東南アジア駐在員報告
2016年7月 経済 駐在員 : 吉住理恵子
6月16日、シンガポールのテマセク・ポリテクニ−クに新たな健康補助食品(CHP)研究施設が開設され、開所セレモニーに参加した。
ポリテクニーク(Polytechnic)は、技術系高等専門学校などと訳される。日本の「工専」と同様、実業界の需要に応じて、実務レベルの人材育成を目的としたカリキュラムが用意され、実習やインタ ーンシッププログラムなどの実践的教育を行っている。本県企業や試験機関とも交流がある。
今回開設された研究施設は、応用科学部内に設置され、伝統的な漢方療法のサプリメントなど、日本で医薬部外品として位置づけられるようなCHPの開発の実証実験や分析ができる研究設備 を有している。このセンターでの分析で、科学的に効能が証明できた製品に認証を与える仕組もあり、製品の海外輸出などの際に認証を添付することで付加価値向上に資することも期待されて いる。
本施設は規格生産性革新庁(SPRINGシンガポール)との共同で設置された。SPRINGシンガポールの副CEOテッド・タン氏は、挨拶でCHPを製造する企業の多くは単独で研究開発施設を 持つことが困難な中小事業者で、本施設はシンガポールの中小企業の生産性向上に寄与する目的で設置したと説明した。主賓として列席した環境水資源省と保健省を所管するAmy Khor上 級相は国民の健康増進に寄与することへの期待を述べた。
ポリテクニークが日本の工専と大きく違うのは、投入される予算の規模だ。今回のセンター設置にかかる投資額は、320万Sドル(約2億5,600万円 1SGD=80円)となる。
カリキュラムも豊富で、入れ替わりも速い。社会変化に対応して、めまぐるしく変化する産業界の需要に対応し、新たなカリキュラムを創出し、不要なものは見直していく。
今回の施設も、少子高齢化が進む中、医療費を増大させないために健康的な食生活を進めようとする政府方針や、中小企業の生産性向上という経済効果、そしてその分野での即戦力の人材 育成という一石三鳥を狙ったものだ。実学の場が文字通り産・官・学の連係によって進化し続けている点は、日本の実学教育現場も大いに学ぶべきところと思う。
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