東南アジア駐在員報告
2015年2月 経済 駐在員 : 芦澤裕之
2014年12月14日から21日にかけて、日本アセアンセンター主催のラオス投資環境視察ミッションに参加した。
ラオスは、インドシナ半島中央に位置し、タイ、ベトナム、中国、カンボジア、ミャンマーに陸路で隣接・リンクする鉱物・森林資源の豊かな国である。
ラオスには、近年、首都ヴィエンチャンや中部のサワナケット、南部のパクセに経済特区(SEZ)等が整備され、日系企業の進出が散見されるようになっている。このため、多くの日系工場が集積しているタイのサプライチェーンと港湾物流インフラを利用しつつ、ラオスの低廉な労働力を活用する、いわゆる「タイプラスワン」のアプローチが注目されている。
今回のミッションでは、タイとベトナムに挟まれたラオスの地政学的優位を確認するため、東西経済回廊のゲートウェイであるベトナム・ダナンから、タイプラスワンの工場進出が本格化したラオス・サワナケットまで、東西経済回廊をバスで走破した。また、日系企業の進出状況や稼働状況を確認するため、首都のヴィエンチャン、農業が盛んな南部の中心都市パクセ等を訪問した。
(東西経済回廊について)
東西経済回廊とは、East-West Economic Corridorの日本語表記で、インドシナ半島の4カ国(ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム)を結ぶ、全長1,450 km の道路を基盤にした経済開発計画を指す。2006年12月にタイとラオスの国境をつなぐ第2メコン橋が完成して以来、インドシナ半島の今後の経済を担う大動脈として注目を集めている。東西経済回廊という言葉は、これまで、困窮するインドシナ半島中部圏の経済を発展させるためのキーワードとして使われてきたが、関係者の懸命な努力により、交通インフラが整い、SEZも作られ、発展のための条件は整いつつある。
ミッションにおいて東西経済回廊の道路状況を視察し、現地物流事業者や税関職員から説明を受けたところ、現状では、ラオスの生産力が弱いことから、ラオス=タイ間、及びラオス=ベトナム間の物流が少ない状況にあることが分かった。また、主にコストの要因から、ラオスを経由したタイ、ベトナム間の物流も少ない状況にある。
したがって、未来図として関係者が想像したような、タイで生産された自動車部品が、大量に東西経済回廊を使ってベトナムに運ばれ、ベトナムで加工されてハノイあるいはダナンから日本向けに出荷される、というようなダイナミックな状況は、今のところ見られていない。
ただし、2015年に予定されているASEAN経済共同体が実現した後、ベトナム=ラオス=タイのサプライチェーンが強固になったり、お互いの国内消費市場が発達して需要が増えたりした場合には、東西経済回廊の物流も活発になる可能性はある。
(ラオスへの製造業進出について)
今回のミッションでは、各地のSEZ等と、これらに進出している日系企業(玩具、着物製品、カツラ、電子部品、縫製)の工場を視察した。
各SEZ等では、法人税の免税に加えて従業員の所得税も減免されるなど、企業にとっては有利な特典がある。また、ラオスの人件費の低さはミャンマー、カンボジアとも競争できるレベルにある。
しかしながら、ラオスの一番の問題点は、664万人という人口の少なさにある。各進出企業や関係者から異口同音に聞いた話では、温和で真面目という良い特性はあるものの、300人以上の求人に応える働き手がいない、とのことであった。
したがって、現状では、多くの日系企業がそうしているように、ラオス工場はタイ、ベトナム等の補完工場としての位置付けにせざるを得ず、ラオスは、東南アジアに初進出する企業との親和性は低いものと思われる。
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