中国駐在員報告



2008年3月 経済
駐在員 : 若田部 孝


目前となってきた北京オリンピック
 〜日本人が知りたい北京オリンピックの話題ベスト6〜


 1つ目の話題は、北京オリンピック(以下、「五輪」という。)の施設の整備状況である。
開会式等が行われる国家スタジアム(愛称は「鳥の巣」)や特徴的な建築物の形態で有名な国家水泳センター(愛称は「水立方(ウォーターキューブ)」)などの五輪施設が、ほぼ完成し、五輪開催前に主要施設7か所で競技運営テストを兼ねたスポーツイベント「好運(グッドラック)北京」が行われる。競技場以外では、北京マラソンコース(古都北京コース)で4月20日、マラソン大会が開催される予定である。
 2つ目として、中国国内での入場券の販売状況である。
 販売される入場券の総数は、約700万枚であり、その内訳は、国内販売が約427万枚(約61%)、国内教育関連者等への販売が約98万枚(約14%)、残りの約175万枚(約25%)が国外販売用であることは既に昨年紹介したとおりである。
 国内の販売状況であるが、第1期は昨年4月から6月までに159万枚(約37%)が、第2期は昨年10月から今年2月までに180万枚(約42%)がそれぞれ販売され、最終の第3期は4月から8月までに88万枚(約21%)を販売する予定となっている。
 3つ目として、五輪開催期間中の北京市内のホテル料金の状況である。
北京五輪組織委員会と契約を結んだ約120のホテルでは、通常料金の約5〜6倍の宿泊料金となっているが、組織委員会と契約していない多数のホテル(星付きホテルではない。)に関して言えば、料金は割安になっているそうだ。
また、ここにきて格安ホテルチェーン店が、市内のホテルの部屋をネットオークションに出すと発表した。ただし、競技場に近い部屋は完売になったところが多そうだ。
 4つ目として、「毒餃子」で一躍、世界の注目を集めることになった食品の安全面についてである。 
 北京市食品安全弁公室の報道官の発表によると、「五輪大会に向けて構築してきた『食品安全保障システム』(注1)の導入により、選手に提供する食品の安全が確保できる。」そうだ。また、米国五輪チームが全ての食材、飲料水を中国国外から持ち込む計画があったことに対し、「五輪大会用の食材の安全基準は国際基準より厳しくしており、食材の種類は各国選手の食習慣の違いを考慮している。選手等の食の安全を完全に約束できる状況であるため、国外からの食材の持参は認めない。」と表明した。
 5つ目として、五輪期間中の北京市内の交通状況についてである。
 北京市交通委員会の担当者が、「五輪期間中、市内の自動車は330万台に達し、交通状況は現状よりさらに悪化すると予想される。そのため市では、50%以上の自動車の通行を規制し(自動車のナンバープレートの「奇数・偶数制」(注2)を実施するようだ。)、その代わりとして、公共バスの輸送能力の強化などにより、輸送サービスを行う。」と発表した。
 また、公共交通機関の1つである地下鉄の工事が急ピッチで進められており、10号線の五輪支線、空港線なども工事が最終段階に入った。2008年中には市内地下鉄の総延長は270kmとなり、計画上では、2015年までに総延長561kmの軌道交通ネットワークが完成するそうだ。
 最後に、改善はされているというものの、まだまだ評判の良くない中国人のマナー関連情報についてである。
市交通委員会の発表によると、北京市では毎月22日を「席を譲る日」に指定し、2月22日に初めて「席を譲ろうキャンペーン」を実施した。「席を譲る日」は毎月11日の「列に並ぶ日」と同様に、市のマナー向上キャンペーンの一環である。なお、22日を指定した理由は、「22」の中国語発音が「譲る」の発音に似ており、また「2」の形が椅子の背もたれに似ているからだそうだ。しかし、はたして、五輪までにマナーが本当に改善されるか誰もわからない。

(注1)「食品安全保障システム」
 @「食品安全性監視システム」とA「追跡システム」で構成される。
 @のシステムは、生産場所から食卓までの、生産(養殖)、加工、輸送、販売、調理など10分野において、原材料登録制度、企業自己検査制度、抜き取り検査制度、サンプル保存制度などによる監視測定等を行い、ネット上で個別に日報が公表される。同システムの導入によって、30分以内で65,000社の食品加工企業に不良品の回収指示を全て通達できるという。
 Aのシステムは、果物、野菜、肉製品などに関し、バーコードを読み取るだけで、生産(養殖)、入荷、加工、輸送、販売など全分野の情報を把握することができるという。

(注2)「奇数・偶数制」
 通常でも交通渋滞の激しい北京市内の道路交通状況を考慮し、五輪期間中において、自家用車の市内通行を、ナンバープレートの数字の奇数・偶数に基づいて、日替わりで交互に通行させることにより、自家用車の運行車両を半減させる制度である。
 このような交通規制の影響を緩和する手段として、公共バスの増発、地下鉄路線の延長等、公共交通機関の機能拡張を行う。
 なお、2007年8月17日から20日まで行われた「好運(グッドラック)北京」テスト大会期間中に同制度を実施した結果、約130万台の自動車が道路から姿を消したと言われている。これにより主要道路の交通量は30%削減され、渋滞時間帯の通行速度が19.2キロから32.1キロに上がったそうだ。
現在のところ、どのようにこの制度を導入するのか詳細は公表されていないが、国内外から注目を集めそうだ。

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