統は、「今回の水害の原因を調査し、これまでの治水事業で、効果的な箇所に予算が使われているかを中央も地方も精査すべき」として、あくまで問題の所在を明らかにした上で適正に対処する考えを明らかにしている。
今回の台風で明らかになった様々な問題の解決へ向けた綱引きが、単なる政治的なショーで終わらないよう見守っているのは、被害を受けた住民達である。
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