中国駐在員報告
2020年2月 社会・時事 駐在員 : 石井 亘
経済発展の進む中国。その中には発展から取り残された貧しい地域が存在している。それらは内陸の農村に多く、貧困地域を無くすことは現中央政府の最重要施策の一つとなっている。1月下旬に習近平国家主席が中国西南に位置する雲南省の村を視察したが、その村の観光振興を通じた所得増といった脱貧困事業が話題となった。
中国は国土が広大であり、一口に貧困地域といっても各地の状況、問題は異なっている。そのため、貧困対策のための施策、事業も多岐に渡っている。
上海の西方に位置する安徽省祁門(キームン)は中国紅茶の代表的な産地として知られているが、高品質の茶葉の生産量が毎年変動することなどから、生産農家は厳しい労働にも関わらず低収入に苦しんでいた。2014年に地元出身の女性が紅茶生産のために起業し、市場で高く評価される高品質茶葉を安定的に供給するべく生産農家との協力関係の構築を進めていった。起業当初は生産量も少なく利益が出ないような状況であったが、2018年には販売額100万人民元(約1億6千万円)、生産農家一戸当たり5千元(約8万円)の収入増となったうえ、地域内で凡そ100の雇用創出に寄与した。
別の事例では、中国西北部の山岳地域にある青海省の金源という少数民族が暮らす村は、一年の半分は厳しい冬期となり気温は氷点下20度にまで下がる。山岳地域なので耕作可能な土地は狭いうえに岩塩を含んでいることから農作物の生産には適しておらず、農民の収入は低かった。こうした中、2017年に同地域を所管する徳令哈(デリンハ)市の農業及び貧困対策部門が、村の0.74ヘクタールの土地に9件の温室を建設し、先ず鉢植えの花卉栽培を開始した。そして、2019年には35万元(約560万円)の収入を得た。この収入は村内の学校への基金や医療保険費への充当に使用されている。
全ての農村がこれらのように成功している訳ではないが、中央政府は2020年を貧困脱却の完成年と位置付けていることから、今後も中央政府による積極的な支援が実施される見込みである。
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