台湾駐在員報告
2016年6月 経済 駐在員 : 内藤晴仁
4月に入ると、台湾の主要企業が続々と第1四半期分(1月〜3月)の決算を発表する。とりわけ大手製造業の増収益に注目が集まる中、今回(2016年第1四半期)は、台湾スマートフォン製造大手の宏達国際電子
(HTC)や世界最大の半導体メーカーであるTSMCなど、台湾経済を牽引してきた大企業が軒並み減益を発表し、話題となった。
これらの大企業の減益は、台湾の域内総生産(GDP)にも影響を与えている。先日、台湾行政院主計総処は、2016年第1四半期におけるGDP成長率が、対前年同期比で−0.84%であると発表した。これにより、台湾のGDP成長率は、対前年同期比で3四半期連続のマイナス(2015年第3四半期:−0.8%、第4四半期:−0.52%)を記録することとなり、台湾経済の景気減速は統計数字上にも表れている。
GDP成長率がマイナスとなった主な理由として、台湾の対外輸出総額が減少していることが挙げられる。台湾財政部の統計によると、2015年6月から2016年2月までの間、台湾の対外輸出総額は、対前年同月比で二桁マイナスが続いている。中でも、輸出額全体の約4割を占める中国向けの輸出額が大幅に減少しており、中国の景気減速の影響が台湾経済にも影響を与えている様子が伺える。
こうした状況を打破するため、5月に発足した新政権は経済対策の強化を打ち出している。具体的には、経済構造の転換(五大産業イノベーション計画)と新南向政策に代表される多元的な貿易の促進である。五大産業イノベーション計画とは、エコ技術、インターネット、バイオ、スマート機器、国防産業の5分野のイノベーションを推進、台湾経済の世界的競争力を強化し、経済成長に結びつけるものである。また、新南向政策とは、従来の中国等単一市場重視の貿易構造から、東南アジア、インド等を含む市場と多元的な貿易を行うもので、将来的にはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などの多国間自由貿易協定への参加も視野に入れるものである。
蔡英文新総統は実務派との評判が高く、困難な課題をどのように解決に導くか、今後の政権運営の手腕が期待されるところである。
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