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東南アジア駐在員報告
2000年8月 行政 駐在員 : 岩城徹雄
インドネシアの最近の社会状況
7月19日から21日にかけてジャカルタを訪問し、日本人関係の経済団体や県内企業の駐在員に話を伺う機会を得たので、インドネシアの社会・経済状況についての印象などを簡単に報告する。
(国内の状況)
現状を一言で言えば、長く続いた独裁政権から民主化に向けての過渡期であり、それまで押さえられていたものが噴き出したというような状況であり、混乱はやむをえないものと思われるが、長期的に見て安定に向かう途上であると思われる。
海外では、宗教紛争や地域の独立問題の報道でインドネシアの国中が非常に荒れた状況にあるかの印象を受けるが、東西の端の遠い島での混乱であり、ジャカルタ近郊など日系企業が展開している工業団地では、インフラなどもしっかりしており、実際の生産活動には影響はあまり見られないようだ。輸出関連の製造業などでは、フル操業のところもある。
(経済状況)
GDPの成長率では、2000年第1四半期が対前年同期比3.2%、第2四半期が4〜5%と回復基調にある。輸出を含めた自動車販売台数では2000年1〜5月で対前年同期比275.7%増、同じく二輪車販売台数では、85.8%増など好調である。
しかし、不安材料もいくつかある。公共料金値上げによるインフレ圧力、銀行の金融仲介機能が不十分、民間債務再編は始まったばかり、財政政策による景気刺激策は期待薄、などである。
現在は通貨ルピア安(7月に一時1米ドル=9,000ルピア台まで下がった)のため、インドネシアからの輸出にとってはいい条件である。しかし、為替が不安定なため、リスク回避として高目の設定をしなければならないことや、98年の暴動時には1米ドル=1万ルピアであったこともあり、ルピア安が進みすぎることについても十分な注意が必要である。
なお、輸出産業にとっても、外国においては中国製など、同程度の品質でより安い製品と競合する分野もでてきているため、価格競争力という面では楽観はできない状況にあるといわれている。
(ジャカルタ市内の印象)
市内のデパートは結構買い物客で賑わっており、また、98年の暴動で焼かれたビルの周辺の繁華街にも、多くの屋台が出されて買い物客などで大変混雑しており、雑然としてはいるが非常に活気を感じた。ただし、観光客を狙う強盗事件などはかなり起こっているようで、いくつか注意事項を伺った。
昼間でも、近くの場所でも、歩かずにタクシーを使うこと。
タクシーも少々値段は張るが特定の会社のものにすること。
歩道橋は渡らないこと(逃げ場がない)。
不幸にして襲われたら金を渡すこと(彼らの目的は命ではなく、金である)。
事前に聞いていたとおり市内の車の渋滞はひどく、車間距離はほとんどとらず、譲り合いなどもないこともあり、わずかの距離を進むのに1時間近くかかってしまうことがあった。小さな交叉点などでは運転手からチップをもらい車を進入させる私的交通整理屋とでもいうような若者が多く活躍している。タクシーに乗った時、すぐに運転手にドアロックをするように言われたが、渋滞でとまった車に新聞、雑誌、ミネラルウォーターなどを売ろうとするもの、あるいは何も売る物を持たずただ金をねだるだけのような子供も寄ってくる。いい職がないのか、あるいは、あまり先のことよりも目先のことの方が大事なのだろうか。まずは、政治が安定し人々の暮らしを落ち着かせることが重要と思うが、そうなるにはまだ時間がかかるように感じた。
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