台湾駐在員報告
2017年10月 政治 駐在員 : 宮崎悌三
9月8日、頼清徳(らい せいとく)台南市長が、行政院長(首相に相当)に就任した。前任の林全(りんぜん)氏は、今年の6月頃には、辞任の意向を蔡総統に示したと言われているが、蔡政権の低迷する支持率の挽回と来年に迫った統一地方選挙、さらには3年後の総統選挙に向け、台湾の市民に人気が高い頼氏を政権の表舞台に登場させることで、支持率の回復を狙う意図があると見られている。
辞任した林氏は、蔡政権が発足した2016年5月から行政院長に就任し、原発廃止を盛り込んだ法律改正や税制改革などの法案を苦しみながらも成立させた。蔡総統は、林氏が辞意を伝えたその場で了承したと報道され、次の人事も織り込み済みだったようだ。
頼氏は、元医師で、1998年に立法委員(国会議員)に初当選し、4期務めた後、2010年から台南市長となった。行政院長に就任してから間もなく、来年度の政府予算を調整することを発表したが、軍人・公務員・公立学校教員の給与を3%引き上げることを決定したほか、労使から評判が悪い改正労働基準法を見直すことも公にした。
頼氏の人気とこの給与引き上げの決定などで、蔡政権の満足度は、頼氏就任の前後で、29.8%から46.4%へ上昇し、不満足度も50.0%から36.4%へ下がった(台湾民意基金会調査)。
また、李登輝元総統、王金平元立法院議長など、政界の重鎮にも自ら就任挨拶に回った結果、“先輩”からも評判は上々のようだ。
しかし、就任1か月も経たない9月下旬、立法院(国会に相当)の施政報告と質疑応答の中で、頼氏は自らを「台湾独立を主張する政治家」「現実的な台湾独立主義者である」ことを強調したが、蔡政権発足当初からこの問題を巡って中国政府と対立していることから、中台関係の緊張が更に高まることも考えられ、今後も注視していきたい。
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