東南アジア駐在員報告
2014年7月 経済 駐在員 : 吉住 理恵子
マレーシアのクアラルンプール国際空港(KLIA)に、格安航空(LCC)専用ターミナル「KLIA2」が5月にオープンしてから、2ヶ月弱が経過した。
KLIA2は、着工当初2011年9月の開港を予定していたが、年間利用客数を2,000万人から4,500万人と修正したことにともない、ターミナル規模、手荷物運搬設備の自動システム、航空管制塔の高さにいたるまで、大幅な見直しと計画変更を行い、数度にわたり開港が延期された。
利用した人によれば、5月2日の開港直後も空港内で工事中の箇所が多く見られたという。また、マレーシア国内メディアで供用開始後の滑走路の陥没が指摘されるなどその安全性への疑問もある。
KLIA2に新本部を建設する予定のLCC航空会社のエアアジアは、新たに負荷されることとなった空港諸施設利用料の設定や、従前の同社チェックインシステムと互換性のないKLIA2のシステムなどを巡り、マレーシア政府や空港運営会社への不満を公言しており、就航後、KLIA2利用料として3リンギを航空券購入者に転化し、徴収している。6月22日には利用者に強く推奨してきたセルフチェックインシステムのKLIA2での当面利用停止を発表し、驚きをもって受けとめられた。
それでも、従来のKLIAターミナルが、マレーシア航空の3月の事故以降、中国人旅行客などが減少したことの影響もあり、活気を失っているのに比べ、KLIA2は深夜でもかなりの賑わいだという。
一方、東南アジアの航空ハブとして首位を堅持するシンガポールのチャンギ空港は、7月からの1年間に、駐機料の50%、ボーディングブリッジ利用料15%の割引や、乗客のセルフチェックインサービスを促進する地上業務の効率化、生産性向上支援策などに、1年間で1億ドル(SGD)を投じると発表した。
チャンギ空港では、昨年、年間1,600万人の旅客に対応できるよう設計されたターミナル4の建設が開始されており、2017年の完工を予定している。また、昨年の建国記念日のナショナル・ラリーで、リー・シェンロン首相が、2020年代までに、新たにターミナル5を建設すると明言するなど、中期的な戦略にも余念がない。
LCCの急速な対応とあいまって、飛行機がビジネスマンの日常的な移動手段となりつつある東南アジア地域で、地域No1空港の座を巡る激しい競争がしばらく続きそうだ。
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