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東南アジア駐在員報告
2000年8月 政治 駐在員 : 岩城徹雄
マレーシア、武器強奪事件で首相と野党とが論争
7月2日にイスラム教のカルト集団「アル・マウナ」のメンバー28人が、マレーシアペラ州にある軍の施設を襲いライフルや手投げ弾などの武器を奪い、人質をとってジャングルに逃亡する事件が発生した。同6日には犯人が投降し解決したが、人質2人と犯人グループの1人が死亡した。
この事件を受けて、警察当局は取り締まりを強化し、治安維持法などを適用して実行犯以外のアル・マウナに所属するメンバーを逮捕した。これに対して野党側は、事件と直接関係がない反政府勢力まで取り締まりの対象としていると反発し、また、「事件は政府が全マレーシア・イスラム党(PAS)を中心とする野党勢力を失墜させるために仕組んだ茶番劇だった。」とのうわさをインターネットを通じて流すなど、政府に対する批判を強めていた。
これに対し、マハティール首相は、アル・マウナの会員のほとんどがPASのメンバーであると指摘し、PASのイデオロギーが犯行に関係しているとの見解を示し、事件を機に反政府活動を強めている野党勢を非難した。
東南アジアでは、インドネシアやフィリピンでイスラム過激集団のテロ事件などが多く起こっているが、マレーシアでもこのような事件が起きたことから、ASEAN地域の安全について懸念する見方もある。8月中にシンガポールのリー・クアン・ユー上級相が約20年ぶりにマレーシアを訪問し、マハティール首相らとインドネシア情勢や両国間の懸案事項のほか、イスラム過激派問題についても会談する予定という情報もある。
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