台湾駐在員報告



2017年3月 社会・時事
駐在員 : 宮崎悌三


2月13日夜、台北市郊外の高速道路で、観光バスが横転し、乗客44人のうち、33人が死亡する事故が発生した。現場は左カーブで、観光バスは右側の路肩に飛び出した格好で横転しており、スピードの出し過ぎが横転の原因と見られている。
 
観光バスは、台湾中部にある桜の名所を回る日帰りのツアーに使われていて、台北市内を早朝に出発し、夜遅くに戻る時間設定となっていた。事故を起こした観光バスの運転手(死亡。以下、運転手という。)は、春節(旧正月。台湾では大型連休となる)前後から、長時間にわたる勤務をこなしており、過労が原因で起こった事故であるとの疑いも持たれている。
 
ツアーを主催した台北市内の旅行会社(以下、旅行会社という。)は、格安バスツアーを販売・催行しており、中高年を中心に人気があった。運転手は、この旅行会社との契約により、バスを運行する仕事を請負っていたが、加入が義務付けられている社会保険には加入しておらず、死亡に係る保障が受けられないことが明るみとなった。
 
一方、台湾における新規のバス営業許可の取得は非常に難しいとされているため、バス会社を起業しようとする人の多くは借金してバスを購入したうえで、営業許可を保有している他のバス会社からの名義貸しにより、様々な旅行会社の仕事を請負う等の方法が一般的であるようだ。
 
今回の運転手の場合は、請負元の旅行会社が、バス会社から名義貸しを受けて運行するバスを運転していたとのことで、社会保険にも加入せず、生活のため無理なシフトにも応対していた。
 
バス営業の許認可を所管する交通部(国土交通省に相当)は、旅行会社に営業許可の名義貸しをしていたバス会社の営業免許を取消す処分を決定したところ、そのバス会社から名義貸しを受けて生活している多くのバス運転手から抗議の声が上がっている。
 
運転手は生活のためとは言え、過重な労働を強いられていたようだが、その背景には、バス営業許認可やバス運転手の労務管理など、国の運輸政策の不備等、構造的な問題を指摘する声は今後ますます強くなりそうだ。

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