ここから本文です。
東南アジア駐在員報告2002年6月 その他 フィリピンの経済・社会状況 マクロ経済で見ると、GDPは2001年通年では3.2%(修正後の数値)、2001年第4四半期が3.9%(同)、2002年第一四半期が3.8%とプラス成長となっている。2001年の成長要因を生産部門別に見るとサービス部門の貢献度が大きく、商業及び通信輸送業が全体を引っ張ったようである。商業では、2000年に小売自由化法が成立し外資参入が部分的に自由化されたことから、アメリカ系の企業がフランチャイズによる会員制小売業を開店したほか、地場小売業も地方展開を進めるなどの動きがあった。運輸通信業では、携帯電話の加入者数の大幅な伸びによりネットワーク拡大についての大型投資が進んでいる。フィリピン政府では、通信産業への外国資本の出資比率の制限(現在40%)を撤廃し自由化する方向で検討をしているとの報道もある。 2001年GDP成長を需要項目別に見ると、民間消費3.4%増、政府支出0.1%増、総資本形成4.3%となっており、個人消費は1997年経済危機以降も堅調が続いているようである。しかし、総資本形成のうち耐久消費財はマイナス2.7%となっており設備投資は低調である。 2001年の投資認可額は全体で対前年比マイナス6%と伸び悩んだ。国内企業の投資認可額は6.2%増であったのに対し、外国企業からがマイナス27.3%と落ち込んだのが影響している。分野別では通信セクターへの投資が前年の4倍に急増したのに対し、製造業への投資は43.4%と振るわなかった。日本からの投資は、2001年末にキリンによる大手ビール会社サンミゲルの株式取得という案件はあったものの、新規の大型投資は少なく、既存施設の拡張や小規模なものが多い。また、工場閉鎖や他国への移管、事業再編といった例も見られるという。JETROでは、日本国内やITの不況、テロ事件といった要因で在フィリピンの日系企業の景況感も悪化しており、また、日本国内や世界的な動きの中での事業再編の影響が大きいと見ている。 本県関係企業で伺った話では、在フィリピンの外国企業の共通課題は労働問題であるとのこと。元来、労働協約自体が従業員側に有利に結ばれる傾向にあるようだが、労働組合が多大な要求を出したり、ストなどでもめることも多いようである。また最近、契約社員(人材派遣)の使用禁止をうたった省令が出され、正規社員の雇用を進めなければならないようになった。需要増減などによる生産量の変化に対応するには契約社員の使用も不可欠であるが、省令への対応に苦慮しているところが多いと聞いた。また、右肩上がりともいえる賃金の上昇も厳しい経営環境のひとつである。 ほとんどが輸出指向である日系企業にとっては、通貨ペソの安値は好材料である。1米ドル約50ペソ(本年6月3日時点)は、経済危機前の1996年に比べると半値程度であり、為替ヘッジをしっかりしているところについては輸出ドライブとなっている。また、労働者の賃金は上昇傾向にあるもののその技術力は高く、エレクトロニクス製品の部品の現地調達率は高いという。この他、フィリピンへの投資の利点としては、英語でのコミュニケーションが容易、理工系の大卒者を中心に技術者が豊富、法人税免除などの恩典等が上げられる。 近年、政府はソフトウェア産業の育成にも力を入れており、観光地で有名なセブ島を始め各地にITパークが作られている。セブでは既に40を超えるプログラミングの企業がありIT産業への従事者は1万人を超えるという。マニラ市内でソフト開発を行う日系企業から伺った話では、インドに比べてIT技術者の人件費が安く人材が豊富である、リズム感やセンスがよくホームページやキャドなどのデザインに優れているなどの利点があり、今後日本からのソフトウェア開発委託が増えていくのではないかとのことである。 マニラでは、繁華街での爆弾テロなどが警戒され、ホテルやショッピングセンター、オフィスビルなど、不特定多数の出入りするところでは入り口で必ず検査が行われ、手荷物の中を確認された。また、よく注意すれば防げることではあるが、外国人を狙った睡眠薬入りの飲料を使う昏睡強盗の被害もあるとのこと。マカティという中心地区のショッピングモールを歩いてみたが、荷物検査があるほかは特に危険と感ずるような雰囲気はなかった。ただし、単独行動は避ける、不用意に見知らぬ場所に立ち入らないなどの注意は十分に必要である。 |
お問い合わせ