東南アジア駐在員報告
2019年4月 経済 駐在員 : 芦澤 裕之
シンガポールでは1980年代以降、政府主導による産業構造の変化に伴い、食料自給率が急激に低下した。この政策により同国は未曾有の経済発展をなし遂げたが、同国政府は近年、フード・セキュリティー(食料安全保障)を強化する戦略に転換している。これは、単に自給率を増やすだけでなく、食料生産モデルを海外に輸出できるような、都市型農業・水産養殖技術のハブを目指すものであり、この点はいかにもシンガポールらしい戦略である。3月には、北部に18ヘクタールのハイテク農業事業の集積地「アグリフード・イノベーション・パーク」を開設する計画が明らかになった。
一方、本県は農業の生産性の向上や関連産業のビジネス展開を目的とした「AOIプロジェクト」を推進している。3月25日、約半年間の協議を経て、シンガポールの高等技能専門校「テマセクポリテクニーク」との間で「共同研究開発に係る覚書」を締結した。覚書の内容は、農業分野における研究開発や、開発される技術や製品のグローバル市場への展開及び事業化の支援、研究スタッフの相互交流などの協力である。これでシンガポールとともに本県農業の海外展開を推進するプラットフォームが整った。
平行して、本県の補助事業を活用した、種苗及び次世代栽培システムの海外展開トライアル事業がシンガポールで進んでいる。同国に設置するコンテナ型植物工場で現地のニーズにあった生鮮野菜を栽培し、テストマーケティングを実施する事業だ。近いうちにシンガポールや周辺国において、静岡発の先端技術により野菜が生産され、世界の食料問題が解決する時代が来るかもしれないと思うと、ワクワクが止まらない。
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