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東南アジア駐在員報告2002年9月 政治 マレーシア、不法就労者の扱いで周辺国と摩擦
2002年1月に起きた外国人労働者の暴動事件(2002年2月のトピックス参照)をきっかけに、マレーシア政府は国内の不法就労者対策を進めてきた。外国人の不法就労や違法雇用に対しむち打ち刑を含む重い刑罰が科されることになり、入国管理局では、7月末までに自主的に帰国すれば罪に問わないと、マレーシアからの出国を促してきた。不法就労者の多くはインドネシアとフィリピンからの労働者であるが、約60万人と推定される不法就労者のうち、期限までに出国できたのは約25万人といわれている。帰国・帰宅しても就労先がない、船の便が十分でないなどの理由で、9月に入ってもインドネシア人はインドネシアの東カリマンタン州(ボルネオ島)内の収容施設、フィリピン人はマレーシアのサバ州(ボルネオ島)内の収容施設などにそれぞれ数万人がとどまっている。 帰国用の航空券や乗船券を持つ人にはある程度の猶予が認められているが、8月9日には改正後の法律に基づき、外国人不法滞在者6人に初めてむち打ち刑の実刑判決が下された。これに対してインドネシア高官からは「非人道的」との批判が出され、小規模なデモやマレーシア国旗が焼かれるなどの事件も起こった。マレーシア側では8月26日にサイドハミド外相が、インドネシア国内の反マレーシア感情悪化を理由に渡航自粛を呼びかけ、これに対しインドネシア外務省からは不当な勧告との非難も出された。 マレーシア国内などで帰還を待っている人々の生活環境や健康状態も悪化してきており、収容施設等でインドネシア人60人以上が死亡したとか、フィリピン人の子供が13人死亡したなどの情報も流れている。フィリピン外務省では3人の子供の死亡を確認したとされ、8月29日には在フィリピンマレーシア大使館前でマハティール首相の写真が焼かれるなどの抗議行動も起こった。 インドネシア、フィリピン両政府とも代表団を収容施設に派遣し調査を行い、マレーシア政府側と協議を行っている。マレーシアでは、不法就労に対する施策を維持する姿勢は崩しておらず、不法滞在者の収容施設も国際基準を満たしているとしている。 国内では外国人不法就労者に依存していた建設業などで労働力不足の影響が出ている模様である。また、インドネシア、フィリピンでも海外労働者からの送金は国内経済に占める割合も小さくないことから、今後の影響が懸念されている。 |
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