韓国駐在員報告
2017年10月 政治 駐在員 : 小関克也
既報のとおり、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍配備に反発する中国による団体観光の中止等の報復が続いているが、中国に進出している韓国企業への報復が、それらの企業の経営にかなりの悪影響を与えてきているようだ。
特に、THAAD配備地としてグループ会社のゴルフ場が指定されたロッテマートは執拗な報復措置を受け、10年間にわたり力を注いできた中国事業をついに整理することになった。同社はこれまで、中国国内に112店舗を展開するなど約3兆ウォン(約3,000億円)を投資し、中国事業を展開してきたが、THAAD配備問題が持ち上がった昨年11月から消防点検や税務調査など集中的な取り締まりを受け、罰金の処分などに続き、今年3月からは営業停止処分も始まった。現在は店舗全体の77%に相当する87店舗が閉鎖した状況で、残りの店舗も事実上、休店状態となっている。これに伴い、売り上げも急減し、今年4〜6月期の中国のロッテマートの売上高は前年同期(2,840億ウォン、284億円)の10%弱にすぎない210億ウォン(21億円)まで落ち込んだ。現在の状況が年末まで続く場合、年間の売上減少額は1兆ウォン(1,000億円)に達する。
営業停止措置等の報復措置が始まってからも管理費や一部の人件費の支払いは生じるため、7,000億ウォン(約700億円)の資金を投入して持ちこたえてきたが、9月14日、ついに中国国内の店舗処分のため、売却を主幹する会社にゴールドマンサックスを選定したことを明らかにした。
流通業界関係者は「ロッテマートが直接的な被害を受けているが、中国に進出した韓国企業の大部分が非常に苦しい状況だ」として、今後は他社においても事業縮小や東南アジアへの移転などが進むとの見方を示している。
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