台湾駐在員報告
2019年9月 政治 駐在員 : 内藤 晴仁
2020年1月、台湾では4年に1度の総統選挙が行われる。2大政党(民進党、国民党)は党内予備選挙を経て立候補予定者を発表、メディアは連日トップニュースで両者の動静を報道している。今年11月に正式な立候補届出の手続きが行われるが、それを待たず早くも選挙モードに突入している状態である。
日本の選挙の場合、経済・雇用・福祉など生活と関係の深い分野が争点になるが、台湾の場合「外交」がこれに加わる。米国や中国等の周辺国が台湾に与える影響や立候補者との関係は、選挙の結果に影響を与える変動要因となっており、今回の総統選挙における外交上のトピックは「香港」であろう。
香港は中国返還後50年間は「1国2制度」による高度な自治や自由な経済活動等が保障されるとされたが、保障は十分でないと感じる香港人は多い。中国の法令で香港人を裁くことを可能にする「逃亡犯条例」改正案に対し、多くの香港市民はデモに参加して反対の意思表示を行っている。これに対し、香港当局はデモの取り締まりを強化したが、収束の見通しは立っていない。
これについて、与党立候補予定者の蔡英文氏は香港当局の取り締まりに「強い遺憾の意」を示し、香港の民主主義の重要性を強調した。一方、野党立候補予定者の韓国瑜氏は「香港のデモのことはよく分からない」と発言したため、指導者としての資質が低いと各方面から批判を浴びた。
8月の民間調査によると、与党の蔡氏を支持する有権者が韓氏を約6%上回った。7月には野党の韓氏が蔡氏を3%上回っていたことから、多くの識者が両候補者の香港への姿勢が影響を与えたと分析している。
今後、副総統候補の選定や公約の表明等が行われる。第三の候補者登場等も噂されており選挙戦は波乱が予想される。引き続き動向を注目していきたい。
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