台湾駐在員報告
2022年9月 社会・時事 駐在員 : 宮崎 悌三
台湾南部、台南市内で盗まれたオートバイに乗っていた不審者を取り押さえようとした警官2人が、不審者が所持していた鋭利な刃物で頸部など数十か所を切られて死亡する事件が発生した。致命傷を負わせた容疑者は、事件翌日未明に台湾北部でバスを降りたところを取り押さえられた。容疑者は、南部の刑務所に服役していたが、仮出所中に失踪した際に事件を引き起こした。
死亡した2人はともに将来を期待された若い警官で、容疑者の執拗でかつ残忍な方法によって命が奪われたことが世論の強い非難を巻き起こした。
容疑者が失踪した刑務所は、この10年に39名の失踪者が出ていることや死刑判決を受けてもなお刑未執行の死刑囚が38人おり、2020年以降、刑が執行されていないことも、今回の事件により明らかとなった。
台湾では死刑確定後も「憲法審査」を請求し、判決の合憲性について市民が意義を申し立てることができる。刑の執行を慎重に審査・判断してきた台湾だが、この事件が台湾の治安や死刑制度に関する社会の関心を高めたことは間違いない。
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